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◇手に入れた陽だまり⑥
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「もちろん誠心誠意謝ったよ。娘を幸せにしてくれと言われていたのに出来なかったんだから。でも、わかってくれた。というよりも逆に謝られた。ワガママな娘を押し付けてすまなかった、と」
ふたりが分かり合えてよかった。
義理の息子になりたいとまで慕っていた人だもの。
なのに少なからず私のせいでその関係が壊れたとなれば胸が痛む。
そうならなくて本当によかった。
「副社長の職は返上した」
「え?!」
「娘と結婚した経緯で与えられたポジションだったから当然だ。離婚した今もそこに居座り続けるほど俺は厚顔無恥じゃない」
日下さんが……サンシャインの副社長ではなくなった。
イケメン副社長としてビジネス雑誌やネットにまで載っている人なのに。
いきなり辞めてしまって大丈夫なのかと心配になってくる。
彼は今後どうするつもりなのだろう?
「なに? 俺が副社長じゃなくなって残念?」
「いえ。そうじゃありません。ただ、大丈夫なのかなって心配になっただけです!」
私は別に、日下さんがサンシャインの副社長だから惹かれたわけではない。
御曹司だとか金持ちそうだとか、たしかに萌奈ちゃんと話していたことはあったけれど、それは関係ない。
そこだけは誤解しないでもらいたい。
「はは。君ならそう言うと思った。怒るなよ」
私の心配やモヤモヤをよそに、日下さんは冗談っぽく私の頭をポンポンと撫でる。
「まぁでも。すんなりと辞めさせてくれなかったよ」
「……え?」
「サンシャインの系列にパティシエを育成する製菓専門学校があるんだけど、俺、来週からそこの理事長だって」
「り、理事長?!」
「次は学校経営をしろってことらしい」
母体であるサンシャインの副社長からすれば、グループ末端の専門学校への異動はかなりの格差があるらしいけれど。
私にはよくわからない。
専門学校の理事長だって、十分すごいと思うから。
「社長は人がよすぎるよ。自分の娘と離婚をした俺にまだ世話を焼くんだから」
一見、自虐的に彼が笑ったように見えたけれど。
……違う。よく見ると泣いている。
目の淵に薄っすらと涙が溜まっているのがわかった。
日下一朗という人に、多大なる感謝の念があるからこその涙。きっとそうなのだろう。
「私、ずっと勘違いをしていました。日下さんのこと」
「勘違い?」
「はい。生まれたときから御曹司でお坊ちゃん育ちで、庶民とはかなり感覚が違うんだろうなって。大きな家に住んで、なにひとつ苦労しないで生きてきた人だろうって」
「酷いな」
「すみません」
日下一朗さんとは本当の親子なのだと思っていたから仕方ない。
生まれもっての日下家の御曹司で、小さいころから英才教育を受けて育った人だと思い込んでいた。
それがまさか、娘婿として途中から日下家の一員になっていたとは考えてもみなかった。
だから私とは住む世界が違う人だと……
ありとあらゆる感覚が、きっと自分とは違うのだろうと勝手に線を引いていた。
「悪いけど俺は生まれも育ちも超庶民でね。そのへんのお坊ちゃんと違って一般的な感覚はズレてないと思う」
先ほど奥さんと結婚に至った経緯を話してくれたときに、高二で実のお父さんを亡くしたことも聞いた。
なので私が思っていたのと間逆だったのだ。
ふたりが分かり合えてよかった。
義理の息子になりたいとまで慕っていた人だもの。
なのに少なからず私のせいでその関係が壊れたとなれば胸が痛む。
そうならなくて本当によかった。
「副社長の職は返上した」
「え?!」
「娘と結婚した経緯で与えられたポジションだったから当然だ。離婚した今もそこに居座り続けるほど俺は厚顔無恥じゃない」
日下さんが……サンシャインの副社長ではなくなった。
イケメン副社長としてビジネス雑誌やネットにまで載っている人なのに。
いきなり辞めてしまって大丈夫なのかと心配になってくる。
彼は今後どうするつもりなのだろう?
「なに? 俺が副社長じゃなくなって残念?」
「いえ。そうじゃありません。ただ、大丈夫なのかなって心配になっただけです!」
私は別に、日下さんがサンシャインの副社長だから惹かれたわけではない。
御曹司だとか金持ちそうだとか、たしかに萌奈ちゃんと話していたことはあったけれど、それは関係ない。
そこだけは誤解しないでもらいたい。
「はは。君ならそう言うと思った。怒るなよ」
私の心配やモヤモヤをよそに、日下さんは冗談っぽく私の頭をポンポンと撫でる。
「まぁでも。すんなりと辞めさせてくれなかったよ」
「……え?」
「サンシャインの系列にパティシエを育成する製菓専門学校があるんだけど、俺、来週からそこの理事長だって」
「り、理事長?!」
「次は学校経営をしろってことらしい」
母体であるサンシャインの副社長からすれば、グループ末端の専門学校への異動はかなりの格差があるらしいけれど。
私にはよくわからない。
専門学校の理事長だって、十分すごいと思うから。
「社長は人がよすぎるよ。自分の娘と離婚をした俺にまだ世話を焼くんだから」
一見、自虐的に彼が笑ったように見えたけれど。
……違う。よく見ると泣いている。
目の淵に薄っすらと涙が溜まっているのがわかった。
日下一朗という人に、多大なる感謝の念があるからこその涙。きっとそうなのだろう。
「私、ずっと勘違いをしていました。日下さんのこと」
「勘違い?」
「はい。生まれたときから御曹司でお坊ちゃん育ちで、庶民とはかなり感覚が違うんだろうなって。大きな家に住んで、なにひとつ苦労しないで生きてきた人だろうって」
「酷いな」
「すみません」
日下一朗さんとは本当の親子なのだと思っていたから仕方ない。
生まれもっての日下家の御曹司で、小さいころから英才教育を受けて育った人だと思い込んでいた。
それがまさか、娘婿として途中から日下家の一員になっていたとは考えてもみなかった。
だから私とは住む世界が違う人だと……
ありとあらゆる感覚が、きっと自分とは違うのだろうと勝手に線を引いていた。
「悪いけど俺は生まれも育ちも超庶民でね。そのへんのお坊ちゃんと違って一般的な感覚はズレてないと思う」
先ほど奥さんと結婚に至った経緯を話してくれたときに、高二で実のお父さんを亡くしたことも聞いた。
なので私が思っていたのと間逆だったのだ。
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