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◇前進②
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「竣は女嫌いじゃないのに、来るもの“拒んで”去るもの追わず、なんだよ。だから女の子からすると難攻不落だし、モテるけど彼女がいないんだ」
「来るものを拒む?」
「ああ。自分が少しでも気乗りしない場合は絶対断る。俺からしたら、一度デートくらいしてみればいいのにって思うけど」
難攻不落、か……。なんだか和久井さんらしい気がする。
和久井さんは決して自分から女の子にアプローチするタイプではないみたいだ。
だったらなおさら、先ほどのふたりの光景はショックだ……。
あの女性だけは特別なのだと言っているに等しい。
「でもアイツ、舞花ちゃんとは楽しそうに喋ってたよ。俺が見る限り、気が合ってると思う。それに舞花ちゃんみたいな癒し系のかわいい子は、竣のタイプだよ」
思わずため息を吐きそうになった。これは完全に佐藤さんに慰められている。私を少しでも落ちこませないためだ。
「そう言われてみると……さっきの子と舞花って、ホワンとした雰囲気が同系統って感じがするね」
「だろ? 竣にはど真ん中のストライクだ」
美里と佐藤さんのそんな会話が聞こえたけれど、私はさっきの彼女みたいにかわいく笑えないし、和久井さんからもやさしい眼差しで微笑んでもらえない。大違いではないか。
「舞花ちゃん、大丈夫だよ! あの子はうちの営業部の先輩と付き合ってるんだ。だから竣とくっついたりしないよ」
佐藤さんは明るく笑い飛ばすように言うけれど、なにが“大丈夫”なのだろう。
彼女に恋人がいると頭では理解していても、和久井さん自身は今でも彼女が好きなのかもしれない。
「がんばって積極的にいきなよ。舞花ちゃんなら竣は拒まないと思うけどな」
佐藤さんにそう言ってもらえても、先ほどの場面を見せられたあとでは、自信なんて微塵も持てなくなってしまった。
あれこれ考えていたら歩く速度が遅くなり、前を歩く美里たちとの距離が少しあいた。
さっきまで私の隣に和久井さんが歩いていたのに……
そう思うと、ぽっかりと空いた空間が妙に寂しく感じる。
「はぁ、追いついた!」
私の後ろから足音がしたと思ったら、和久井さんが突然私の隣に現れた。走ってきたせいか息を切らしている。
「ごめんね。偶然知り合いに会ったから」
“知り合い”……その言葉がひっかかったが、和久井さんがそう言うなら、今はそういうことにしておこう。
友達でも好きな人でもなく、“知り合い”なのだ。
「来るものを拒む?」
「ああ。自分が少しでも気乗りしない場合は絶対断る。俺からしたら、一度デートくらいしてみればいいのにって思うけど」
難攻不落、か……。なんだか和久井さんらしい気がする。
和久井さんは決して自分から女の子にアプローチするタイプではないみたいだ。
だったらなおさら、先ほどのふたりの光景はショックだ……。
あの女性だけは特別なのだと言っているに等しい。
「でもアイツ、舞花ちゃんとは楽しそうに喋ってたよ。俺が見る限り、気が合ってると思う。それに舞花ちゃんみたいな癒し系のかわいい子は、竣のタイプだよ」
思わずため息を吐きそうになった。これは完全に佐藤さんに慰められている。私を少しでも落ちこませないためだ。
「そう言われてみると……さっきの子と舞花って、ホワンとした雰囲気が同系統って感じがするね」
「だろ? 竣にはど真ん中のストライクだ」
美里と佐藤さんのそんな会話が聞こえたけれど、私はさっきの彼女みたいにかわいく笑えないし、和久井さんからもやさしい眼差しで微笑んでもらえない。大違いではないか。
「舞花ちゃん、大丈夫だよ! あの子はうちの営業部の先輩と付き合ってるんだ。だから竣とくっついたりしないよ」
佐藤さんは明るく笑い飛ばすように言うけれど、なにが“大丈夫”なのだろう。
彼女に恋人がいると頭では理解していても、和久井さん自身は今でも彼女が好きなのかもしれない。
「がんばって積極的にいきなよ。舞花ちゃんなら竣は拒まないと思うけどな」
佐藤さんにそう言ってもらえても、先ほどの場面を見せられたあとでは、自信なんて微塵も持てなくなってしまった。
あれこれ考えていたら歩く速度が遅くなり、前を歩く美里たちとの距離が少しあいた。
さっきまで私の隣に和久井さんが歩いていたのに……
そう思うと、ぽっかりと空いた空間が妙に寂しく感じる。
「はぁ、追いついた!」
私の後ろから足音がしたと思ったら、和久井さんが突然私の隣に現れた。走ってきたせいか息を切らしている。
「ごめんね。偶然知り合いに会ったから」
“知り合い”……その言葉がひっかかったが、和久井さんがそう言うなら、今はそういうことにしておこう。
友達でも好きな人でもなく、“知り合い”なのだ。
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