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◇手に入れた陽だまり③
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「鈍感にも程があるな。俺だよ」
「……え……じゃあ、あのときの……」
「そう、俺。また会いたいと思ってくれててうれしいけど、どうして気づかないかな」
―― 信じられない。
あのイケメン男性が、まさか日下さんだったなんて!!
「だ、だって……あのときは、髪の毛が茶髪でパーマがかかっていて……」
「たしかに大学生のころはそういう髪型をしていたな。だけど社会人になったらあんな明るい茶髪はナシだろ」
「めがね……黒縁めがねをかけてましたよ?!」
「今はコンタクトだ」
今の日下さんの髪を茶髪にしてパーマをかけ、黒縁めがねをかけたら……と想像を膨らませてみる。
言われてみれば十年前の彼と一致する。
高校生だった私はイケメン男性とお茶をするのが恥ずかしくて、あまり顔を凝視できないでいたから気づくのが遅れた。
あの男性は間違いなく日下さんだ。
だから私は、自然と今の日下さんにも惹かれたのだと思う。
「忘れられない男がいると言うから、柄にもなく嫉妬したのに」
「え?」
「聞いてみたらソイツは俺じゃないか。なのに肝心の君はそれに気づいてない。二重に驚いたよ」
あわあわとあわてる私の反応なんてまるで無視で、日下さんが恨み節を言い募る。
「だ、だったら……どうして私が話したときに自分だって言ってくれなかったんですか?」
ホテルで話したとき、ロイヤルミルクティーを一緒に飲んだのは自分だと気づいたなら、教えてくれたらよかったのに。
「……言えないだろ。綺麗な思い出話を語る君に、その男は俺だなんて。ウソ臭くなるから君は信じないかもしれない」
そ、そんな……
途中から自分の話だと気づいても、ずっとそのまま話を聞いていたとは。
それを知らされた今、恥ずかしくて死にそうだ。
「日下さん……私のことを覚えてたんですね。名前も知らない女子高生とお茶したことなんか、イケメンのお兄さんには取るに足らないことで、きっと忘れられているんだろうと思っていました」
「ちゃんと覚えてたよ。だから俺が傘を買いに行った日、雑貨店で君が働いてたから驚いたんだ」
「え? あのときすでに……私だって気づいてたんですか?!」
初めて日下さんが雑貨店に傘を買いに来た雨の日。
日下さんは当然すぐに私に気づいたのだと、クスリと笑いながら言った。
「昔、カフェで日下さんと話したことが頭に残っていて、それで販売の仕事に就きたいと思ったんです」
「だけどなぜあの店舗に? 偶然か? それとも……俺にまた会えると考えて?」
そこに居続ければ再び会える、そんな奇跡が起こるわけないだろうとあきれられているのだろうな。
私もバカだ。地縛霊でもあるまいし、ずっとその場所にこだわるなんて。
「いけませんか? イタイ女だと思ってます?」
「いや」
「だって、何度もあのカフェに行ったんですよ! だけどいつ行っても日下さんはいなくて。……結局会えませんでしたね」
会いたかったのに会えなかった。
今度はいつの間にか私の口から恨み節がこぼれ出る。
「……え……じゃあ、あのときの……」
「そう、俺。また会いたいと思ってくれててうれしいけど、どうして気づかないかな」
―― 信じられない。
あのイケメン男性が、まさか日下さんだったなんて!!
「だ、だって……あのときは、髪の毛が茶髪でパーマがかかっていて……」
「たしかに大学生のころはそういう髪型をしていたな。だけど社会人になったらあんな明るい茶髪はナシだろ」
「めがね……黒縁めがねをかけてましたよ?!」
「今はコンタクトだ」
今の日下さんの髪を茶髪にしてパーマをかけ、黒縁めがねをかけたら……と想像を膨らませてみる。
言われてみれば十年前の彼と一致する。
高校生だった私はイケメン男性とお茶をするのが恥ずかしくて、あまり顔を凝視できないでいたから気づくのが遅れた。
あの男性は間違いなく日下さんだ。
だから私は、自然と今の日下さんにも惹かれたのだと思う。
「忘れられない男がいると言うから、柄にもなく嫉妬したのに」
「え?」
「聞いてみたらソイツは俺じゃないか。なのに肝心の君はそれに気づいてない。二重に驚いたよ」
あわあわとあわてる私の反応なんてまるで無視で、日下さんが恨み節を言い募る。
「だ、だったら……どうして私が話したときに自分だって言ってくれなかったんですか?」
ホテルで話したとき、ロイヤルミルクティーを一緒に飲んだのは自分だと気づいたなら、教えてくれたらよかったのに。
「……言えないだろ。綺麗な思い出話を語る君に、その男は俺だなんて。ウソ臭くなるから君は信じないかもしれない」
そ、そんな……
途中から自分の話だと気づいても、ずっとそのまま話を聞いていたとは。
それを知らされた今、恥ずかしくて死にそうだ。
「日下さん……私のことを覚えてたんですね。名前も知らない女子高生とお茶したことなんか、イケメンのお兄さんには取るに足らないことで、きっと忘れられているんだろうと思っていました」
「ちゃんと覚えてたよ。だから俺が傘を買いに行った日、雑貨店で君が働いてたから驚いたんだ」
「え? あのときすでに……私だって気づいてたんですか?!」
初めて日下さんが雑貨店に傘を買いに来た雨の日。
日下さんは当然すぐに私に気づいたのだと、クスリと笑いながら言った。
「昔、カフェで日下さんと話したことが頭に残っていて、それで販売の仕事に就きたいと思ったんです」
「だけどなぜあの店舗に? 偶然か? それとも……俺にまた会えると考えて?」
そこに居続ければ再び会える、そんな奇跡が起こるわけないだろうとあきれられているのだろうな。
私もバカだ。地縛霊でもあるまいし、ずっとその場所にこだわるなんて。
「いけませんか? イタイ女だと思ってます?」
「いや」
「だって、何度もあのカフェに行ったんですよ! だけどいつ行っても日下さんはいなくて。……結局会えませんでしたね」
会いたかったのに会えなかった。
今度はいつの間にか私の口から恨み節がこぼれ出る。
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