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やはり御曹司でした⑦
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「松坂牛のシャトーブリアンなんて、初めて見ました。次の母の誕生日には、こういうの食べさせてあげようかな。もちろん、私のお給料ではこのお店は敷居が高すぎて無理ですけど。うちは母とふたりなんです。父は病気で亡くなったので……」
「美桜さんのほうこそ仲の良い親子だね。うちも親子仲は悪くないけど、父と祖父は反りが合わないみたいで。まぁでも、あまり顔は合わせないから助かってるかな。俺がある意味“かすがい”」
微妙な笑みを浮かべる桔平さんの話は、川井さんが言っていたことと一致する。私が昨日聞いた情報は間違っていなさそうだ。
先にいろいろ聞いてしまってなんだかバツが悪い上に、川井さんの情報が正確なのがまたムカつく。
桔平さんのお祖父さんとお父さんが不仲なのは、巷ではそんなに有名なのだろうか。
「そんな顔しないでいいよ。反りが合わないものは仕方ない。俺は祖父とも、社長の叔父とも仲良くやってるし、何も憂うことはないから」
桔平さんがそう言うのなら心配無用なのかな。
お祖父さんとお父さんのことは今に始まった問題ではないし、解決策もなく、すぐにどうこうできないのだから。
デザートとして、アプリコットと蜂蜜のコンポートゼリーがテーブルに運ばれてきた。
「甘いな」と笑顔で言いながらも、桔平さんがスプーンでそれを口にする。
オレンジ色のアプリコットがすごくかわいくて、私もひと口食べてみたら、とてもおいしくて驚いた。私には甘すぎないスイーツだ。
桔平さんは甘いものが苦手なのかと思ったが、そうではないらしい。レーズン以外の甘いものは好きなのだそうだ。
ぶどうは嫌いではないのに、レーズンはなぜか敬遠してしまうのだと教えてくれた。
食べ物はそんなに好き嫌いはないほうだとか、お酒はすごく飲むわけではないけれど強いほうだとか、いろいろ聞けて桔平さんにまた一歩近づけた気がした。
一番うれしかったのは、好きなアーティストが同じだったこと。今度一緒にそのバンドのライブに行こうと盛り上がれた。
好きなものや苦手なものは、人それぞれ違って当たり前だけれど。
好きな人と好きなものが同じだったことが、こんなにうれしいなんて初めて知った。
レストランのあるオフィスビルを出て歩いていると、桔平さんが急に歩みを止めて私の腕をそっと掴む。
突然どうしたのだろうと顔を上げると、すぐ近くにカッコいい桔平さんの顔があって、そのままふわりと唇が落ちてきた。
そのキスは途中少し深くなって、そのあとそっと唇が離れていく。
すべて桔平さんが教えてくれた。
見ているだけで胸が熱くなってキュンとなる気持ちも、もっとしたいと言いたくなるような甘いキスも。
「美桜……好きだ」
「私も。大好きです」
今日はある意味特別な日。
私がどっぷりとこの恋に堕ちた記念日だ。
「美桜さんのほうこそ仲の良い親子だね。うちも親子仲は悪くないけど、父と祖父は反りが合わないみたいで。まぁでも、あまり顔は合わせないから助かってるかな。俺がある意味“かすがい”」
微妙な笑みを浮かべる桔平さんの話は、川井さんが言っていたことと一致する。私が昨日聞いた情報は間違っていなさそうだ。
先にいろいろ聞いてしまってなんだかバツが悪い上に、川井さんの情報が正確なのがまたムカつく。
桔平さんのお祖父さんとお父さんが不仲なのは、巷ではそんなに有名なのだろうか。
「そんな顔しないでいいよ。反りが合わないものは仕方ない。俺は祖父とも、社長の叔父とも仲良くやってるし、何も憂うことはないから」
桔平さんがそう言うのなら心配無用なのかな。
お祖父さんとお父さんのことは今に始まった問題ではないし、解決策もなく、すぐにどうこうできないのだから。
デザートとして、アプリコットと蜂蜜のコンポートゼリーがテーブルに運ばれてきた。
「甘いな」と笑顔で言いながらも、桔平さんがスプーンでそれを口にする。
オレンジ色のアプリコットがすごくかわいくて、私もひと口食べてみたら、とてもおいしくて驚いた。私には甘すぎないスイーツだ。
桔平さんは甘いものが苦手なのかと思ったが、そうではないらしい。レーズン以外の甘いものは好きなのだそうだ。
ぶどうは嫌いではないのに、レーズンはなぜか敬遠してしまうのだと教えてくれた。
食べ物はそんなに好き嫌いはないほうだとか、お酒はすごく飲むわけではないけれど強いほうだとか、いろいろ聞けて桔平さんにまた一歩近づけた気がした。
一番うれしかったのは、好きなアーティストが同じだったこと。今度一緒にそのバンドのライブに行こうと盛り上がれた。
好きなものや苦手なものは、人それぞれ違って当たり前だけれど。
好きな人と好きなものが同じだったことが、こんなにうれしいなんて初めて知った。
レストランのあるオフィスビルを出て歩いていると、桔平さんが急に歩みを止めて私の腕をそっと掴む。
突然どうしたのだろうと顔を上げると、すぐ近くにカッコいい桔平さんの顔があって、そのままふわりと唇が落ちてきた。
そのキスは途中少し深くなって、そのあとそっと唇が離れていく。
すべて桔平さんが教えてくれた。
見ているだけで胸が熱くなってキュンとなる気持ちも、もっとしたいと言いたくなるような甘いキスも。
「美桜……好きだ」
「私も。大好きです」
今日はある意味特別な日。
私がどっぷりとこの恋に堕ちた記念日だ。
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