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第1章 監獄の住人1-16

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濃い霧の漂う、

今日、この日は、

1760年 12月 25日。

先王の喪の明けぬままの聖夜であった。





接待人 ハイヤーハムシェルを乗せた

豪華な馬車はスラムを抜け、


治安が悪く、住む家がなく働くこともない犯罪者の巣窟

そこさえも天国と思えるだろう、


マンチェスターの中心部を抜け、薄暗く、陰鬱な雰囲気の漂う

ユダヤ人の住む場所に到着した。

たいていの人々は、ここをユダヤ人街などではなく

「ゲットー」と呼ぶ。







ここよりこの物語は始まる。






ユダヤ人、そう呼ばれる彼らは、後述する十字軍以降、蔑まれ、

社会の最底辺であった。彼らの生命はゴミと同価値であり、

日々、物を乞い、ゴミを漁って暮らしていた。

大英帝国の人々は、まるで流行り病を見るように

それを見ていた。



ユダヤ人は、古代オリエントに居住していたとされる。

その後、大離散ディアスポラにより各地に散ったとされる。

もともと、イスラエル周辺に残留した、

肌が褐色でアラム種の

ミズラヒムのユダヤ人、

肌が褐色でアラム種だが、

移住し、イスラム圏に住居を構え、

権勢と膨大な財力を誇るスファルディムのユダヤ人。

そして、当時、由来のわからなかった。

肌が白く、ゲルマン系のアシュケナジムのユダヤ人だ。



風の噂に聞くところによるとアシュケナジムは

巨大な2つの国にはさまれ

その2カ国のどちらかの宗教に帰属するように求められた、

ハザールと言う国が、

国民全員をユダヤ教に改宗させてしまった。


結局彼らの国は滅亡し、

ヨーロッパ全土に貧しい難民として押し寄せ、

その最下辺として定着した。



田畑を耕して作物を得ること、

牛や羊を飼うこと、

槌を振るい金属を加工すること、

糸を紡ぐこと、布を織ること、

木を切ること、商品を売ること、商品を運ぶこと、

すべてが禁止された。

ゲットーに住む売春婦や物乞いは、

アシュケナジムのユダヤ人である。



イスラム圏に居住するスファラディムのユダヤ人は

現地の言葉とラディノ語を、使用している。

アシュケナジムのユダヤ人はイディッシュ語を使用しており、

当然会話は通じない。

しかし、一部のアシュケナジムのユダヤ人は、

トーラーやミシュネー、ハーラート、タルムードを介し、

ヘブライ語を学ぶため

ラビやインテリは共通の言語として、

ヘブライ語を使用した。




この物語の主人公 ハイヤーハムシェル・バウアー、

正しくは、

田舎者のハイヤーハムシェル、

若しくは、単に、

ハイヤーハムシェルであろう。

現在のドイツ、ヘッセン・カッセル領のフランクフルト・アムメインに生まれた。


白人種であり、身長は当時の男性にしては高く、

176cm、体重は73kg。

好きなものは種無しパンで、嫌いなのは肉だ。

趣味は古銭収集。


兄と弟が故郷におり、仕送りをしている。
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