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番外編⑥
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「会社のお金に手をつけてたのがパパにバレたの。お金は返すって約束させたから、パパも大ごとにはしなかたんだけど」
その男、当然だが結婚も破談だし会社もクビだ。
警察に突き出されなかっただけ、明音の親父さんに感謝しなければいけない。
「サイアクだよね」
「ああ。うん……」
「なんかね、すごく冷めたの。その彼、どう考えてもバカでしょ?」
結婚の話まで進んでいた男とそんなことがあって、落ち込んでいるのかと思いきや、明音は威勢よく俺に愚痴を言いだしそうだ。
「まぁ、バカだな」
横領なんてとんでもないことをしでかすのだからバカには違いない。
「だって、私と結婚する話になっていたのよ? いずれはパパの跡をついで自分が社長になるはずだった。そうなったらお金だって、自分の手元にたくさん入ってくるじゃない? なのにどうしてわざわざ、結婚前に会社のお金を盗むの? 頭が悪い! バカよ、バカ!」
俺に話をすることでいろいろ思い出したのか、明音はついにブチ切れて感情をあらわにした。
バカな男と結婚しなくて良かった、と。
「たしかにそうだけど、なにか理由があったんじゃないのか?」
「理由って?」
「それはわからないけど……たとえば明音にも言えない借金があったとか、貢いでる女が居たとか?」
俺の言葉を聞くと明音は黙り込み、黙々と目の前の料理を食べてワインを飲んでいた。
他に女が居た可能性を示唆したことは余計だったかな。
正直、その可能性は否めないけれど。
言ってしまった後だからもう遅いとはいえ、俺は自分のデリカシーのなさを反省していた。
「私、竣と別れてから、男運わるーい!」
食事を終えて外に出ると、明音は路上で人目もはばからずにそう叫んだ。
「明音、声がデカい」
「そう? 私、酔っちゃったみたい」
「ウソつけ。酔ってないだろ? 俺、お前が酔ってるとこは見たことないから」
昔から明音は酒が強かった。
今日はワインを飲んでいたけれど、あれくらいの量で彼女が泥酔するとは思えない。
「なんだ、バレたか。私がお酒で酔わないの、覚えていたんだね」
明音はうれしそうな表情で言うけれど、単にその印象が強かっただけだ。
酒の強い女だな、ザルなのかな?……と、付き合っていた当時にも思ったからだ。
とはいえ、明音のことを逐一全て覚えているわけではない。
長くは付き合わなかったし、あれから歳月は五年も過ぎてる。
「俺は電車で帰るけど、明音はタクシーか?」
「……竣」
「ん?」
ふいに立ち止まった明音に、俺は振り返る形で体を後ろに反転させる。
その瞬間、腕を引っ張られ、少しかがんだ体勢になったところへ明音から唇にキスされてしまった。
「明音、なにしてるんだよ」
すぐに唇は離したものの、驚いた俺はそんなありきたりな言葉しか出てこなかった。
だけど明音は俺が驚いてる隙に、両腕を俺の腰から背中に回してベッタリと抱きついてくる。
その男、当然だが結婚も破談だし会社もクビだ。
警察に突き出されなかっただけ、明音の親父さんに感謝しなければいけない。
「サイアクだよね」
「ああ。うん……」
「なんかね、すごく冷めたの。その彼、どう考えてもバカでしょ?」
結婚の話まで進んでいた男とそんなことがあって、落ち込んでいるのかと思いきや、明音は威勢よく俺に愚痴を言いだしそうだ。
「まぁ、バカだな」
横領なんてとんでもないことをしでかすのだからバカには違いない。
「だって、私と結婚する話になっていたのよ? いずれはパパの跡をついで自分が社長になるはずだった。そうなったらお金だって、自分の手元にたくさん入ってくるじゃない? なのにどうしてわざわざ、結婚前に会社のお金を盗むの? 頭が悪い! バカよ、バカ!」
俺に話をすることでいろいろ思い出したのか、明音はついにブチ切れて感情をあらわにした。
バカな男と結婚しなくて良かった、と。
「たしかにそうだけど、なにか理由があったんじゃないのか?」
「理由って?」
「それはわからないけど……たとえば明音にも言えない借金があったとか、貢いでる女が居たとか?」
俺の言葉を聞くと明音は黙り込み、黙々と目の前の料理を食べてワインを飲んでいた。
他に女が居た可能性を示唆したことは余計だったかな。
正直、その可能性は否めないけれど。
言ってしまった後だからもう遅いとはいえ、俺は自分のデリカシーのなさを反省していた。
「私、竣と別れてから、男運わるーい!」
食事を終えて外に出ると、明音は路上で人目もはばからずにそう叫んだ。
「明音、声がデカい」
「そう? 私、酔っちゃったみたい」
「ウソつけ。酔ってないだろ? 俺、お前が酔ってるとこは見たことないから」
昔から明音は酒が強かった。
今日はワインを飲んでいたけれど、あれくらいの量で彼女が泥酔するとは思えない。
「なんだ、バレたか。私がお酒で酔わないの、覚えていたんだね」
明音はうれしそうな表情で言うけれど、単にその印象が強かっただけだ。
酒の強い女だな、ザルなのかな?……と、付き合っていた当時にも思ったからだ。
とはいえ、明音のことを逐一全て覚えているわけではない。
長くは付き合わなかったし、あれから歳月は五年も過ぎてる。
「俺は電車で帰るけど、明音はタクシーか?」
「……竣」
「ん?」
ふいに立ち止まった明音に、俺は振り返る形で体を後ろに反転させる。
その瞬間、腕を引っ張られ、少しかがんだ体勢になったところへ明音から唇にキスされてしまった。
「明音、なにしてるんだよ」
すぐに唇は離したものの、驚いた俺はそんなありきたりな言葉しか出てこなかった。
だけど明音は俺が驚いてる隙に、両腕を俺の腰から背中に回してベッタリと抱きついてくる。
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