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第2章 黒い宝石 13-

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「ウバ様はなぜ奴隷の振りをしてまで

大英帝国を目指すのですか?」



買ったばかりのマリーの息子「ホーク」は

自分と似た境遇に在ったのに、

大金を手にしてロンドンを目指す

ウバに興味深々だった。



「黒人に金塊を食べさせて、

死体を大英帝国に運んでいたのよ。」



「伝染病で乗組員がほとんどいなくなったところで

アンボニーに救ってもらったの。

オマケに大金をもらってね。」



「金というのはそれほど貴重なのですか?」

ホークは不思議そうに聞いた。



「当たり前でしょ。」


「本で読んだ限りでは、金は教会が管理して、

純度が一定だから、すべての基準になっている。」



「いえ、この地でも金は取れますよ。

川にごろごろ転がっています。」


ホークの何気ない言葉にトーマスがあんぐりと

口をあけている。


「昔からです。最近はトウモロコシ畑を襲い

家畜を奪う凶暴な人たちが来たので、

誰も口にはしませんが。」



「むかし、ヴァイキングといわれる人たちが来たとき

その価値を教えてもらい、交易していましたから、

どの程度の価値かは、知っています。」



「大英帝国というのは、そのヴァイキングの人たちの子孫が

治めている国家なのでしょう?」



「今は違うわ。」


新大陸に大量の金が存在していることを

アンボニーたちに伝えたかったが方法がない。



もしこのことが広く知られれば、全ヨーロッパから

一攫千金を夢見るものが押し寄せ、

原住民は全滅するだろう。



「金のことは誰にも言わないほうがいいわね。」


ウバはそう忠告した。



伝説、そう伝説。

かつて、白い狂人の軍隊が、聖地エルサレムを蹂躙したとき

救い手となった、我が祖 オラバ・サウル。

遠い言い伝えがある。



「御印を見せよ。もう一人の王に。」


ウバは背中にある言葉の意味を知っていた。

それは、アラビア語を学んだときに調べた、


旧約聖書トーラーの文字だった。


「この近くに宝石商はありませんか?」


ウバはユダヤ人に連絡を取る最速の方法をとった。

幸い、マリーからもらった宝石もある。


怪しまれはしないだろう。




宝石商で鑑定を受けると、宝石商は怪訝な顔をして

こちらを見定めていた。

「呪いの宝石ですね。」

「どちらで手に入れられたのですか?」

マリーが事情を話すと理解はしたようで、

それ以上、問い詰められることは無かった。



ウバは宝石商の耳に口を近づけると

こう言った。

「我が名はウバ・サウル、オラバ族の酋長。

ユダヤの王に連絡したい。」

「本気でおっしゃっているのですか?」

そういうと宝石商は従業員に指示をして

即座に閉店すると奥へ導いた。


「証は?」





「左目がそうだ。」





ウバは隻眼だった。


生まれたときに繰り抜かれたのだ。


「本物のようですね。」


店主は蝋で封じた手紙をすばやく作ると

トーマスに渡した。

現在、大英帝国には 公女 シオンナスィ

が来訪している。そちらにも連絡を取るべきだろう。


半年後にこちらへ来ていただければ、

大英帝国までの道案内をさせていただきます。

そう言うと、店主は深々とこうべをたれた。







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