49 / 57
番外編⑦
しおりを挟む
「ねぇ、竣。私たち、やり直さない?」
なんで急にそんな思考になる? ザルだと思っていたが、実は酔っているのか?
「婚約者のことは明音にとって災難だったと思うよ。だからって、今更俺とやり直したいなんて滅茶苦茶だ」
前を向いたまま言葉を発すれば、明音は抱きついたまま顔だけを上げて俺と視線を合わせる。
彼女は婚約がダメになって傷心中なのだ。
寂しいのか、それともヤケになってるのかわからないが、しっかりしてほしい。
「元婚約者みたいな頭の悪い男はもうご免だわ。その前に付き合ってた彼氏は、あっちの相性が悪かったの。そう考えたら、竣とはなにもかも相性は良かったもの!」
それは当時、喧嘩するのも面倒で、俺が明音に合わせていたのもある。
「空白の五年なんてこれから埋めていけばいいわ。今度は結婚前提の交際がしたい」
「いや、待てって」
「パパもママも私の結婚を心配していて、うるさいのよね。元カレとダメになったばかりだっていうのに。でも竣を連れて行けば絶対に気に入るはず」
俺が静止するのを無視するように、明音は自分の話を次から次へと話していく。
結婚前提の交際?! 話が突飛すぎるだろう。
俺の話も聞けとばかりに、俺は明音の両腕を持って無理やり体を引き離した。
「明音! 俺、恋人がいるんだ。明音とはやり直す気はない」
「竣……付き合ってる女性がいたんだね。じゃあ、その子と別れちゃえばいいのよ」
「は?!」
「私と結婚すれば逆玉よ? そっちのほうがいいでしょ? 今より絶対良い暮らしができるし、パパの会社の跡を継いで社長にもなれる」
俺と舞花が別れる?! 冗談じゃない。ありえないだろ。
逆玉とか、俺にはどうでもいいんだ。
「その彼女も竣と別れて、どこかの御曹司と結婚とか、玉の輿を狙ったほうがいいんじゃないのかな? そのほうが幸せになれるわよ」
俺は舞花と絶対別れない。
そう言い返そうと思ったところに、明音のその言葉だった。
俺らしくもなく、それには一瞬ひるんでしまった。
今日、舞花の会社であの光景を見てしまったからだ。
「明音、俺は彼女が好きなんだ。お前と打算で復縁なんて考えられないくらい彼女に惚れてる。だからもう、俺には連絡するな」
俺が静かなトーンではっきりと口にすれば、明音は少し寂しそうな顔をした。
こんな明音の顔は、付き合っていた頃もあまり見たことがない。
「ごめん。忘れて?」
明音はすばやくタクシーを止めて俺の前から去って行った。
そのあとずっと、俺の心はざわついたままだった。
それは明音を心配したからではなく、彼女の言葉が頭から離れなかったからだ。
たしかに女は金持ちと付き合ったり結婚するほうがいいだろう。
愛は金じゃ買えない! と言ったところで、現実的に金持ちの男を選ぶ女は多い。
じゃあ、舞花にとって俺はどうなのか……。
俺はいたって普通で、社長の息子とか御曹司でもない。
そんな俺と一緒に居て、舞花は幸せなのだろうか。
なんで急にそんな思考になる? ザルだと思っていたが、実は酔っているのか?
「婚約者のことは明音にとって災難だったと思うよ。だからって、今更俺とやり直したいなんて滅茶苦茶だ」
前を向いたまま言葉を発すれば、明音は抱きついたまま顔だけを上げて俺と視線を合わせる。
彼女は婚約がダメになって傷心中なのだ。
寂しいのか、それともヤケになってるのかわからないが、しっかりしてほしい。
「元婚約者みたいな頭の悪い男はもうご免だわ。その前に付き合ってた彼氏は、あっちの相性が悪かったの。そう考えたら、竣とはなにもかも相性は良かったもの!」
それは当時、喧嘩するのも面倒で、俺が明音に合わせていたのもある。
「空白の五年なんてこれから埋めていけばいいわ。今度は結婚前提の交際がしたい」
「いや、待てって」
「パパもママも私の結婚を心配していて、うるさいのよね。元カレとダメになったばかりだっていうのに。でも竣を連れて行けば絶対に気に入るはず」
俺が静止するのを無視するように、明音は自分の話を次から次へと話していく。
結婚前提の交際?! 話が突飛すぎるだろう。
俺の話も聞けとばかりに、俺は明音の両腕を持って無理やり体を引き離した。
「明音! 俺、恋人がいるんだ。明音とはやり直す気はない」
「竣……付き合ってる女性がいたんだね。じゃあ、その子と別れちゃえばいいのよ」
「は?!」
「私と結婚すれば逆玉よ? そっちのほうがいいでしょ? 今より絶対良い暮らしができるし、パパの会社の跡を継いで社長にもなれる」
俺と舞花が別れる?! 冗談じゃない。ありえないだろ。
逆玉とか、俺にはどうでもいいんだ。
「その彼女も竣と別れて、どこかの御曹司と結婚とか、玉の輿を狙ったほうがいいんじゃないのかな? そのほうが幸せになれるわよ」
俺は舞花と絶対別れない。
そう言い返そうと思ったところに、明音のその言葉だった。
俺らしくもなく、それには一瞬ひるんでしまった。
今日、舞花の会社であの光景を見てしまったからだ。
「明音、俺は彼女が好きなんだ。お前と打算で復縁なんて考えられないくらい彼女に惚れてる。だからもう、俺には連絡するな」
俺が静かなトーンではっきりと口にすれば、明音は少し寂しそうな顔をした。
こんな明音の顔は、付き合っていた頃もあまり見たことがない。
「ごめん。忘れて?」
明音はすばやくタクシーを止めて俺の前から去って行った。
そのあとずっと、俺の心はざわついたままだった。
それは明音を心配したからではなく、彼女の言葉が頭から離れなかったからだ。
たしかに女は金持ちと付き合ったり結婚するほうがいいだろう。
愛は金じゃ買えない! と言ったところで、現実的に金持ちの男を選ぶ女は多い。
じゃあ、舞花にとって俺はどうなのか……。
俺はいたって普通で、社長の息子とか御曹司でもない。
そんな俺と一緒に居て、舞花は幸せなのだろうか。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません
如月 そら
恋愛
旧題:隠れドS上司はTL作家を所望する!
【書籍化】
2023/5/17 『隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません』としてエタニティブックス様より書籍化❤️
たくさんの応援のお陰です❣️✨感謝です(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
🍀WEB小説作家の小島陽菜乃はいわゆるTL作家だ。
けれど、最近はある理由から評価が低迷していた。それは未経験ゆえのリアリティのなさ。
さまざまな資料を駆使し執筆してきたものの、評価が辛いのは否定できない。
そんな時、陽菜乃は会社の倉庫で上司が同僚といたしているのを見てしまう。
「隠れて覗き見なんてしてたら、興奮しないか?」
真面目そうな上司だと思っていたのに︎!!
……でもちょっと待って。 こんなに慣れているのなら教えてもらえばいいんじゃないの!?
けれど上司の森野英は慣れているなんてもんじゃなくて……!?
※普段より、ややえちえち多めです。苦手な方は避けてくださいね。(えちえち多めなんですけど、可愛くてきゅんなえちを目指しました✨)
※くれぐれも!くれぐれもフィクションです‼️( •̀ω•́ )✧
※感想欄がネタバレありとなっておりますので注意⚠️です。感想は大歓迎です❣️ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)💕
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる