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いきなりのプロポーズ②

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「プロポーズ、断るってこと?」
「すみません」
「なんで?」

 さみしそうな表情の三雲さんを見ていると、申し訳ない気持ちも出てくるが、もちろん受け入れるわけにはいなかない。

「私たち、そもそも付き合っていませんよね? 結婚はできません。しかもいきなり遠くの離島で暮らせとか滅茶苦茶です。ごめんなさい」
「美桜さん……それでいいの? 僕のこと好きじゃなかった?」
「今までありがとうございました。お元気で」

 私は席を立ってお辞儀をし、レストランをあとにした。

 三雲さんのことは嫌いではなかった。
 絵に描いたようなイケメンではなかったけれど、優しくてインテリで、節操もあって紳士だったから。
 だけど好きだったのかと問われると、正直首を縦には振れない。
 たまに食事をしながらお互いの話をして一緒に過ごす、私たちはそんな関係だったはず。それも長い間続いていたわけではなく、たった数回のことだ。
 なのにいきなりプロポーズをされ、離島暮らしをするのしないのと言われても、さすがに理解できなかった。

『お元気で』と、最後に言った言葉がすべてだ。私は同じ道は歩めない。
 三雲さんには離島でみんなに愛されるお医者様になってほしいと心から願った。

*****

「え? なにそれ。それで三雲さんとは終わったの?」

 会社の休憩スペースで一緒になった同期の長内 蘭おさない らんが、私の話を聞いて目を丸くした。

「蘭、声が大きいよ」

 私がシッと唇の前に人差し指を立てると、蘭はごめんと謝り肩をすくめた。

 私たちは㈱オッティモの入社二年目の社員で、会社の正面玄関にある受付で日々働いている。
 会社は総合商社でそこそこ大きく、このオフィスビルの13Fにある。
 ここにはもっとレベルの高い会社が上層階に何社もあるので、うちはそれと比べたら霞んでしまうけれど、オフィス内はもちろん、休憩スペース等もスタイリッシュな造りになっているので社員の満足度は高い。

「終わったっていうか、始まってもないから」

 蘭とは同じ受付という部署に配属されたときから仲良くしていて、今ではなんでも話せる同期であり親友だ。
 プライベートで遊ぶこともあるし、こうして恋バナをすることも多い。

「だよね。キスもしてない関係でいきなり結婚って……」
「キスどころか手も繋いでないし。付き合おうって言ってもなかったの」
「向こうは付き合ってるつもりだったかもよ?」

 ニヤニヤとしながら蘭が私の顔を覗き込んでくる。こうしておどけた顔をする蘭が、ほっこりと癒し系で私は大好きだ。

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