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やはり御曹司でした①
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パーティーで桔平さんと出会ってから、毎日メッセージのやり取りをするようになった。
呼び方も下の名前で呼び合おうということになり、今ではお互いに【桔平さん】【美桜さん】と呼んでいる。
『付き合ったら呼び捨てにするから』
そう宣言されただけで、スマホを握りしめながら顔が熱くなってくる。
自分でもかなりの重症だという自覚はある。
これを“恋”と言わずしてなんと言おう。
ひとりで突っ走らないように、落ち着けと毎日自分に言い聞かせている。
強く自制しないと、顔が緩んでしまって仕事にも絶対支障が出そうだから。
『前に言ってたレストラン、明日で予約したけど大丈夫?』
またこんなメッセージを読んでしまったら、全身の力が抜けそうだ。
うれしくてニヤニヤが止まらないけれど、それを無理やり止めているのだから、今の私は相当面白い顔をしているだろう。
桔平さんにはもちろん明日はOKだと即返事をした。
明日はなにを着てこよう。
メイクは薄すぎず派手すぎずにして、お気に入りのアクセサリーをつけて、目一杯かわいくして……
想像しただけで頭の中がお花畑だ。
今日はどれだけ森内さんにイビられても笑って許せるくらいだし、最近毎日が楽しい。
そろそろ蘭にも好きな人が出来たと報告したいところだけど、彼女は虫垂炎を患って入院してしまい、ずっと会社を休んでいる。
蘭の好きな人の話も聞きたいし、今度お見舞いに行って報告しあわなければ。
「何をニヤニヤしながら歩いてんだよ。気持ち悪い」
仕事が終わり、ビルを出て駅へと続く道を歩いていると、突然真横から男性に声をかけられた。
「か、川井さん!」
「俺の名前覚えてたんだ。それはどうも」
人がせっかくウキウキ気分で帰宅しようとしてるのに、思いきり邪魔をされて自然と口元がムッとなる。
いきなり現れたのは、この前エレベーターで名刺をもらった自称・調査員の川井さんだった。
同じ方向に歩いているということは、今日もビル内をウロウロしていたのだろうか。
お洒落な身なりをしているから、あそこをうろついていても浮かないのがちょっとムカつく。
「ニヤニヤニヤニヤ……頭ん中に蝶々が何匹も飛んでたな」
「ほっといてください!」
気持ち悪くさせたのは悪かったけれど、私の頭の中がお花畑だろうが蝶々が飛んでいようが、迷惑かけませんよね?と、心の中で突っ込んだ。本当にいちいち絡んでくる人だ。
「その、デレデレに緩んだ顔と蝶々が飛んでる原因」
「え?」
「それって、まさかあのビルの大企業の常務だったりしないだろうな?」
驚きすぎて思わず歩みが止まってしまう。
川井さんの指摘は的確すぎるし、大企業の常務だなんて、確実に相手が誰だかわかっている言い方だから余計に驚いたのだ。
「うそだろ、マジか」
立ち止まったまま目を丸くする私を見て、川井さんは困ったように顔をしかめた。
「またややこしいヤツと……」
「どういう意味ですか?」
「しかもその顔! 手遅れじゃなきゃいいが」
わざとらしくフーッと深い溜息を吐いたあと、川井さんは力強く私の右手首を掴んだ。
「ちょっと来い」
「え?! なに?」
「いいから来い!」
そのまま手首を引っ張って足早に歩き出される。
私はなにがなんだかわからないままなのに、川井さんだけがまるで全容を見透かしているようだ。
どこに行くのかと聞いても無視され、さっきから私の質問にはなにひとつ答えてくれないのでだんだんイライラとしてくる。
駅へと続く道をはずれ、裏通りにある人目につかない小さなカフェに、川井さんは私の手首を掴んだまま入って行った。
呼び方も下の名前で呼び合おうということになり、今ではお互いに【桔平さん】【美桜さん】と呼んでいる。
『付き合ったら呼び捨てにするから』
そう宣言されただけで、スマホを握りしめながら顔が熱くなってくる。
自分でもかなりの重症だという自覚はある。
これを“恋”と言わずしてなんと言おう。
ひとりで突っ走らないように、落ち着けと毎日自分に言い聞かせている。
強く自制しないと、顔が緩んでしまって仕事にも絶対支障が出そうだから。
『前に言ってたレストラン、明日で予約したけど大丈夫?』
またこんなメッセージを読んでしまったら、全身の力が抜けそうだ。
うれしくてニヤニヤが止まらないけれど、それを無理やり止めているのだから、今の私は相当面白い顔をしているだろう。
桔平さんにはもちろん明日はOKだと即返事をした。
明日はなにを着てこよう。
メイクは薄すぎず派手すぎずにして、お気に入りのアクセサリーをつけて、目一杯かわいくして……
想像しただけで頭の中がお花畑だ。
今日はどれだけ森内さんにイビられても笑って許せるくらいだし、最近毎日が楽しい。
そろそろ蘭にも好きな人が出来たと報告したいところだけど、彼女は虫垂炎を患って入院してしまい、ずっと会社を休んでいる。
蘭の好きな人の話も聞きたいし、今度お見舞いに行って報告しあわなければ。
「何をニヤニヤしながら歩いてんだよ。気持ち悪い」
仕事が終わり、ビルを出て駅へと続く道を歩いていると、突然真横から男性に声をかけられた。
「か、川井さん!」
「俺の名前覚えてたんだ。それはどうも」
人がせっかくウキウキ気分で帰宅しようとしてるのに、思いきり邪魔をされて自然と口元がムッとなる。
いきなり現れたのは、この前エレベーターで名刺をもらった自称・調査員の川井さんだった。
同じ方向に歩いているということは、今日もビル内をウロウロしていたのだろうか。
お洒落な身なりをしているから、あそこをうろついていても浮かないのがちょっとムカつく。
「ニヤニヤニヤニヤ……頭ん中に蝶々が何匹も飛んでたな」
「ほっといてください!」
気持ち悪くさせたのは悪かったけれど、私の頭の中がお花畑だろうが蝶々が飛んでいようが、迷惑かけませんよね?と、心の中で突っ込んだ。本当にいちいち絡んでくる人だ。
「その、デレデレに緩んだ顔と蝶々が飛んでる原因」
「え?」
「それって、まさかあのビルの大企業の常務だったりしないだろうな?」
驚きすぎて思わず歩みが止まってしまう。
川井さんの指摘は的確すぎるし、大企業の常務だなんて、確実に相手が誰だかわかっている言い方だから余計に驚いたのだ。
「うそだろ、マジか」
立ち止まったまま目を丸くする私を見て、川井さんは困ったように顔をしかめた。
「またややこしいヤツと……」
「どういう意味ですか?」
「しかもその顔! 手遅れじゃなきゃいいが」
わざとらしくフーッと深い溜息を吐いたあと、川井さんは力強く私の右手首を掴んだ。
「ちょっと来い」
「え?! なに?」
「いいから来い!」
そのまま手首を引っ張って足早に歩き出される。
私はなにがなんだかわからないままなのに、川井さんだけがまるで全容を見透かしているようだ。
どこに行くのかと聞いても無視され、さっきから私の質問にはなにひとつ答えてくれないのでだんだんイライラとしてくる。
駅へと続く道をはずれ、裏通りにある人目につかない小さなカフェに、川井さんは私の手首を掴んだまま入って行った。
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