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◇前進⑪
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「すみません! 食べっぷりが気持ちいいなって、つい見とれちゃいました」
「これくらい、男なら普通」
「そうですよね」
私が誰かと食事をするときは、相手は女友達なので、男性の食事量の多さが私には珍しいのだ。
和久井さんに見惚れていたのはたしかだが、それはさすがに言えない。
「女の子はびっくりするくらい食べないもんな」
「私なんて、食べ過ぎたらすぐ太りますからね」
油断していたら体重なんてすぐに増える。
スカートのウエストがきつくなって焦ることも多々あるし、そのたびにダイエットをして調整しているのだ。
「そうなの? でも舞花ちゃんはいつもかわいいよ」
「え?!」
「俺が訪問する会社の受付嬢の中で、ダントツ!」
そう言われた瞬間、みるみるうちに頬が熱くなっていくのが自分でもわかった。
私は本当に単細胞だ。
和久井さんはお世辞で言ってくれたのに、真に受けて顔を赤くしたりして。
「はは。赤くなって益々かわいい」
「からかわないでくださいよ。お世辞なのはわかってますから」
私がさっき和久井さんを来客の人の中で一番カッコいいと言ったから、逆に私のことも褒めてくれただけなのだ。
単純にただそれだけだったのに、好きな人に言われたらどうしようもなく動揺した。
「正直な気持ちだし、お世辞じゃないけど?」
彼のそんな言葉にもキュンとしてしまう私は、自分で思っているよりも重症らしい。
ラーメンを完食してお腹いっぱいになった私たちは、お店を後にした。
「ちょっと車でブラブラしようか」
和久井さんが再び車を走らせながらつぶやく。
今日は比較的天気の良い休日なので、仲良し家族や、デートするカップルの姿が車窓から見えた。
そんな街頭の景色を横目に、私たちも傍から見ると付き合っているように見えるのだろうか、などと考えて、時折運転席の和久井さんを意識した。
和久井さんは横顔もやっぱりカッコよくて、こんなイケメンの人の部屋に行ってしまったのだと、この間のことを思い出して恥ずかしさがこみ上げてくる。
「あ、あの……」
「ん?」
「この前は、すみませんでした。酔ってお部屋に上がりこんでしまって……」
酔った私を心配して介抱してくれたのだから、お礼というかお詫びをきちんと言いたかった。
彼にとっては迷惑だったかもしれないもの。
「酔ってたよな、お互いに。でも、舞花ちゃんを部屋に連れ込んだのは俺なんだから謝らないでよ」
なんともバツが悪そうに、和久井さんが苦笑う。
だけどそんな顔をする必要はないのだ。私たちはなにもなかったのだから。
「舞花ちゃんは、あの夜なにもなくてホッとした? それとも……残念だった?」
「え?!」
なんという質問をしてくるのだろう。
驚きすぎて変な声が出てしまった。
「これくらい、男なら普通」
「そうですよね」
私が誰かと食事をするときは、相手は女友達なので、男性の食事量の多さが私には珍しいのだ。
和久井さんに見惚れていたのはたしかだが、それはさすがに言えない。
「女の子はびっくりするくらい食べないもんな」
「私なんて、食べ過ぎたらすぐ太りますからね」
油断していたら体重なんてすぐに増える。
スカートのウエストがきつくなって焦ることも多々あるし、そのたびにダイエットをして調整しているのだ。
「そうなの? でも舞花ちゃんはいつもかわいいよ」
「え?!」
「俺が訪問する会社の受付嬢の中で、ダントツ!」
そう言われた瞬間、みるみるうちに頬が熱くなっていくのが自分でもわかった。
私は本当に単細胞だ。
和久井さんはお世辞で言ってくれたのに、真に受けて顔を赤くしたりして。
「はは。赤くなって益々かわいい」
「からかわないでくださいよ。お世辞なのはわかってますから」
私がさっき和久井さんを来客の人の中で一番カッコいいと言ったから、逆に私のことも褒めてくれただけなのだ。
単純にただそれだけだったのに、好きな人に言われたらどうしようもなく動揺した。
「正直な気持ちだし、お世辞じゃないけど?」
彼のそんな言葉にもキュンとしてしまう私は、自分で思っているよりも重症らしい。
ラーメンを完食してお腹いっぱいになった私たちは、お店を後にした。
「ちょっと車でブラブラしようか」
和久井さんが再び車を走らせながらつぶやく。
今日は比較的天気の良い休日なので、仲良し家族や、デートするカップルの姿が車窓から見えた。
そんな街頭の景色を横目に、私たちも傍から見ると付き合っているように見えるのだろうか、などと考えて、時折運転席の和久井さんを意識した。
和久井さんは横顔もやっぱりカッコよくて、こんなイケメンの人の部屋に行ってしまったのだと、この間のことを思い出して恥ずかしさがこみ上げてくる。
「あ、あの……」
「ん?」
「この前は、すみませんでした。酔ってお部屋に上がりこんでしまって……」
酔った私を心配して介抱してくれたのだから、お礼というかお詫びをきちんと言いたかった。
彼にとっては迷惑だったかもしれないもの。
「酔ってたよな、お互いに。でも、舞花ちゃんを部屋に連れ込んだのは俺なんだから謝らないでよ」
なんともバツが悪そうに、和久井さんが苦笑う。
だけどそんな顔をする必要はないのだ。私たちはなにもなかったのだから。
「舞花ちゃんは、あの夜なにもなくてホッとした? それとも……残念だった?」
「え?!」
なんという質問をしてくるのだろう。
驚きすぎて変な声が出てしまった。
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