産業創世記 ギデオン(休載中)

初書 ミタ

文字の大きさ
上 下
46 / 61
第2章 黒い宝石 13-

14

しおりを挟む

その女奴隷はトーマスにスペイン語で話しかけてきた。

「私は農場で働いていた、マリヤマト、農場がインド人に襲われ、

逃げてきた、助けてください。」とスペイン語で言っている。

その農場は、もとはインド人から奪ったものらしい。



「あなたは、農場主の家族か?」ウバがスペイン語で聞くと、

即座に否定した。農場主に囲われていた慰み者の奴隷らしい。

このまま放置すれば、殺されるか野垂れ死にだ。

トーマスは意見するつもりはないらしい。

ウバに決定権があるのは明白なのだろう。

ウバはそれほど冷酷ではない。



「乗りなさい。」

そう短く言うと扉を開けて乗せた。

別に臭くはないし、ノミやしらみもいないようだ。

ウバはトーマスと話した後、御者に説明し短く指示を出した。

すぐにまた馬車は走り出し、女はヤマトのムツと言う国を始祖に持つ

異邦人の末裔だと言う。



彼女はキリスト教徒らしく、命を救ってくれたお礼に

トーマスの奴隷になると言っている。それと指輪を取り出して

トーマスに渡した。六芒星の彫られたものでしっかりしたつくりのものだ。

安物ではないだろう。トーマスはそれをウバに渡してきた。


奴隷がするのも可笑しいが、ウバはその指輪を嵌め、マリヤマトに

礼を言った。与えないものは何ももらえない、常識である。



夜も遅くなってきたので、一向は馬車を止め、

暖かい食事を取るため火をおこした。

トーマスは狭い船の中での調理になれた元海賊らしく、

こんな場所でもうまくナイフを使い、信じられない

精度と速度で料理を作り上げた。




4人で、食事の後のコーヒーをたしなんでいると、いきなり

ウバの目の前に、矢が突き立った。距離的にはかなり離れている。

矢の角度と勢いでわかる。インド人のもののようだ、

はじめは襲われるのかもしれないと思ったが、

どうやら流れ矢のようだ。




しばらくすると、ドドドドドという音と共に、馬の蹄の音が聞こえてきた。

インド人を警戒して、馬車の下に隠れていたが、

トーマスが話しかけると、その一団は非常に友好的だった。

彼らは、フランスから住民の護衛のために派遣されてきている傭兵らしい。

トーマスが彼らのことを同胞だといった。ハイルドギース騎士団と言うらしい。



「おい、こんなところで焚き火をしたら危ないぞ、死にたいのか。」


そういうと騎士はトーマスの肩をトンとたたいた。

トーマスは、暖かい食事をしたくて、自分たちが軽率だと謝罪していた。

トーマスがお礼を渡そうとすると、それをさえぎり断った。



「見返り目的で、仕事をしているわけではない。報酬は雇い主にもらっている。」



そういうと朝まで数人が警護してくれるらしい。

書物にでてくる昔なつかしの騎士団のようだ。

おかげで安心してゆっくりと休むことができた。

翌日、日が昇ると馬車は再び、ボストンへ向けて出発するのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~

華研えねこ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。 一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。 二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。 三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。 四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。 五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。 六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。 そして、1907年7月30日のことである。

不屈の葵

ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む! これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。 幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。 本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。 家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。 今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。 家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。 笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。 戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。 愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目! 歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』 ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!

出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。 大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。 戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。 潜水空母   伊号第400型潜水艦〜4隻。 広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。 一度書いてみたかったIF戦記物。 この機会に挑戦してみます。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

鎌倉最後の日

もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!

大東亜架空戦記

ソータ
歴史・時代
太平洋戦争中、日本に妻を残し、愛する人のために戦う1人の日本軍パイロットとその仲間たちの物語 ⚠️あくまで自己満です⚠️

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

処理中です...