【完結】これはきっと運命の赤い糸

夏目若葉

文字の大きさ
上 下
34 / 50

彼の嫉妬⑧

しおりを挟む
 心から大好きな人にそう言われたら、断れるわけがない。
 だって私も同じ気持ちだから、断る理由などないのだ。

「私も。桔平さんとずっと一緒にいたいです」

 私の返事に「良かった」と桔平さんが笑顔でつぶやき、優しく頭を撫でてくれて、額にキスを落とした。

「こっち、見る?」

 さすがにこのタイミングで寝室の方角を指されると、恥ずかしくて視線を逸らせてしまう。
 あとでいいです、と言おうとしたけれど、桔平さんが先に寝室のドアを開けてしまった。

「え?! うわっ!」
「はは。軽いな」

 そっと寝室を覗こうとしてたら、急に視界がくるりと回転して、気づけば私は桔平さんに抱きかかえられていた。
 いつか将来、これをしてくれる人がいたらいいなと思っていた“お姫様抱っこ”だ。

「重いから降ろしてください」
「重くはないけど、降ろすよ」

 耳元で甘く囁かれたあとに降ろされたのは、フカフカのベッドの上で、気づくと私の上に桔平さんが覆いかぶさっていた。
「あの……桔平さん」
「もう逃がさないけど?」

 至近距離でそんなに色気をふりまかないでください、と言いたくなるくらい、薄暗い部屋でも桔平さんの甘い表情が見て取れた。
 
「逃げません」

 逃げるどころか、私のほうから言いたいです。
 あなたが欲しい、と。
 チュッと愛おしさが詰まったキスを私からしてみると、桔平さんは反対に本格的な大人の深いキスをくれた。
 幸せだ、と思った。大好きな人に夢中で抱かれるのは、幸せで胸がいっぱいになる。
 桔平さんと付き合って、そんなことも初めて知った。

 この夜、私たちは朝まで何度も愛し合った。


「昨日の夕方一緒にいた男って、同僚の子の彼氏?」

 朝になってシャワーを浴びて、桔平さんが淹れてくれた温かいコーヒーを一緒に飲んでるときに、ふとそんな質問をされた。

「まだ彼氏じゃなく、蘭がアプローチしてる段階なんです」
「そっか。でもアイツ、美桜に気があるんじゃないかな。俺にはそう見えた」

 川井さんはああいう性格の人だから、どこまでが冗談なのか、本心はわからない。

「桔平さん、また嫉妬してます?」
「ああ。昨日からずっと」

 そんなに嫉妬しなくても、私の心は桔平さんでいっぱいなのに。

「ありがとうございます」
「礼を言われるのはおかしいって」
「あはは」

 だけど川井さんが私に気があることだけは避けたいのが本音だ。蘭とは男性絡みで険悪になったりしたくないから。
 正直なところ、川井さんと蘭では、私は友人である蘭のほうが断然大事だ。
 だから蘭の思いが成就することを私は願っている。

 桔平さんと甘い夜を過ごせたのは幸せだったけれど、残念なことに、この日は平日なのでふたりとも仕事がある。
 洗面所で髪を整えて、バッグに入れていた化粧ポーチの中の化粧品で薄めにメイクは出来たけれど、洋服はどうにもならない。
 家に一度着替えに帰っている時間はないから、ここからそのまま出勤するしかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ
恋愛
 職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、 帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。  二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。  彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。  無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。 このまま、私は彼と生きていくんだ。 そう思っていた。 彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。 「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」  報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?  代わりでもいい。  それでも一緒にいられるなら。  そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。  Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。 ――――――――――――――― ページを捲ってみてください。 貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。 【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

復讐の始まり、または終わり

月食ぱんな
恋愛
婚約破棄したのち、国外追放された両親から産まれたルシア・フォレスター。その身を隠し、まるで流浪の民のような生活を送る中、両親が母国に戻る事に。そのせいで人と関わる事のなかったルシアは、善と悪の心を学ぶフェアリーテイル魔法学校に入学する羽目になる。  そんなルシアが目指すのは、世界が震える悪役になること。そして両親を追放した王国に復讐を果たすことだ。しかしルシアは魔法学校に向かう道中、復讐相手の一人。自分の両親を国外追放した者を親に持つ、ルーカスに出会ってしまう……。友達、恋、そして抗う事の許されない運命に立ち向かう、悪役を目指す女の子の物語です。なろう様で先行連載中です。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21

処理中です...