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番外編⑦
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「ねぇ、竣。私たち、やり直さない?」
なんで急にそんな思考になる? ザルだと思っていたが、実は酔っているのか?
「婚約者のことは明音にとって災難だったと思うよ。だからって、今更俺とやり直したいなんて滅茶苦茶だ」
前を向いたまま言葉を発すれば、明音は抱きついたまま顔だけを上げて俺と視線を合わせる。
彼女は婚約がダメになって傷心中なのだ。
寂しいのか、それともヤケになってるのかわからないが、しっかりしてほしい。
「元婚約者みたいな頭の悪い男はもうご免だわ。その前に付き合ってた彼氏は、あっちの相性が悪かったの。そう考えたら、竣とはなにもかも相性は良かったもの!」
それは当時、喧嘩するのも面倒で、俺が明音に合わせていたのもある。
「空白の五年なんてこれから埋めていけばいいわ。今度は結婚前提の交際がしたい」
「いや、待てって」
「パパもママも私の結婚を心配していて、うるさいのよね。元カレとダメになったばかりだっていうのに。でも竣を連れて行けば絶対に気に入るはず」
俺が静止するのを無視するように、明音は自分の話を次から次へと話していく。
結婚前提の交際?! 話が突飛すぎるだろう。
俺の話も聞けとばかりに、俺は明音の両腕を持って無理やり体を引き離した。
「明音! 俺、恋人がいるんだ。明音とはやり直す気はない」
「竣……付き合ってる女性がいたんだね。じゃあ、その子と別れちゃえばいいのよ」
「は?!」
「私と結婚すれば逆玉よ? そっちのほうがいいでしょ? 今より絶対良い暮らしができるし、パパの会社の跡を継いで社長にもなれる」
俺と舞花が別れる?! 冗談じゃない。ありえないだろ。
逆玉とか、俺にはどうでもいいんだ。
「その彼女も竣と別れて、どこかの御曹司と結婚とか、玉の輿を狙ったほうがいいんじゃないのかな? そのほうが幸せになれるわよ」
俺は舞花と絶対別れない。
そう言い返そうと思ったところに、明音のその言葉だった。
俺らしくもなく、それには一瞬ひるんでしまった。
今日、舞花の会社であの光景を見てしまったからだ。
「明音、俺は彼女が好きなんだ。お前と打算で復縁なんて考えられないくらい彼女に惚れてる。だからもう、俺には連絡するな」
俺が静かなトーンではっきりと口にすれば、明音は少し寂しそうな顔をした。
こんな明音の顔は、付き合っていた頃もあまり見たことがない。
「ごめん。忘れて?」
明音はすばやくタクシーを止めて俺の前から去って行った。
そのあとずっと、俺の心はざわついたままだった。
それは明音を心配したからではなく、彼女の言葉が頭から離れなかったからだ。
たしかに女は金持ちと付き合ったり結婚するほうがいいだろう。
愛は金じゃ買えない! と言ったところで、現実的に金持ちの男を選ぶ女は多い。
じゃあ、舞花にとって俺はどうなのか……。
俺はいたって普通で、社長の息子とか御曹司でもない。
そんな俺と一緒に居て、舞花は幸せなのだろうか。
なんで急にそんな思考になる? ザルだと思っていたが、実は酔っているのか?
「婚約者のことは明音にとって災難だったと思うよ。だからって、今更俺とやり直したいなんて滅茶苦茶だ」
前を向いたまま言葉を発すれば、明音は抱きついたまま顔だけを上げて俺と視線を合わせる。
彼女は婚約がダメになって傷心中なのだ。
寂しいのか、それともヤケになってるのかわからないが、しっかりしてほしい。
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それは当時、喧嘩するのも面倒で、俺が明音に合わせていたのもある。
「空白の五年なんてこれから埋めていけばいいわ。今度は結婚前提の交際がしたい」
「いや、待てって」
「パパもママも私の結婚を心配していて、うるさいのよね。元カレとダメになったばかりだっていうのに。でも竣を連れて行けば絶対に気に入るはず」
俺が静止するのを無視するように、明音は自分の話を次から次へと話していく。
結婚前提の交際?! 話が突飛すぎるだろう。
俺の話も聞けとばかりに、俺は明音の両腕を持って無理やり体を引き離した。
「明音! 俺、恋人がいるんだ。明音とはやり直す気はない」
「竣……付き合ってる女性がいたんだね。じゃあ、その子と別れちゃえばいいのよ」
「は?!」
「私と結婚すれば逆玉よ? そっちのほうがいいでしょ? 今より絶対良い暮らしができるし、パパの会社の跡を継いで社長にもなれる」
俺と舞花が別れる?! 冗談じゃない。ありえないだろ。
逆玉とか、俺にはどうでもいいんだ。
「その彼女も竣と別れて、どこかの御曹司と結婚とか、玉の輿を狙ったほうがいいんじゃないのかな? そのほうが幸せになれるわよ」
俺は舞花と絶対別れない。
そう言い返そうと思ったところに、明音のその言葉だった。
俺らしくもなく、それには一瞬ひるんでしまった。
今日、舞花の会社であの光景を見てしまったからだ。
「明音、俺は彼女が好きなんだ。お前と打算で復縁なんて考えられないくらい彼女に惚れてる。だからもう、俺には連絡するな」
俺が静かなトーンではっきりと口にすれば、明音は少し寂しそうな顔をした。
こんな明音の顔は、付き合っていた頃もあまり見たことがない。
「ごめん。忘れて?」
明音はすばやくタクシーを止めて俺の前から去って行った。
そのあとずっと、俺の心はざわついたままだった。
それは明音を心配したからではなく、彼女の言葉が頭から離れなかったからだ。
たしかに女は金持ちと付き合ったり結婚するほうがいいだろう。
愛は金じゃ買えない! と言ったところで、現実的に金持ちの男を選ぶ女は多い。
じゃあ、舞花にとって俺はどうなのか……。
俺はいたって普通で、社長の息子とか御曹司でもない。
そんな俺と一緒に居て、舞花は幸せなのだろうか。
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