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Immoral love
Immoral love③
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「嫌われるのが怖くて、なかなか言えなかった。でもちゃんと言うべきだ……」
「なんの話?」
「実は俺、結婚してる」
彼が放った言葉が強烈すぎて、耳から脳に伝わってはいるものの、すぐに理解できずに固まってしまった。
「それ、過去にじゃなくて? 亮平さんには今現在、奥さんがいるの?」
「ああ」
ウソだ。私は信じられなくて、ふるふると頭を横に振った。
知り合ってから今までのあいだ、彼は既婚者だったのにずっと独身のフリをして、私を騙していた?
いや、亮平さんはそんな人じゃない。私も周りも、勝手に独身だと決めつけていただけで、彼に悪意などなかった。
「じゃあ、亮平さんが暮らしてるって言ってた“家族”って、ご両親ではなくて……」
「……うちは妻とふたり暮らし」
勝手にピクピク震え出した両手を、彼がもう一度力強く包みこんだ。
「美耶、今まで黙っててごめん」
「私、遊ばれてたの?」
「違う。それなら隠し続けるだろ? 俺は純粋に美耶が好きなんだ。だからウソはつきたくない」
たしかに彼がもっとひどい男だったならば、ウソにウソを重ねて適当な言葉を吐き、私の身体だけを真っ先に求めていただろう。
だけど彼は違った。私と向き合い、以前からきちんと心を通わせてくれていた。
今もそうだ。私のほうから誘っているのだから、ただ一線を越えたいだけなら黙っていればよかったのに、正直にすべてを話した。
良心の呵責にさいなまれたのだと思う。それは私が大事だから?
「でも既婚者と恋愛なんて冗談じゃないよな。ごめん。俺たちは……ここまでにしよう」
「なんで? 勝手に決めないでよ!」
「美耶……」
言うだけ言って、自分ひとりで勝手に結論を出してしまうなんてひどい。
ふたりの問題なんだから、私の気持ちだって聞いてくれてもいいじゃないか。
「これ以上進んだら、俺たちは不倫の関係になるから」
「今まではなんだったの? 何度もデートして、抱き合ってキスもした。これって不倫じゃないの?」
ただ連絡を取り合っていただけだとか、私たちはそんな淡い関係ではない。それはとっくに超えてしまっている。
その点を突けば、彼は困ったように沈黙して目を伏せた。
「ごめんなさい。私、頭が混乱してて……」
「いいんだ。美耶は間違ってないし、俺は責められて当然だ」
「違うの。責めたいわけじゃないの。私は本気で亮平さんを好きだから、気持ちを抑えられないだけ。あきらめるのは嫌!」
心から愛してる、と断言できるほど、私はもう亮平さんなしでは生きていけない。
それなのに私たちには愛し合えない障害がある。その事実を認めたくなくてゴネているだけだと、自分でもわかっている。
この恋は、背徳の恋なのだ。
だけど私は、どうしようもなく亮平さんが欲しい。私がこんなにも劣情を抱くなんて思いもしなかった。
「バチが当たるならそれでもいい。私はあなたに抱かれたい」
すがりつくように彼の胸に飛び込めば、亮平さんも私の背中を包み込むようにきつく抱きしめた。
「なんの話?」
「実は俺、結婚してる」
彼が放った言葉が強烈すぎて、耳から脳に伝わってはいるものの、すぐに理解できずに固まってしまった。
「それ、過去にじゃなくて? 亮平さんには今現在、奥さんがいるの?」
「ああ」
ウソだ。私は信じられなくて、ふるふると頭を横に振った。
知り合ってから今までのあいだ、彼は既婚者だったのにずっと独身のフリをして、私を騙していた?
いや、亮平さんはそんな人じゃない。私も周りも、勝手に独身だと決めつけていただけで、彼に悪意などなかった。
「じゃあ、亮平さんが暮らしてるって言ってた“家族”って、ご両親ではなくて……」
「……うちは妻とふたり暮らし」
勝手にピクピク震え出した両手を、彼がもう一度力強く包みこんだ。
「美耶、今まで黙っててごめん」
「私、遊ばれてたの?」
「違う。それなら隠し続けるだろ? 俺は純粋に美耶が好きなんだ。だからウソはつきたくない」
たしかに彼がもっとひどい男だったならば、ウソにウソを重ねて適当な言葉を吐き、私の身体だけを真っ先に求めていただろう。
だけど彼は違った。私と向き合い、以前からきちんと心を通わせてくれていた。
今もそうだ。私のほうから誘っているのだから、ただ一線を越えたいだけなら黙っていればよかったのに、正直にすべてを話した。
良心の呵責にさいなまれたのだと思う。それは私が大事だから?
「でも既婚者と恋愛なんて冗談じゃないよな。ごめん。俺たちは……ここまでにしよう」
「なんで? 勝手に決めないでよ!」
「美耶……」
言うだけ言って、自分ひとりで勝手に結論を出してしまうなんてひどい。
ふたりの問題なんだから、私の気持ちだって聞いてくれてもいいじゃないか。
「これ以上進んだら、俺たちは不倫の関係になるから」
「今まではなんだったの? 何度もデートして、抱き合ってキスもした。これって不倫じゃないの?」
ただ連絡を取り合っていただけだとか、私たちはそんな淡い関係ではない。それはとっくに超えてしまっている。
その点を突けば、彼は困ったように沈黙して目を伏せた。
「ごめんなさい。私、頭が混乱してて……」
「いいんだ。美耶は間違ってないし、俺は責められて当然だ」
「違うの。責めたいわけじゃないの。私は本気で亮平さんを好きだから、気持ちを抑えられないだけ。あきらめるのは嫌!」
心から愛してる、と断言できるほど、私はもう亮平さんなしでは生きていけない。
それなのに私たちには愛し合えない障害がある。その事実を認めたくなくてゴネているだけだと、自分でもわかっている。
この恋は、背徳の恋なのだ。
だけど私は、どうしようもなく亮平さんが欲しい。私がこんなにも劣情を抱くなんて思いもしなかった。
「バチが当たるならそれでもいい。私はあなたに抱かれたい」
すがりつくように彼の胸に飛び込めば、亮平さんも私の背中を包み込むようにきつく抱きしめた。
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