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◇分岐点のアラサー⑨
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なにが起こっているのか、この展開についていけない自分がいる。
どうして彼の要求に素直に従ったのかもわからない。
そして、私以上に樹里は彼とのやり取りを呆気に取られながら見ているだけだった。
それもそうだ。日下さんのようなイケメンが突然現れて、無表情でスマホを出せと言ってこられたら、何事かと驚くに決まっている。
日下さんは私のスマホを無遠慮に触り、素早くなにか打ち込んでいる。
スマホの中を覗かれるのはすごく恥ずかしいのだけれど。
そう抗議する暇もないほど彼はさっさと操作を終わらせて、私にスマホを返してくれた。
「登録しといた。それが俺の番号だ。今かけてみて?」
液晶画面に表示されている番号を指でタップする。
すると日下さんのスーツの内ポケットに入っているスマホが鳴った。どうやら登録に問題はないらしい。
「これでいつでも連絡できるだろ?」
「は、はい。ありがとうございます」
なぜお礼を言っているのだろう。これではまるで私が登録してほしいと頼んだみたいだ。
というより、これで私の番号も日下さんに知られてしまった。
「ケーキ、おいしい?」
「はい、とっても!!」
「良かった。また感想を聞くよ。個人的にでも」
最後のひとことが意味深な気がしたけれど、どういう意味ですか?とは聞き返せない。
ドキドキと心臓の心拍数だけが必要以上に上がっていく。
どうしよう。顔が赤くなっていたら、樹里に絶対突っ込まれる。
私が冷静さを保てさえすれば、日下さんはいつもの無表情だからなにも怪しまれないだろう。
「今日は傘、持って来た?」
「え?」
「今は晴れてるけど、このあと絶対降るよな。俺と君が一緒にいて降らないわけがない」
無表情で言われた言葉がおかしくて、ブハッと噴出しながら私は即座にうなずいた。
「折り畳み傘を持ってきました。でも小さい傘だから、この前みたいな集中豪雨だったら濡れるかもしれないですね。私と日下さんのパワーを合わせたら、猛烈な雨が予想されますし」
おどけながら私がそう言うと、日下さんが「ははは」と小さく声に出して笑った。
ああ、やっぱり。この人の笑顔はすごく綺麗だ。
この笑顔を目にするのは二度目だけれど、とても魅了される。
いつもこうして笑ってればいいのに。無表情なのはもったいない。
一瞬垣間見えた笑みがフッと消えたとき、日下さんの後ろから会場のスタッフの女性がおずおずと声をかけた。
「副社長、すみません。奥様がお呼びです」
日下さんは黙ったまま静かにうなずいた。
「じゃあ、ゆっくり楽しんでいって」
私と樹里にそう告げて、女性スタッフと言葉を交わしながら日下さんが去っていく。
その姿を無意識に目で追ってしまっていた。
どうして彼の要求に素直に従ったのかもわからない。
そして、私以上に樹里は彼とのやり取りを呆気に取られながら見ているだけだった。
それもそうだ。日下さんのようなイケメンが突然現れて、無表情でスマホを出せと言ってこられたら、何事かと驚くに決まっている。
日下さんは私のスマホを無遠慮に触り、素早くなにか打ち込んでいる。
スマホの中を覗かれるのはすごく恥ずかしいのだけれど。
そう抗議する暇もないほど彼はさっさと操作を終わらせて、私にスマホを返してくれた。
「登録しといた。それが俺の番号だ。今かけてみて?」
液晶画面に表示されている番号を指でタップする。
すると日下さんのスーツの内ポケットに入っているスマホが鳴った。どうやら登録に問題はないらしい。
「これでいつでも連絡できるだろ?」
「は、はい。ありがとうございます」
なぜお礼を言っているのだろう。これではまるで私が登録してほしいと頼んだみたいだ。
というより、これで私の番号も日下さんに知られてしまった。
「ケーキ、おいしい?」
「はい、とっても!!」
「良かった。また感想を聞くよ。個人的にでも」
最後のひとことが意味深な気がしたけれど、どういう意味ですか?とは聞き返せない。
ドキドキと心臓の心拍数だけが必要以上に上がっていく。
どうしよう。顔が赤くなっていたら、樹里に絶対突っ込まれる。
私が冷静さを保てさえすれば、日下さんはいつもの無表情だからなにも怪しまれないだろう。
「今日は傘、持って来た?」
「え?」
「今は晴れてるけど、このあと絶対降るよな。俺と君が一緒にいて降らないわけがない」
無表情で言われた言葉がおかしくて、ブハッと噴出しながら私は即座にうなずいた。
「折り畳み傘を持ってきました。でも小さい傘だから、この前みたいな集中豪雨だったら濡れるかもしれないですね。私と日下さんのパワーを合わせたら、猛烈な雨が予想されますし」
おどけながら私がそう言うと、日下さんが「ははは」と小さく声に出して笑った。
ああ、やっぱり。この人の笑顔はすごく綺麗だ。
この笑顔を目にするのは二度目だけれど、とても魅了される。
いつもこうして笑ってればいいのに。無表情なのはもったいない。
一瞬垣間見えた笑みがフッと消えたとき、日下さんの後ろから会場のスタッフの女性がおずおずと声をかけた。
「副社長、すみません。奥様がお呼びです」
日下さんは黙ったまま静かにうなずいた。
「じゃあ、ゆっくり楽しんでいって」
私と樹里にそう告げて、女性スタッフと言葉を交わしながら日下さんが去っていく。
その姿を無意識に目で追ってしまっていた。
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