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◇恋心②
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午前の仕事が終わり、お昼休みを挟んで午後の業務がスタートした。
「もうすぐ和久井さんが来るね。今日の舞花のメイクかわいい」
「からかわないで!」
口元を少し膨らませて抗議すれば、それを見た美里が声を殺して楽しそうに笑う。
たしかにお昼休みが終わると共に、きちんとメイク直しはしておいたけれど。
平常心を取り戻さなければと姿勢を正したところで、正面玄関の自動扉が開いてスーツの男性が入ってきた。
和久井竣さんは、㈱ケーピーエスの営業部・営業二課所属だ。年齢は二十七歳らしい。
身長は178センチくらいで、体形はスラッとした細身のイメージだけれど、いつもセンスの良いスーツを着こなしていてカッコいい。
少し額にかかる黒い前髪と目力の強さは、クールという言葉がぴったりなイケメンだ。
「お世話になります。ケーピーエスの和久井です」
もう何度も来ているのだから、私も美里も和久井さんの顔や名前は見知っている。
だけど和久井さんは毎回丁寧に会社名と名前を告げて、爽やかな笑みを向けてくれる。
「いちいち名乗らなくてもわかってますよ~」
「はは。そうだよね」
周りに誰もいないのを確認しつつ、美里が和久井さんにフレンドリーに話しかけ、和久井さんも思わず声に出して笑っている。
「専務ですよね。お待ちください」
そこまで口にしてからハッと気づいて、美里のほうを伺い見た。
「もしかして専務って……」
「ん? あぁ……まだかな」
美里も私の言わんとすることがわかったようで、瞬間的に眉をひそめた。
「とりあえず秘書課に聞いてみる」
私はあわてて秘書課のほうへ内線電話で確認を入れた。
おそらく専務はまだ会社に戻ってきていない。
帰社予定は十三時ということになっていて、和久井さんとのアポは十三時三十分だ。
予定通りならば専務は会社にいるはずなのだが、会社の地下駐車場に取り付けてあるカメラの映像をパソコンで確認しても、専務の社用車の駐車スペースに車はない。
案の定、秘書課に電話してもまだ戻ってきていないという返事だった。
「和久井さん、すみません。専務がまだこちらに戻ってきていないようですので、担当秘書の携帯に直接電話をしてみます」
そう伝えると、和久井さんは「お願いします」と苦笑いの笑みをたたえた。
渋滞などで帰る予定が少し遅れているだけならいいのだけれど……
そう願いながら同行している専務専属の秘書に電話を入れたが、専務は優雅にまだ会食中らしく、会社に戻るにはあと四十分以上かかると言われてしまった。
「もうすぐ和久井さんが来るね。今日の舞花のメイクかわいい」
「からかわないで!」
口元を少し膨らませて抗議すれば、それを見た美里が声を殺して楽しそうに笑う。
たしかにお昼休みが終わると共に、きちんとメイク直しはしておいたけれど。
平常心を取り戻さなければと姿勢を正したところで、正面玄関の自動扉が開いてスーツの男性が入ってきた。
和久井竣さんは、㈱ケーピーエスの営業部・営業二課所属だ。年齢は二十七歳らしい。
身長は178センチくらいで、体形はスラッとした細身のイメージだけれど、いつもセンスの良いスーツを着こなしていてカッコいい。
少し額にかかる黒い前髪と目力の強さは、クールという言葉がぴったりなイケメンだ。
「お世話になります。ケーピーエスの和久井です」
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「専務ですよね。お待ちください」
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「ん? あぁ……まだかな」
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「とりあえず秘書課に聞いてみる」
私はあわてて秘書課のほうへ内線電話で確認を入れた。
おそらく専務はまだ会社に戻ってきていない。
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渋滞などで帰る予定が少し遅れているだけならいいのだけれど……
そう願いながら同行している専務専属の秘書に電話を入れたが、専務は優雅にまだ会食中らしく、会社に戻るにはあと四十分以上かかると言われてしまった。
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