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第1章 監獄の住人1-16
14-B
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2本の蝋燭のある真っ暗なところに案内されると、
通訳の男がやってきた。どんな腹黒が来るのかと思いきや、
若い女、しかも上玉だ。
「はじめまして、ルナと申します、」
女が口を開いた。
「とりあえず、俺はオスマンに連絡したはずなんだが、
あんたイスラム教徒か。」
ラッセルは内偵かと疑って聞いた。
「我々は、イスラムの家のものです。」
「あなたは、国に見離された無法者、
キリスト教徒に捕まれば海賊として縛り首でしょう?」
そう言うと女はくすっと笑った。
「あんたは俺に何を望む。何を与える。」
ラッセルは率直に聞いた。
「イスラムの家は、お金と伝はありますが、
軍事力はまったくありません。」
「はぁ、まあ、金は欲しいけど。
俺は金がほしくて海賊をしてるわけじゃないんだよ。」
「では何がお望みですか。」
「世界だ。イスパニアと大陸のキリスト教徒をぶち殺すことだ。
表舞台から退場していただく。」
「だから、オスマン帝国とイスラム教徒と同盟を結ぶと?」
「ああ」
「イングランドも十字軍として、エルサレムを襲っています。
あなたでは無理でしょう。」
「それで、本題は何だ?」
「イスラムの家に スルタンの侍従医のハモン、
そして、オスマン帝国海軍、いえ、公認の海賊をしているスィナンと
言うものがおります。なにぶん手が足りていないため、
助力しかいたしかねますが。」
「さっき聞いたはずだ。何を与え何を求める。」
ラッセルは無意味な会話は嫌いだった。
「求めるものは キリスト教の分断、そうですね、イングランド王には
離縁していただきましょう。そして、新キリスト教徒を作る。
その折には、我々ユダヤ人に住みやすい国にしていただけるとありがたいです。」
「与えるものは、あなたが求めるだけの、お金とそれと
オスマン海軍の一翼を担っていただくことを可能としましょう。」
「悪い条件じゃないな。」
「が、それは俺にとってはだ。」
「あんたにメリットがあるようには見えんな。
俺は王侯貴族じゃないんだぞ。単なる貧乏な3流海賊だ。」
「私怨、とだけ申しておきましょう。」
「じゃあ早速だが、最新鋭の帆船、戦闘用だ。20隻、
毎年、金貨換算で1万枚、それとあんたのコネを使って
オスマンの大物貴族に直接会いたい。
(まァ、無理だろうがな)」
ラッセルはあえて実現不可能な提案をしていた。
「ネーデルランドは独立し、我が勢力に入る予定ですが、
現在はイスパニア領、船はアルジェにてお渡しいたします。
金貨に関しては、この場で用意いたします。」
「オスマンの高位貴族とおっしゃられましたが、
それはわたくしで事足りるかと存じます。
あなたの船に同乗させていただきます。」
「わかった、降参だ。俺の負け。」
「そこまでの覚悟があるのなら、イングランド王を
裏切ることが無い限り、あんたの手駒になってやるよ。」
翌日ラッセルが、アントワープの港にある船に乗り込むと
部下達が有頂天だ。
「なに騒いでんだ手前ら、声を落とせ。」
「ここはイスパニア領だぞ。」
「提督、金貨です。2万枚以上ありますよ。あと信用小切手とか言う物
ユダヤ人の銀行家なら誰でも交換してくれるらしいです。」
「うおーまじすっげえ。」
「あとすごい美人が乗ってきましたよ。」
「オスマンの大物貴族だ。失礼なことしたら殺すぞ。」
「あ、あいさー。」
「今こそ、これを開けるときか。」
そう言うとヘンリー8世から
預かっていた文書の蝋の封印を解き、ラッセルはこう宣言した。
「今から俺は騎士爵だ。」
「陛下、海賊ラッセルは、信頼できる支援者を見つけました。
