35 / 61
第2章 黒い宝石1-12
2
しおりを挟む産業革命期の真っ只中、細々と炭鉱で働くものたち、
そして、細々とそれを監視するものたち。
前者はおおむね流浪罪のベイグランシーと
アフリカから連れてこられた道具かであった。
後者はゲットーから通う貧困ユダヤ人。
1日に3シリングで雇われていた。
ベイグランシーとユダヤ人は仲が悪く、彼らの多くは
ユダヤ人はブルジョアの手先と誹謗し、都市資本家の豚と呼んでいた。
道具達の扱いはひどく、鞭で打たれる、耳を削がれる、などは日常
死を持ってあてがわれる罰が多かった。最も炭鉱で生き埋めになり
苦しみながら死ぬよりは幾分かましであったが。
その日は珍しく、黒い道具の一人が脱走を試み
見せしめのために、ユダヤ人の手で縛り首になっていた。
この施設の予算は非常に脆弱で、脱走を阻むのは
低いフェンスと寝ぼけたユダヤ人の見張り程度だ。
しかし、抜け出しても外で生活ができるわけでもなく、
流浪罪で連れ戻され、殺されるだけだ。
なぜなら、道具達は真っ黒ですぐに見分けがつくからだ。
だから、道具達も頭がおかしくでもならない限り、従順だった。
実際に白人のベイグランシーも連れてはこられるのだが
すぐに逃げ出すので、1週間もいるものはいない。
彼らは、ユダヤ人が黒人を道具として迫害していると言う
プロパガンダ政策の一環として、実行されている。
往々にして言われる事だが、なぜ近代のように
反乱を起こさないのかである。彼らの多くは諦めていた。
故郷はあまりに遠すぎた。この世にもっとましな場所が
あるとは思えなかった。
白人は言うのだ。農村部で飢えに苦しみ、5シリングで死ぬ。
監獄船の糞尿と奴隷船の黒い血、そのどこに違いがあるのかと。
帰るところなど結局のところどこにも無いのだ。
この世に楽園など無い、死を超越できるものこそ
真の幸福である。それが大方の道具の一致であった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
江戸時代改装計画
華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。
「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」
頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。
ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。
(何故だ、どうしてこうなった……!!)
自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。
トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。
・アメリカ合衆国は満州国を承認
・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲
・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認
・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い
・アメリカ合衆国の軍備縮小
・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃
・アメリカ合衆国の移民法の撤廃
・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと
確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
華研えねこ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。
白雉の微睡
葛西秋
歴史・時代
中大兄皇子と中臣鎌足による古代律令制度への政治改革、大化の改新。乙巳の変前夜から近江大津宮遷都までを辿る古代飛鳥の物語。
――馬が足りない。兵が足りない。なにもかも、戦のためのものが全て足りない。
飛鳥の宮廷で中臣鎌子が受け取った葛城王の木簡にはただそれだけが書かれていた。唐と新羅の連合軍によって滅亡が目前に迫る百済。その百済からの援軍要請を満たすための数千騎が揃わない。百済が完全に滅亡すれば唐は一気に倭国に攻めてくるだろう。だがその唐の軍勢を迎え撃つだけの戦力を倭国は未だ備えていなかった。古代に起きた国家存亡の危機がどのように回避されたのか、中大兄皇子と中臣鎌足の視点から描く古代飛鳥の歴史物語。
主要な登場人物:
葛城王(かつらぎおう)……中大兄皇子。のちの天智天皇、中臣鎌子(なかとみ かまこ)……中臣鎌足。藤原氏の始祖。王族の祭祀を司る中臣連を出自とする
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
幕府海軍戦艦大和
みらいつりびと
歴史・時代
IF歴史SF短編です。全3話。
ときに西暦1853年、江戸湾にぽんぽんぽんと蒸気機関を響かせて黒船が来航したが、徳川幕府はそんなものへっちゃらだった。征夷大将軍徳川家定は余裕綽々としていた。
「大和に迎撃させよ!」と命令した。
戦艦大和が横須賀基地から出撃し、46センチ三連装砲を黒船に向けた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる