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◇本気の恋を教えます⑤

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『週末、秋祭りに一緒に行かない?』

 数日が経ち、残暑もかなり落ち着いてきたころ、和久井さんからそんなメッセージが来た。

「そんなにニヤけちゃって、デートのお誘い?」

 お昼休みにスマホを見ていたら、わかりやす過ぎると美里に盛大に冷やかされた。

「秋祭りに行こうって」
「いいね。付き合いたてのころはデートも楽しそう!」
「でも……がんばらないとね。私を好きになってもらえるように」

 まったく意味がわからないとばかりに、美里が小首をかしげた。

「和久井さんも舞花のことが好きだから付き合ってるんでしょ?」
「そうなんだけど……他の子よりは好きってレベルかもしれないでしょ」

 和久井さんはあの日、たしかに私を好きだと言ってくれたけれど、私は自信なんて持てないでいる。
 きっと私のほうが、何倍も彼を好きだ。

 そのため、和久井さんが無理をして付き合ってくれているのではないかと、ときどきそんなネガティブな気持ちが押し寄せてくる。
 短期間でフラれてしまうかも、やはり私ではダメなのかも、……彼はあの女性を忘れられないのかも、と。

 だけど不安がってばかりいても仕方が無いのだ。
 私はどうしようもなく和久井さんが好きで、彼と一緒にいられるだけで幸せだし、会えるだけでうれしいのだから。

 週末の土曜、お祭り当日になった。
 隣町に大きな神社があり、そこで規模の大きな秋祭りが毎年開催されている。
 最後に盛大な花火も上がるので、今年もかなりの人出が予想される。

 和久井さんとは、祭りが行われる最寄り駅で待ち合わせをした。
 駅の改札を出ると小さな噴水があるので、それを目印に。
 待ち合わせの時間は午後六時だったけれど、到着時に時計に目をやれば、まだ五時四十分だった。
 二十分も前に着くとは、早く来すぎただろうか。
 でも、遅れてあわてるよりはいい。

 私たちの他にも駅で待ち合わせしている人はたくさん居た。
 同じように、噴水の辺りで改札から出てくる人たちのほうを見ている。
 今日の服装は、肩が少し露出しているトップスにしてみた。
 昼間からずっと蒸し暑かったので、これくらいの格好でも夜も寒くはないだろう。
 髪には、この前プレゼントしてもらったシュシュをつけた。
 彼は、今日の私をかわいいと思ってくれるだろうか。

「ねぇ、祭りに行くの? 俺たちと一緒に行こうよ」

 待ち合わせの噴水の前で彼を待っていたら、突然ふたり組の男性が目の前に現れた。
 髪の毛が金髪に近い色で、俗に言う感じのする人たちだ。

「私、待ち合わせしてるんで」
「でもさっきからずっとここに居るし、彼氏にすっぽかされたんじゃないの?」
「違います」

 私はこういうタイプの男性は嫌いだ。
 人の話を聞かない上、自己中心的で強引だから。
 一緒に過ごしても楽しくないだろうし、男性としての魅力をまったく感じない。

「待ってても来ないって! 俺たちと一緒に行こ? 祭りの後でさぁ、カラオケ行くのもよくない?」

 そして、しつこいのだ。

「あの、行かないですから!」

 どうしよう。和久井さんと待ち合わせしてる以上、ここからあまり動きたくはない。
 この人たちがどこかへ消えてくれるのが一番いいが、もう少しで私の腕を掴んで連れて行きそうな感じがしてきた。
 もしそうなったら、大声をあげて逃げるしかないのだけれど。
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