52 / 57
番外編⑩
しおりを挟む
「今まで聞く機会がなかったんですよ」
「機会って……普通に聞けばいいだろ?」
「話の流れとかあるじゃないすか。いきなり誕生日いつ? って聞くのも変だから」
「意味がわからん。そんなのはいきなり聞けばいいんだよ!」
たしかにそのとおりだ。
機会がなかった、なんていうのは言い訳でしかなく、聞くのを怠っていた、が正解だろう。
「今度会ったとき、絶対聞き出します!」
俺が気合いを込めると、宇田さんがウンウンと首を縦に振る。
『今度会ったとき』
宇田さんにはそう言ったけれど、俺はミーティング室を出るとすぐに個人用のスマホを胸ポケットから取り出した。
『思い立ったが吉日』という言葉もある。今、舞花に連絡しよう。
舞花は仕事中だから電話には出られないので、メッセージを送っておくことにする。
それなら昼休みにでも見るだろう。
『舞花の誕生日はいつなのか教えて?』
メッセージならば唐突だとしても関係なく尋ねやすい。
舞花は何月生まれだろう? と想像してみた。
なんとなく冬生まれな気がするが、花が舞うという漢字からすると春生まれかもしれないな。
一時間後の昼休み、俺のそんな想像は舞花からの返信で驚愕させられることになる。
俺にしては珍しく社員食堂で昼食を取っているときに、舞花からメッセージの返事が来た。
『今日』
「は?!」
メッセージを目にした俺は、思わず独り言のように短く声を上げた。
今日……って、意味がわからない。
ひとことしか書かれていないし、続きを書かないまま間違えて送ったのか?
まさか、誕生日はいつかと尋ねた返事?……いや、まさかな。
俺はあわてて定食の唐揚げを口に頬張り、ざわざわと大勢の社員がいる社食を出た。
エレベーター近くの誰も居ない静かなスペースまで移動して、再びスマホを取り出した。
俺も舞花も、平日の昼間は互いに電話はかけない。
俺は営業職だし、舞花も同僚と交代で昼休憩を取るため、ふたりとも休憩の時間は日によって違う。
それをわかっているから、連絡は自然とメッセージにしているのだ。
だけど今、舞花からメッセージが届いたということは彼女も昼休憩中なのかもしれない。
俺はそう考えて舞花に電話をかけてみることにした。
『もしもし?』
数回のコールの後、彼女は電話に出た。俺が珍しく昼に電話をかけたので、驚いたのか声が少し上ずっていた。
「お疲れ様。今話して大丈夫?」
『うん。お昼休みだから』
やっぱり。俺の読みは当たっていた。
「さっきのメッセージなんだけど……」
余計な話をしている場合ではないので、単刀直入に俺は尋ねた。
あのメッセージはなんだったのか真相をはっきりさせたい。
「機会って……普通に聞けばいいだろ?」
「話の流れとかあるじゃないすか。いきなり誕生日いつ? って聞くのも変だから」
「意味がわからん。そんなのはいきなり聞けばいいんだよ!」
たしかにそのとおりだ。
機会がなかった、なんていうのは言い訳でしかなく、聞くのを怠っていた、が正解だろう。
「今度会ったとき、絶対聞き出します!」
俺が気合いを込めると、宇田さんがウンウンと首を縦に振る。
『今度会ったとき』
宇田さんにはそう言ったけれど、俺はミーティング室を出るとすぐに個人用のスマホを胸ポケットから取り出した。
『思い立ったが吉日』という言葉もある。今、舞花に連絡しよう。
舞花は仕事中だから電話には出られないので、メッセージを送っておくことにする。
それなら昼休みにでも見るだろう。
『舞花の誕生日はいつなのか教えて?』
メッセージならば唐突だとしても関係なく尋ねやすい。
舞花は何月生まれだろう? と想像してみた。
なんとなく冬生まれな気がするが、花が舞うという漢字からすると春生まれかもしれないな。
一時間後の昼休み、俺のそんな想像は舞花からの返信で驚愕させられることになる。
俺にしては珍しく社員食堂で昼食を取っているときに、舞花からメッセージの返事が来た。
『今日』
「は?!」
メッセージを目にした俺は、思わず独り言のように短く声を上げた。
今日……って、意味がわからない。
ひとことしか書かれていないし、続きを書かないまま間違えて送ったのか?
まさか、誕生日はいつかと尋ねた返事?……いや、まさかな。
俺はあわてて定食の唐揚げを口に頬張り、ざわざわと大勢の社員がいる社食を出た。
エレベーター近くの誰も居ない静かなスペースまで移動して、再びスマホを取り出した。
俺も舞花も、平日の昼間は互いに電話はかけない。
俺は営業職だし、舞花も同僚と交代で昼休憩を取るため、ふたりとも休憩の時間は日によって違う。
それをわかっているから、連絡は自然とメッセージにしているのだ。
だけど今、舞花からメッセージが届いたということは彼女も昼休憩中なのかもしれない。
俺はそう考えて舞花に電話をかけてみることにした。
『もしもし?』
数回のコールの後、彼女は電話に出た。俺が珍しく昼に電話をかけたので、驚いたのか声が少し上ずっていた。
「お疲れ様。今話して大丈夫?」
『うん。お昼休みだから』
やっぱり。俺の読みは当たっていた。
「さっきのメッセージなんだけど……」
余計な話をしている場合ではないので、単刀直入に俺は尋ねた。
あのメッセージはなんだったのか真相をはっきりさせたい。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~
けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。
私は密かに先生に「憧れ」ていた。
でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。
そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。
久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。
まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。
しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて…
ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆…
様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。
『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』
「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。
気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて…
ねえ、この出会いに何か意味はあるの?
本当に…「奇跡」なの?
それとも…
晴月グループ
LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長
晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳
×
LUNA BLUホテル東京ベイ
ウエディングプランナー
優木 里桜(ゆうき りお) 25歳
うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです
紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。
★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★
☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆
※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。
お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる