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第一章 美少女占い師と死者行進(ウォーキングデッド)
第四話「教会と教会騎士団」
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この町の教会は中央にある大きな噴水を囲む市場から大きく外れた隅の方にに建てられている。
本来街の中心に建つのが教会なのだが、街の中央が市場であるのはこの街の特色である。
コンコン
少女からの相談を受けた翌日。
さほど大きくもなく華美な装飾があるわけでもない教会の門をアリスは叩く。
統一の神を仰ぐ教会も町々で様式は様々だ。
同じ神を支持し同じ教えを守っているにも関わらず、そのやり方も見返りも異なるというのは大概理解に苦しむ。
『秩序ってなんだろうな……』
黒猫はアリスにすら聞こえない程の呟きを漏らした。
「どちらさまでしょう?」
教会の門を開けたのは神父見習の青年だった。
アリスは膝を折りスカートの裾を上げ丁寧にお辞儀をして要件を伝えた。
「突然の訪問失礼いたします。私は旅の占い師でアリスと申します。神父様にご謁見願えないでしょうか?」
見習いの青年は、あからさまに疑わしい目をアリスに向ける。
「占い師……ですか、で神父様に何用でしょう?」
アリスはお辞儀の姿勢を崩さす話を続ける。
訝しげな様子で見られていることは百も承知だし、また慣れてもいる。
「私の知人がこの町におりまして、訪ねてみたのですが見つからず困っております。」
「人探しですか?それならば教会では何のお力にも……」
全部が全部嘘ではない。
上手い嘘とはどこかに真実を潜ませておくものだ。
「この町は、何やら不穏な噂があるとやらで……それに巻き込まれたのやも知れません……」
「不穏な噂とはどういうことです!」
見習いの青年は一気に顔色を変え声を荒げる。
それでもアリスの姿勢は崩れない。
「街の噂でございます……」
「何の根拠があって他愛もない噂を鵜呑みにするのです!神々の教えの元、死人が蘇るなど秩序に反する事があってなるものか!」
「死人が蘇る……とは申しておりませぬが?」
「無礼な!出ていけ!」
見習いの青年がアリスの肩を掴み、無理やり追い出そうとする。
「きゃ、いや!ひどいことしないで!」
それまでの礼儀とお淑やかさから一転、少女の金切り声が教会の外まで届く。
「な、なにを!?」
見習いの青年はあからさまにたじろぐ。
それは聖職に身を置くものとして仕方がないことだろう。
慣れていないのだから。
「さ、騒ぐな!人をならず者の類と一緒にするな!神聖な教会で騒ぐと不敬罪として天罰がくだるぞ!」
激高した見習いの青年は更に強い力で肩を掴み、黒猫ともども教会のドアから大きく外まで押し出す。
ここまではアリスの予想通り……もちろんこの後の計画もあったのだが……。
「その辺にしとこっかー」
黒猫を連れた占い師の少女が、屈辱を受け激高している神父見習いと揉めている最中、本来ここで登場するのは当初の目的である神父のはずだった。
だがその場の空気を一掃する能天気な物言いが、アリスの後方からこちらへ近づいてくる。
宗旨が異なった二人も『空気読め』とこの場は心の中で同調した。
「おっきな男の子がちっちゃな女の子に怒鳴っちゃだめだよー、すっごく怯えているじゃーん」
一見軽そうな町娘のしゃべり口調とその軽さからはとても想像できない豪華な金髪。華奢な体には相応しくない鎧を身に着けた女性が姿を現した。
その鎧の胸には光・力・威光を示す3つの稲妻のマークが刻んである。
「教会騎士団……」
見習いの青年はみるみるうちに顔を青く染め上げ、アリスを掴んでいた手も力なく離してしまう。
「さっきの話さー私もすっごく興味あるなー」
「い、いえ、あれは街の者が戯れに話ししているただの噂でして……」
女性の騎士は笑顔を絶やさず見習いの青年に近づく、本人の笑顔に反して青年にはさぞ威圧的に感じただろう。
「この辺の市場街に発生した、死者復活の噂……中央まで届いてるよー?……神父さんに中央の使いが来たって伝えてくれる?」
耳元で囁かれた見習いの青年は慌てて奥の間へ駆け出す。
駆け出す青年を見送り、くるりとこちらを振り返る。
両手を広げ相当にオーバーなアクション付きで。
「大丈夫だったー?ひどいことされなかったー?」
整った顔立ちと屈託のない笑顔が能天気にアリスの鼻先へ近づく。
「すっごーい、透き通る肌っていうのかなぁ、美少女だー。ぷにぷにー」
アリスは不快な表情をあくまでも表に出さず、不躾に自分の頬をもてあそび始めた女騎士の手を丁寧にどかせ、スカートの裾を上げながら頭を下げた。
中央の大聖堂直轄の騎士「教会騎士団」。
神の剣であり秩序の盾、目の前の女性には礼を尽くさねばならない理由があった。
すさまじくバカっぽそうなしゃべり方はさておいて。
「先ほどは助けていただきありがとうございました、何かをされたわけではありませんので特に御心配にはおよびません」
「そう?それはよかったー、あ!私はねーソフィアだよー、よっろしっくねー」
「ソフィア様、騎士様であられるのですね。私はアリス、放浪の占い師でございます」