これからは無法海賊としてではなく、英国騎士ラッセルとして
大陸の奴らの鼻をあかしてやりますよ。」
通訳の男がやってきた。どんな腹黒が来るのかと思いきや、
若い女、しかも上玉だ。
「はじめまして、ルナと申します、」
女が口を開いた。
「とりあえず、俺はオスマンに連絡したはずなんだが、
あんたイスラム教徒か。」
ラッセルは内偵かと疑って聞いた。
「我々は、イスラムの家のものです。」
「あなたは、国に見離された無法者、
キリスト教徒に捕まれば海賊として縛り首でしょう?」
そう言うと女はくすっと笑った。
「あんたは俺に何を望む。何を与える。」
ラッセルは率直に聞いた。
「イスラムの家は、お金と伝はありますが、
軍事力はまったくありません。」
「はぁ、まあ、金は欲しいけど。
俺は金がほしくて海賊をしてるわけじゃないんだよ。」
「では何がお望みですか。」
「世界だ。イスパニアと大陸のキリスト教徒をぶち殺すことだ。
表舞台から退場していただく。」
「だから、オスマン帝国とイスラム教徒と同盟を結ぶと?」
「ああ」
「イングランドも十字軍として、エルサレムを襲っています。
あなたでは無理でしょう。」
「それで、本題は何だ?」
「イスラムの家に スルタンの侍従医のハモン、
そして、オスマン帝国海軍、いえ、公認の海賊をしているスィナンと
言うものがおります。なにぶん手が足りていないため、
助力しかいたしかねますが。」
「さっき聞いたはずだ。何を与え何を求める。」
ラッセルは無意味な会話は嫌いだった。
「求めるものは キリスト教の分断、そうですね、イングランド王には
離縁していただきましょう。そして、新キリスト教徒を作る。
その折には、我々ユダヤ人に住みやすい国にしていただけるとありがたいです。」
「与えるものは、あなたが求めるだけの、お金とそれと
オスマン海軍の一翼を担っていただくことを可能としましょう。」
「悪い条件じゃないな。」
「が、それは俺にとってはだ。」
「あんたにメリットがあるようには見えんな。
俺は王侯貴族じゃないんだぞ。単なる貧乏な3流海賊だ。」
「私怨、とだけ申しておきましょう。」
「じゃあ早速だが、最新鋭の帆船、戦闘用だ。20隻、
毎年、金貨換算で1万枚、それとあんたのコネを使って
オスマンの大物貴族に直接会いたい。
(まァ、無理だろうがな)」
ラッセルはあえて実現不可能な提案をしていた。
「ネーデルランドは独立し、我が勢力に入る予定ですが、
現在はイスパニア領、船はアルジェにてお渡しいたします。
金貨に関しては、この場で用意いたします。」
「オスマンの高位貴族とおっしゃられましたが、
それはわたくしで事足りるかと存じます。
あなたの船に同乗させていただきます。」
「わかった、降参だ。俺の負け。」
「そこまでの覚悟があるのなら、イングランド王を
裏切ることが無い限り、あんたの手駒になってやるよ。」
翌日ラッセルが、アントワープの港にある船に乗り込むと
部下達が有頂天だ。
「なに騒いでんだ手前ら、声を落とせ。」
「ここはイスパニア領だぞ。」
「提督、金貨です。2万枚以上ありますよ。あと信用小切手とか言う物
ユダヤ人の銀行家なら誰でも交換してくれるらしいです。」
「うおーまじすっげえ。」
「あとすごい美人が乗ってきましたよ。」
「オスマンの大物貴族だ。失礼なことしたら殺すぞ。」
「あ、あいさー。」
「今こそ、これを開けるときか。」
そう言うとヘンリー8世から
預かっていた文書の蝋の封印を解き、ラッセルはこう宣言した。
「今から俺は騎士爵だ。」
「陛下、海賊ラッセルは、信頼できる支援者を見つけました。
これからは無法海賊としてではなく、英国騎士ラッセルとして
大陸の奴らの鼻をあかしてやりますよ。」
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