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信じる気持ち①

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『彼氏ができました』
 虫垂炎の手術をしたあと自宅療養をしている蘭へ報告のメッセージを送ると、すぐに返事がきた。どんな人なの? いつの間に?と。
 結局まだお見舞いに行けていないので、桔平さんとのことは詳しく話せていない。
 友達なのだから、蘭が仕事復帰する前にきちんとお見舞いに行って、そのときに全部話そうと考えている。

『今までとは全然違って大好きな人だよ。彼じゃなきゃダメみたい』
 蘭へ送ったメッセージの文字を見て、本当にそうだと改めて思う。
 もうほかの人では無理だ。桔平さん以外の人に恋は出来ないと宣言してもいいくらい。

 そして今の私は毎日が充実していて、恋のパワーがこんなにもすごいものだと生まれて初めて知った。
 だけどこの幸せが大きければ大きいほど、それを失うことを想像しただけでとても怖い。
 それは考えずに、今ある幸せだけを大事に生きればいいのにと、ポジティブとネガティブな思考が交互に出てきてしまうけれど、それも仕方ないのかもしれない。
 なにせお相手が、桔平さんなのだから。
 桔平さんには家や会社など、背負ってるものがたくさんあり、庶民の私とは住む世界が違う。
 私はいろんなことに不安なのだ。だけど進むしかない。諦めるのは無理だから。


「聞きたいことがある」

 せっかく幸せな気分で過ごせているのに、またこの人がいきなり目の前に現れた。
 今日もお洒落IT系会社員をよそおった服装の川井さんだ。
 仕事終わりの時間帯を狙い、ビルの1Fロビーで私を待ち構えていた。

「無視すんなよ」

 足早に通り過ぎようとしたけれど、後ろからピタリとついてくる。
 私の歩幅では走って逃げても追いつかれるだろうし、どうしようもないと諦めて歩く速度を緩めた。

「美桜」
「名前で呼ばないでください。誰かに聞かれたら困ります。こんな目立つ所で!」

 口をとがらせながら抗議をすると、川井さんは笑いながら悪い悪いと片手を上げて私と距離を取った。
 待ち伏せなんてある意味ストーカーではないか。
 そう思ったけれど、川井さんは私の連絡先を知らないから、こうするより他に方法がなかったのかもしれない。
 ビルの建物を出て少し歩いたところで、振り返って川井さんと対峙たいじする。
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