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やはり御曹司でした⑥
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「この店が静かでいいと思って予約したんだ」
そこは外から見た外観だけでも上品で贅沢な感じのするお店で、キョロキョロと辺りを見回していると、さすがに繋がれた左手は解放されていた。
「青砥様、いつもありがとうございます」
お店のスタッフが桔平さんを出迎えて深々と頭を下げる。
黒のスーツに身を包んだ背の高い男性に、窓際の真ん中のテーブル席に案内された。夜景が一番綺麗に見える席だそうだ。
窓の外に視線を向ければ、まるで宝石箱のようにキラキラとした夜景が広がっていた。
「顔が赤いよ? 大丈夫?」
テーブルを挟んで正面に座った桔平さんに指摘され、咄嗟に両手で頬を覆った。
「さっき……あの……手を繋いだから……」
私が照れながらボソボソと言葉を紡げば、桔平さんがかわいいと小さくつぶやいて笑った。
「ここ、グリル料理の店なんだ。今日は肉メインのコースをもう頼んであるから。とびきりうまいやつ」
そう言われてみると、お店の中央辺りに鉄板が見えた。
シェフがそこでお肉や魚介類をパフォーマンスしながら焼いてくれるらしい。
このお店は他のメニューも全て、国産のチーズや野菜やフルーツといったこだわりの厳選食材を贅沢に使っているとのことだ。
「よく来られるんですか?」
私の質問に桔平さんはゆっくりと首を横に振る。
そのタイミングで、先ほどの黒スーツの男性が高そうなシャンパンを持ってきてくれた。
「仕事で会食する機会も多いけど、そのときは向こうの和食の料亭か中華の店が多いかな。この店は母が気に入っててね。家族でしか来たことがない」
桔平さんのその言葉を傍で聞いた男性が、にっこりと私に微笑んだ。
「ご家族以外の方とご一緒なのは珍しいですよね。こんなかわいらしい女性とお食事とは……」
この男性は桔平さんとけっこう仲が良いのだろうか。
普通なら店員が口にしないようなことをサラリと言ってのけたので、少し驚いた。
「ミニトマトとアボカドのベニエでございます」
だけどそれ以上は詮索しない。高級レストランだから当然だが、接客は非の打ち所がなく完璧だ。
「仲の良いご家族なんですね」
「うちはちょっと特殊。祖父や叔父が経営者なのもあって、大げさな会食とか多くて」
豪邸に住んでいて、そこでホームパーティーなんかもあるのだろうなと勝手な妄想を膨らませてしまった。そういう部分は一般人とかけ離れていそうだ。
「美桜さんに家のことを話すの初めてだね」
「そうですね」
「俺に接してくる女性は、すぐ家や会社の内情を聞きたがるから、それが一切なかった美桜さんは珍しい」
そう言って微笑んだ桔平さんを、少々気の毒に感じた。
こんなにイケメンなのだからモテないわけがないし、たくさんの女性からアプローチされてきただろうけれど、その女性たちが知り合ってすぐに桔平さんの性格や人となりではなく、背景について細かく尋ねたとしたら……
桔平さんはきっと、何度も傷ついてきたのだと思うから。
「ちゃんと、ただの青砥桔平として見てくれるのがうれしい。美桜さんのそういうところが好きだな」
ビックリしてむせそうになってしまった。今、“好き”って言葉を言われたのは気のせいではないはずだ。
「う、うちは……ごく普通の一般家庭なんです。自慢できるものだってなにもなくて」
顔のほてりが恥ずかしくて誤魔化すように言葉を紡ぐと、桔平さんがテーブルに肘をつきながらニコリと微笑んだ。
それと同時に、メイン料理である松坂牛のステーキが運ばれてくる。
そこは外から見た外観だけでも上品で贅沢な感じのするお店で、キョロキョロと辺りを見回していると、さすがに繋がれた左手は解放されていた。
「青砥様、いつもありがとうございます」
お店のスタッフが桔平さんを出迎えて深々と頭を下げる。
黒のスーツに身を包んだ背の高い男性に、窓際の真ん中のテーブル席に案内された。夜景が一番綺麗に見える席だそうだ。
窓の外に視線を向ければ、まるで宝石箱のようにキラキラとした夜景が広がっていた。
「顔が赤いよ? 大丈夫?」
テーブルを挟んで正面に座った桔平さんに指摘され、咄嗟に両手で頬を覆った。
「さっき……あの……手を繋いだから……」
私が照れながらボソボソと言葉を紡げば、桔平さんがかわいいと小さくつぶやいて笑った。
「ここ、グリル料理の店なんだ。今日は肉メインのコースをもう頼んであるから。とびきりうまいやつ」
そう言われてみると、お店の中央辺りに鉄板が見えた。
シェフがそこでお肉や魚介類をパフォーマンスしながら焼いてくれるらしい。
このお店は他のメニューも全て、国産のチーズや野菜やフルーツといったこだわりの厳選食材を贅沢に使っているとのことだ。
「よく来られるんですか?」
私の質問に桔平さんはゆっくりと首を横に振る。
そのタイミングで、先ほどの黒スーツの男性が高そうなシャンパンを持ってきてくれた。
「仕事で会食する機会も多いけど、そのときは向こうの和食の料亭か中華の店が多いかな。この店は母が気に入っててね。家族でしか来たことがない」
桔平さんのその言葉を傍で聞いた男性が、にっこりと私に微笑んだ。
「ご家族以外の方とご一緒なのは珍しいですよね。こんなかわいらしい女性とお食事とは……」
この男性は桔平さんとけっこう仲が良いのだろうか。
普通なら店員が口にしないようなことをサラリと言ってのけたので、少し驚いた。
「ミニトマトとアボカドのベニエでございます」
だけどそれ以上は詮索しない。高級レストランだから当然だが、接客は非の打ち所がなく完璧だ。
「仲の良いご家族なんですね」
「うちはちょっと特殊。祖父や叔父が経営者なのもあって、大げさな会食とか多くて」
豪邸に住んでいて、そこでホームパーティーなんかもあるのだろうなと勝手な妄想を膨らませてしまった。そういう部分は一般人とかけ離れていそうだ。
「美桜さんに家のことを話すの初めてだね」
「そうですね」
「俺に接してくる女性は、すぐ家や会社の内情を聞きたがるから、それが一切なかった美桜さんは珍しい」
そう言って微笑んだ桔平さんを、少々気の毒に感じた。
こんなにイケメンなのだからモテないわけがないし、たくさんの女性からアプローチされてきただろうけれど、その女性たちが知り合ってすぐに桔平さんの性格や人となりではなく、背景について細かく尋ねたとしたら……
桔平さんはきっと、何度も傷ついてきたのだと思うから。
「ちゃんと、ただの青砥桔平として見てくれるのがうれしい。美桜さんのそういうところが好きだな」
ビックリしてむせそうになってしまった。今、“好き”って言葉を言われたのは気のせいではないはずだ。
「う、うちは……ごく普通の一般家庭なんです。自慢できるものだってなにもなくて」
顔のほてりが恥ずかしくて誤魔化すように言葉を紡ぐと、桔平さんがテーブルに肘をつきながらニコリと微笑んだ。
それと同時に、メイン料理である松坂牛のステーキが運ばれてくる。
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