【完結】MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~

夏目若葉

文字の大きさ
上 下
66 / 72

◇手に入れた陽だまり③

しおりを挟む
「鈍感にも程があるな。俺だよ」
「……え……じゃあ、あのときの……」
「そう、俺。また会いたいと思ってくれててうれしいけど、どうして気づかないかな」

 ―― 信じられない。
 あのイケメン男性が、まさか日下さんだったなんて!!

「だ、だって……あのときは、髪の毛が茶髪でパーマがかかっていて……」
「たしかに大学生のころはそういう髪型をしていたな。だけど社会人になったらあんな明るい茶髪はナシだろ」
「めがね……黒縁めがねをかけてましたよ?!」
「今はコンタクトだ」

 今の日下さんの髪を茶髪にしてパーマをかけ、黒縁めがねをかけたら……と想像を膨らませてみる。
 言われてみれば十年前の彼と一致する。

 高校生だった私はイケメン男性とお茶をするのが恥ずかしくて、あまり顔を凝視できないでいたから気づくのが遅れた。
 あの男性は間違いなく日下さんだ。
 だから私は、自然と今の日下さんにも惹かれたのだと思う。

「忘れられない男がいると言うから、柄にもなく嫉妬したのに」
「え?」
「聞いてみたらソイツは俺じゃないか。なのに肝心の君はそれに気づいてない。二重に驚いたよ」

 あわあわとあわてる私の反応なんてまるで無視で、日下さんが恨み節を言い募る。

「だ、だったら……どうして私が話したときに自分だって言ってくれなかったんですか?」

 ホテルで話したとき、ロイヤルミルクティーを一緒に飲んだのは自分だと気づいたなら、教えてくれたらよかったのに。

「……言えないだろ。綺麗な思い出話を語る君に、その男は俺だなんて。ウソ臭くなるから君は信じないかもしれない」

 そ、そんな……
 途中から自分の話だと気づいても、ずっとそのまま話を聞いていたとは。
 それを知らされた今、恥ずかしくて死にそうだ。

「日下さん……私のことを覚えてたんですね。名前も知らない女子高生とお茶したことなんか、イケメンのお兄さんには取るに足らないことで、きっと忘れられているんだろうと思っていました」
「ちゃんと覚えてたよ。だから俺が傘を買いに行った日、雑貨店で君が働いてたから驚いたんだ」
「え? あのときすでに……私だって気づいてたんですか?!」

 初めて日下さんが雑貨店に傘を買いに来た雨の日。
 日下さんは当然すぐに私に気づいたのだと、クスリと笑いながら言った。

「昔、カフェで日下さんと話したことが頭に残っていて、それで販売の仕事に就きたいと思ったんです」
「だけどなぜあの店舗に? 偶然か? それとも……俺にまた会えると考えて?」

 そこに居続ければ再び会える、そんな奇跡が起こるわけないだろうとあきれられているのだろうな。
 私もバカだ。地縛霊でもあるまいし、ずっとその場所にこだわるなんて。

「いけませんか? イタイ女だと思ってます?」
「いや」
「だって、何度もあのカフェに行ったんですよ! だけどいつ行っても日下さんはいなくて。……結局会えませんでしたね」

 会いたかったのに会えなかった。
 今度はいつの間にか私の口から恨み節がこぼれ出る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

沢田くんはおしゃべり

ゆづ
青春
第13回ドリーム大賞奨励賞受賞✨ありがとうございました!! 【あらすじ】 空気を読む力が高まりすぎて、他人の心の声が聞こえるようになってしまった普通の女の子、佐藤景子。 友達から地味だのモブだの心の中で言いたい放題言われているのに言い返せない悔しさの日々の中、景子の唯一の癒しは隣の席の男子、沢田空の心の声だった。 【佐藤さん、マジ天使】(心の声) 無口でほとんどしゃべらない沢田くんの心の声が、まさかの愛と笑いを巻き起こす! めちゃコミ女性向け漫画原作賞の優秀作品にノミネートされました✨ エブリスタでコメディートレンドランキング年間1位(ただし完結作品に限るッ!) エブリスタ→https://estar.jp/novels/25774848

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...