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決意のクリスマスデート②
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桔平さんはニコニコしながら左の手首に付けて、ほら、と私にも見せる。
カッコいいから桔平さんには何でも似合ってしまうけれど、このブレスレットを選んで良かった。
だけど先ほどから気になることが……。
ここに来る途中の車の中でも、桟橋で船を待っているときも、外が暗くて気がつかなかった。
でも今は船内の灯りではっきりと見える。桔平さんの左手の人差し指の指先に、なにかピンクのものが巻かれている。
「桔平さん、それ……」
私がその左手を凝視して言うと、「あっ!」っと桔平さんも気づいて苦笑いになった。私が言うまで本人も忘れていたようだ。
「会社を出る前に紙で指を切った。秘書が絆創膏をくれたんだけど、なぜかこんな派手なピンクで。これしかないって言うから仕方なく」
「絆創膏だったんですね」
「美桜と待ち合わせだったし、とりあえず血が止まるまでと思ったんだけど」
外すのを忘れていた、と言いながら、桔平さんが自分の指をまじまじと見つめている。
「いいですね、秘書さん。いつも桔平さんと一緒に居られて羨ましい」
こんな言葉を言うつもりはなかったのだけれど、思わず口をついて出てしまった。私の態度に嫉妬の色が乗ったのを感じ取ったのか、桔平さんの苦笑いが瞬時に引っ込んだ。
「血はもう止まってるよな」
そう言って、桔平さんがその絆創膏をはぎ取ってしまう。
「あ! でも、傷が……バイ菌が入ります」
「大丈夫」
そうは言っても、切り傷だから傷口が開いたらまた血が出てしまう。
私もよく紙で指を切ることがあるけれど、結構痛いし、思いのほか指先というのは血が出るのを知っている。
私は慌てて自分のバッグから、持っていた絆創膏を取り出した。
「これ使ってください」
なにをやってるんだ、私は。
もしかしたら、あのかわいらしい絆創膏を秘書が桔平さんの指に巻いたのかもしれないと想像したら、妬けてきてしまった。
モデルみたいに綺麗な女性の細い指が、桔平さんの手にまとわりつくように絡む映像が浮かんだ。
私は彼の秘書を写真ですら見たことがないのだから、実際どんな人なのか知りもしないのに。こんなのは私の勝手な妄想だ。
もしその妄想が当たっているとしても、それがなんだと言うのか。
絆創膏を巻いたくらいで嫉妬だなんて、と頭では理解できるのに心は納得しない。嫉妬というのは理屈ではないから本当に厄介だと思う。
桔平さんに、絆創膏を外させたかったわけではないのに。
「私のは、いたって普通の絆創膏です。貼っても目立ちにくいやつで……傷跡が残りにくくなるタイプの」
まるでこの絆創膏は私みたいじゃないか。
いたって普通の、目立ちにくい、どこにでもある絆創膏だ。
そんな考えが浮かんだら、今度は悲しみがこみ上げてきた。
私は桔平さんに見合っていないな、と急にそんな当たり前のことを自覚してしまった。自分が釣り合わないなんて、最初からわかっていたはずなのに。
それでも、桔平さんに惹かれる気持ちは止められなかった。
カッコいいから桔平さんには何でも似合ってしまうけれど、このブレスレットを選んで良かった。
だけど先ほどから気になることが……。
ここに来る途中の車の中でも、桟橋で船を待っているときも、外が暗くて気がつかなかった。
でも今は船内の灯りではっきりと見える。桔平さんの左手の人差し指の指先に、なにかピンクのものが巻かれている。
「桔平さん、それ……」
私がその左手を凝視して言うと、「あっ!」っと桔平さんも気づいて苦笑いになった。私が言うまで本人も忘れていたようだ。
「会社を出る前に紙で指を切った。秘書が絆創膏をくれたんだけど、なぜかこんな派手なピンクで。これしかないって言うから仕方なく」
「絆創膏だったんですね」
「美桜と待ち合わせだったし、とりあえず血が止まるまでと思ったんだけど」
外すのを忘れていた、と言いながら、桔平さんが自分の指をまじまじと見つめている。
「いいですね、秘書さん。いつも桔平さんと一緒に居られて羨ましい」
こんな言葉を言うつもりはなかったのだけれど、思わず口をついて出てしまった。私の態度に嫉妬の色が乗ったのを感じ取ったのか、桔平さんの苦笑いが瞬時に引っ込んだ。
「血はもう止まってるよな」
そう言って、桔平さんがその絆創膏をはぎ取ってしまう。
「あ! でも、傷が……バイ菌が入ります」
「大丈夫」
そうは言っても、切り傷だから傷口が開いたらまた血が出てしまう。
私もよく紙で指を切ることがあるけれど、結構痛いし、思いのほか指先というのは血が出るのを知っている。
私は慌てて自分のバッグから、持っていた絆創膏を取り出した。
「これ使ってください」
なにをやってるんだ、私は。
もしかしたら、あのかわいらしい絆創膏を秘書が桔平さんの指に巻いたのかもしれないと想像したら、妬けてきてしまった。
モデルみたいに綺麗な女性の細い指が、桔平さんの手にまとわりつくように絡む映像が浮かんだ。
私は彼の秘書を写真ですら見たことがないのだから、実際どんな人なのか知りもしないのに。こんなのは私の勝手な妄想だ。
もしその妄想が当たっているとしても、それがなんだと言うのか。
絆創膏を巻いたくらいで嫉妬だなんて、と頭では理解できるのに心は納得しない。嫉妬というのは理屈ではないから本当に厄介だと思う。
桔平さんに、絆創膏を外させたかったわけではないのに。
「私のは、いたって普通の絆創膏です。貼っても目立ちにくいやつで……傷跡が残りにくくなるタイプの」
まるでこの絆創膏は私みたいじゃないか。
いたって普通の、目立ちにくい、どこにでもある絆創膏だ。
そんな考えが浮かんだら、今度は悲しみがこみ上げてきた。
私は桔平さんに見合っていないな、と急にそんな当たり前のことを自覚してしまった。自分が釣り合わないなんて、最初からわかっていたはずなのに。
それでも、桔平さんに惹かれる気持ちは止められなかった。
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