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◆交錯④
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「こういうの、女の子は貰うとうれしいのかな?」
「もちろんうれしいですよ」
そうなのかと納得しつつ、俺は今、確実に舞花ちゃんの姿が頭に浮かんでいた。
初めはプレゼントを買う気はなかったけれど、彼女がこういうのを髪につけているのを見たことがあるし、なんだか買いたくなってきた。
このシュシュが、舞花ちゃんを連想させたからだ。
「でも、どういうのがいいのか全然わからないな」
色やデザインや柄がいろいろあって、男の俺にはどれがいいかなんてすぐに選べるはずもない。
遥ちゃんが俺の隣に来て、並べてあるシュシュを手に取った。
「これはオシャレですけど、職場ではちょっと派手かもしれませんね」
「仕事柄、派手なのはダメだと思うんだ。だからシンプルなやつがいいかな」
「じゃあ、これなんてどうでしょう?」
遥ちゃんが俺に勧めたのは、茶色の濃淡のデザインがあしらわれたシュシュだった。
「シンプルでいいと思いますよ?」
「そうだね。これだったら仕事のときも付けていられそうだな」
色も茶色なので派手ではないし、大井コーポレーションの制服ともしっくりくる。
「ちなみに、どんなお仕事されてる方なんですか?」
「遥ちゃん知ってるかな? 大井コーポレーションって会社。そこの受付で働いてる子がいて……」
「ああ! 知ってます。大きな会社ですよね。ていうか和久井さん、彼女ができたんですね!」
心底うれしそうな笑顔で聞いてくる遥ちゃんは、本当に天然だ。
自分がフッた男に彼女ができたのか? と堂々と質問するとは。
「彼女ではないけどね」
「じゃあ、これからですか?」
「これから?」
「だって、和久井さんはその気がありそうに見えますもん。だからその彼女にプレゼントしたいんでしょ? 恋人同士になれそうなんですか? うまくいくといいですね!」
遥ちゃんをきっぱり諦めて本当に良かったな。
諦めてなければ、今頃その発言で俺は打ちのめされている。
「これはどうかな?」
会話の途中で俺の目にふと止まったのは、アイボリーのシュシュだった。
ところどころに小さなパールの装飾があって、とても上品だ。
「それもいいですね。装飾もパールだから清楚な感じですよ」
「実はその子自身も清楚な感じなんだ。白が似合うし、色白だし」
我ながら、いいデザインのものを見つけたと思う。
舞花ちゃんがこれを付けているところを想像すると、思わずニヤけそうだ。
「あ、もしかして!」
「……ん?」
「色白の人って、この前会ったときに一緒に居た女性ですか?」
「うん。あの中にいた」
飲み会のあの日、女性は四人いたけれど、舞花ちゃんがどの子なのか、遥ちゃんはわかったのだろうか?
「あの時、ずっとこっちを見ていた女性がひとりいたんです」
「……え?」
「和久井さん、気づいてなかったんですね。私と和久井さんが話してるとき、遠くからこっちを見ていて……きっとその人だと思います」
「もちろんうれしいですよ」
そうなのかと納得しつつ、俺は今、確実に舞花ちゃんの姿が頭に浮かんでいた。
初めはプレゼントを買う気はなかったけれど、彼女がこういうのを髪につけているのを見たことがあるし、なんだか買いたくなってきた。
このシュシュが、舞花ちゃんを連想させたからだ。
「でも、どういうのがいいのか全然わからないな」
色やデザインや柄がいろいろあって、男の俺にはどれがいいかなんてすぐに選べるはずもない。
遥ちゃんが俺の隣に来て、並べてあるシュシュを手に取った。
「これはオシャレですけど、職場ではちょっと派手かもしれませんね」
「仕事柄、派手なのはダメだと思うんだ。だからシンプルなやつがいいかな」
「じゃあ、これなんてどうでしょう?」
遥ちゃんが俺に勧めたのは、茶色の濃淡のデザインがあしらわれたシュシュだった。
「シンプルでいいと思いますよ?」
「そうだね。これだったら仕事のときも付けていられそうだな」
色も茶色なので派手ではないし、大井コーポレーションの制服ともしっくりくる。
「ちなみに、どんなお仕事されてる方なんですか?」
「遥ちゃん知ってるかな? 大井コーポレーションって会社。そこの受付で働いてる子がいて……」
「ああ! 知ってます。大きな会社ですよね。ていうか和久井さん、彼女ができたんですね!」
心底うれしそうな笑顔で聞いてくる遥ちゃんは、本当に天然だ。
自分がフッた男に彼女ができたのか? と堂々と質問するとは。
「彼女ではないけどね」
「じゃあ、これからですか?」
「これから?」
「だって、和久井さんはその気がありそうに見えますもん。だからその彼女にプレゼントしたいんでしょ? 恋人同士になれそうなんですか? うまくいくといいですね!」
遥ちゃんをきっぱり諦めて本当に良かったな。
諦めてなければ、今頃その発言で俺は打ちのめされている。
「これはどうかな?」
会話の途中で俺の目にふと止まったのは、アイボリーのシュシュだった。
ところどころに小さなパールの装飾があって、とても上品だ。
「それもいいですね。装飾もパールだから清楚な感じですよ」
「実はその子自身も清楚な感じなんだ。白が似合うし、色白だし」
我ながら、いいデザインのものを見つけたと思う。
舞花ちゃんがこれを付けているところを想像すると、思わずニヤけそうだ。
「あ、もしかして!」
「……ん?」
「色白の人って、この前会ったときに一緒に居た女性ですか?」
「うん。あの中にいた」
飲み会のあの日、女性は四人いたけれど、舞花ちゃんがどの子なのか、遥ちゃんはわかったのだろうか?
「あの時、ずっとこっちを見ていた女性がひとりいたんです」
「……え?」
「和久井さん、気づいてなかったんですね。私と和久井さんが話してるとき、遠くからこっちを見ていて……きっとその人だと思います」
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