人生とは物語

涙溢れる卒業

「おはよぉ～」
いつもより朝早く私は目覚める。
なんだか今日は目が冴えてる。
え？なんでかって？
卒業式だからだ。
いつもと違う服を着て、髪をセットして、鏡を前に笑顔を作る。
そして、また一言、
「いってきまーす」
といって家を出る。

友達を誘い、お互いに褒めあって、小学校への道のりを歩く。
「これが最後の登校だね。」
と言いながら。

「おはようございます～！」
と言って教室のドアを開ける。
みんな卒業服が似合っていた。
それと同時に卒業なんだ、と改めて実感する。
でも、真っ先に周りの人など目にもくれず一人の人に視線を向けていた。
やっぱりいつ見ても格好いい。
その人は私が四年間想いを寄せ続けている人だ。
でも、その人とはもう、今日でお別れだ。
その人は中学校が別で、他県に行ってしまうのだ。
やっぱり悲しいし、切ない。
思いが滲み溢れてくる。
だけど私はその人には想いを伝えているんだ。後悔ないように。
でもね、やっぱり寂しいんだ。
所詮子供の恋なんてとか思う人だっているだろう。だけどやっぱり恋する気持ちはみんな一緒なんだ。
この気持ちを伝えられずに終わってしまうよりも伝えた方がいいと私は思う。
たとえそれが、自分の望んでいない結果だったとしても。
そして結果はありがとうの一言だった。
付き合ってほしいとかは思ってはいなかったけど、気持ちは伝えたかった。
だけどやっぱり寂しいし悲しい。
でもね。そのありがとうに何度救われたことか。
一つの言葉でこれほど楽なのかと思った。
だから私は後悔はしていない。

みんなが集まったところで全員席についた。
そして、先生の合図で体育館に移動する。
「今から卒業式を開始いたします。」
教頭先生の声が体育館内に響いた。


あっという間に終わった。
私は泣かなかった。
そして、また教室に帰る。
最後に先生から一言。
「これで本当にこのクラスは解散します。」
じわぁっと涙が溢れてくる。
その涙には6年間の様々な思い出が染み込まれていた。
一度涙が出ると止まらない。
ひたすら泣いた。
友達の声など耳にも入らなかった。
そして、教室を出で、校舎をめぐり、学校を出ていった。