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◇ストーカー被害①
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メッセージの着信があり、スマホの画面を見ると“日下来人”と表示されている。
思わずそれだけで驚いてあわあわと焦ってしまった。
『今夜少し会えないかな』
中身はそんな短い文章が書かれているだけだった。どういう用件なのかはわからない。
指定された場所は、私の勤務先から自宅方面にひとつ戻った駅の前にある静かなカフェだった。
すべてのコーヒー豆がオーガニックで、マスターのオリジナルブレンドが人気の店だ。
樹里に誘われて行ったデザートバイキングで日下さんと偶然会ってから一週間も経っていない。
もちろん日下さんとはそのあと連絡をしあっていないから、私をわざわざ呼び出す用事はないはずなのだけれど。
いったいどうして? と不思議に思いながらも、私はカフェに行くことを承諾した。
というのも、こちらは日下さんに用がある。
自分から連絡を取る手間が省けてうれしいくらいだ。
これで、返金されたデザートバイキングの代金を日下さんに渡せる。
あの日返されたままの白い封筒をしっかりとバッグに入れ、私はそのカフェへと赴いた。
するとすぐに窓際の席でタブレットを操作する日下さんが目に飛び込んでくる。
彼が目立つのか、それとも私が目を奪われたのかはわからないけれど。
とにかく吸い寄せられるように、そのテーブルへ近づいた。
日下さんは今日はスリムな黒のスーツを身に着けていて、やはりオシャレに着こなしている。
イケメンでスタイルも良いのだから似合って当然だ。
「こんばんは。お待たせしてすみません」
声をかけながらテーブルを挟んで日下さんの正面の椅子に座る。
すると彼も見ていたタブレットをビジネスバッグにしまった。
「悪かったね。急に連絡してここに来いだなんて」
その言葉にかぶりを振ったところで店員さんが水を持って現れたので、この店自慢のオーガニックブレンドコーヒーを頼んだ。
「メッセージを送ったとき、もしかしたら君はまだ仕事中なのかと思ったけど……」
「遅番だったら仕事中でしたね。でも私……最近はできるだけ早番にしてもらってるんです」
不審者なのかストーカーなのか。
その一件があるから、店長にはできるだけ早番でとシフトをお願いしているけれど、それももうやめようかと思っている。
あれから自宅アパートの近くで不審者は現れなくなった。
だから今までみたいに遅番勤務をしても平気ではないだろうか。
それにこれ以上私が早番ばかりのシフトに入ると、窪田さんや萌奈ちゃんに迷惑がかかる。
そんなワガママを言い続けるのは社会人としてダメだろう。
この先も早番勤務しかできないというのなら、今の仕事は続けられない。
「今日も早番?」
「はい、そうです」
「どこから来た? 仕事帰りじゃなかったのか?」
「家から来ました」
日下さんからメッセージを受け取ったときには、すでに仕事を終えて帰宅していた。
だからメイクと服装を整えてまた外出してきたのだ。
「それは申し訳なかった。来るって返事があったから、仕事が終わったあとに寄れるのかと思ってた」
今日も相変わらず日下さんはほとんど表情を変えない。
だけどその言葉から、申し訳なさそうにしているのが読み取れる。
「全然いいんですよ。私も渡すものがありましたから」
にっこり微笑みながらそう伝えたタイミングで、頼んだコーヒーが運ばれてきた。
淹れたてのコーヒーはとても良い香りがする。
メッセージの着信があり、スマホの画面を見ると“日下来人”と表示されている。
思わずそれだけで驚いてあわあわと焦ってしまった。
『今夜少し会えないかな』
中身はそんな短い文章が書かれているだけだった。どういう用件なのかはわからない。
指定された場所は、私の勤務先から自宅方面にひとつ戻った駅の前にある静かなカフェだった。
すべてのコーヒー豆がオーガニックで、マスターのオリジナルブレンドが人気の店だ。
樹里に誘われて行ったデザートバイキングで日下さんと偶然会ってから一週間も経っていない。
もちろん日下さんとはそのあと連絡をしあっていないから、私をわざわざ呼び出す用事はないはずなのだけれど。
いったいどうして? と不思議に思いながらも、私はカフェに行くことを承諾した。
というのも、こちらは日下さんに用がある。
自分から連絡を取る手間が省けてうれしいくらいだ。
これで、返金されたデザートバイキングの代金を日下さんに渡せる。
あの日返されたままの白い封筒をしっかりとバッグに入れ、私はそのカフェへと赴いた。
するとすぐに窓際の席でタブレットを操作する日下さんが目に飛び込んでくる。
彼が目立つのか、それとも私が目を奪われたのかはわからないけれど。
とにかく吸い寄せられるように、そのテーブルへ近づいた。
日下さんは今日はスリムな黒のスーツを身に着けていて、やはりオシャレに着こなしている。
イケメンでスタイルも良いのだから似合って当然だ。
「こんばんは。お待たせしてすみません」
声をかけながらテーブルを挟んで日下さんの正面の椅子に座る。
すると彼も見ていたタブレットをビジネスバッグにしまった。
「悪かったね。急に連絡してここに来いだなんて」
その言葉にかぶりを振ったところで店員さんが水を持って現れたので、この店自慢のオーガニックブレンドコーヒーを頼んだ。
「メッセージを送ったとき、もしかしたら君はまだ仕事中なのかと思ったけど……」
「遅番だったら仕事中でしたね。でも私……最近はできるだけ早番にしてもらってるんです」
不審者なのかストーカーなのか。
その一件があるから、店長にはできるだけ早番でとシフトをお願いしているけれど、それももうやめようかと思っている。
あれから自宅アパートの近くで不審者は現れなくなった。
だから今までみたいに遅番勤務をしても平気ではないだろうか。
それにこれ以上私が早番ばかりのシフトに入ると、窪田さんや萌奈ちゃんに迷惑がかかる。
そんなワガママを言い続けるのは社会人としてダメだろう。
この先も早番勤務しかできないというのなら、今の仕事は続けられない。
「今日も早番?」
「はい、そうです」
「どこから来た? 仕事帰りじゃなかったのか?」
「家から来ました」
日下さんからメッセージを受け取ったときには、すでに仕事を終えて帰宅していた。
だからメイクと服装を整えてまた外出してきたのだ。
「それは申し訳なかった。来るって返事があったから、仕事が終わったあとに寄れるのかと思ってた」
今日も相変わらず日下さんはほとんど表情を変えない。
だけどその言葉から、申し訳なさそうにしているのが読み取れる。
「全然いいんですよ。私も渡すものがありましたから」
にっこり微笑みながらそう伝えたタイミングで、頼んだコーヒーが運ばれてきた。
淹れたてのコーヒーはとても良い香りがする。
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