「占い師!黒猫を連れた占い師かー!えー?じゃあ私の恋占いでもしてもらっちゃおうかなー」
「騎士様ほどの女性なら占わずとも殿方からの求婚が後を絶えないのではないですか?」
アリスは営業用の言葉を用い、何とか平静を取り戻す時間を作る。
「えー本当に?ありがとうー!でもねーあたしバカだから誰も近づいてこないのー」
「自覚していただと!?」
『自覚していただと!?』
銀髪の少女と黒猫がシンクロした瞬間だった。
「お待たせして申し訳ありません」
教会の奥よりようやく神父が顔を出す。見習いの青年より事情を聞いたのかすごく焦った様子で駆けつけてきた。
顔立ちから神父というにはまだ若い様に見えるが、痩せた体と頭に目立つ白髪が正しい年齢をボヤつかせている。
「教会騎士の方にこんな所までご足労いただいて申し訳ございません。どうぞお疲れでしょうし奥の方へ」
「あはははーありがとう。でもお話はこのアリスちゃんも一緒じゃなきゃダーメだよー」
「こちらの方は……?」
見習いの青年は何かを隠すかのように神父の視線を全身でを遮る。
「いえ、神父様こちらは少し勘違いをされているみたいで・・・」
「えー!さっきの会話聞こえちゃったよー?アリスちゃんも理由があって街のウ・ワ・サを調べてくれてるんだしー、それに……さっきお兄さんが強引に何かしようとしてたの……見ちゃったしー」
「そっ!……それはちが……」
たじろぐ見習いの青年に神父がため息交じりに肩をたたく。
「お前は真面目だが気が短いのが欠点だ、神は見ておられるのだぞ」
静かに、だが強い言葉で神父は青年をたしなめる。
「お嬢さん、うちの者が失礼した。悪い男ではないのだが一生懸命さが空回りするタイプで」
「あー」
「あー」
銀髪の少女と金髪の騎士がシンクロした瞬間だった。
「事情はどうあれ騎士様がそこまでおっしゃるのならば、神のお導きでしょう。お二人ともこちらへどうぞ」
「だってさーアリスたん行こう?」
いつのまにかアリスは腕を組まれ密着して連れ去られていた。
「金髪うぜぇ……」
言葉にならない言葉は黒猫にのみにしか届いていない。
『……がんばれアリス』
黒猫は従者にも聞こえない程度に静かに鳴いた。
本来街の中心に建つのが教会なのだが、街の中央が市場であるのはこの街の特色である。
コンコン
少女からの相談を受けた翌日。
さほど大きくもなく華美な装飾があるわけでもない教会の門をアリスは叩く。
統一の神を仰ぐ教会も町々で様式は様々だ。
同じ神を支持し同じ教えを守っているにも関わらず、そのやり方も見返りも異なるというのは大概理解に苦しむ。
『秩序ってなんだろうな……』
黒猫はアリスにすら聞こえない程の呟きを漏らした。
「どちらさまでしょう?」
教会の門を開けたのは神父見習の青年だった。
アリスは膝を折りスカートの裾を上げ丁寧にお辞儀をして要件を伝えた。
「突然の訪問失礼いたします。私は旅の占い師でアリスと申します。神父様にご謁見願えないでしょうか?」
見習いの青年は、あからさまに疑わしい目をアリスに向ける。
「占い師……ですか、で神父様に何用でしょう?」
アリスはお辞儀の姿勢を崩さす話を続ける。
訝しげな様子で見られていることは百も承知だし、また慣れてもいる。
「私の知人がこの町におりまして、訪ねてみたのですが見つからず困っております。」
「人探しですか?それならば教会では何のお力にも……」
全部が全部嘘ではない。
上手い嘘とはどこかに真実を潜ませておくものだ。
「この町は、何やら不穏な噂があるとやらで……それに巻き込まれたのやも知れません……」
「不穏な噂とはどういうことです!」
見習いの青年は一気に顔色を変え声を荒げる。
それでもアリスの姿勢は崩れない。
「街の噂でございます……」
「何の根拠があって他愛もない噂を鵜呑みにするのです!神々の教えの元、死人が蘇るなど秩序に反する事があってなるものか!」
「死人が蘇る……とは申しておりませぬが?」
「無礼な!出ていけ!」
見習いの青年がアリスの肩を掴み、無理やり追い出そうとする。
「きゃ、いや!ひどいことしないで!」
それまでの礼儀とお淑やかさから一転、少女の金切り声が教会の外まで届く。
「な、なにを!?」
見習いの青年はあからさまにたじろぐ。
それは聖職に身を置くものとして仕方がないことだろう。
慣れていないのだから。
「さ、騒ぐな!人をならず者の類と一緒にするな!神聖な教会で騒ぐと不敬罪として天罰がくだるぞ!」
激高した見習いの青年は更に強い力で肩を掴み、黒猫ともども教会のドアから大きく外まで押し出す。
ここまではアリスの予想通り……もちろんこの後の計画もあったのだが……。
「その辺にしとこっかー」
黒猫を連れた占い師の少女が、屈辱を受け激高している神父見習いと揉めている最中、本来ここで登場するのは当初の目的である神父のはずだった。
だがその場の空気を一掃する能天気な物言いが、アリスの後方からこちらへ近づいてくる。
宗旨が異なった二人も『空気読め』とこの場は心の中で同調した。
「おっきな男の子がちっちゃな女の子に怒鳴っちゃだめだよー、すっごく怯えているじゃーん」
一見軽そうな町娘のしゃべり口調とその軽さからはとても想像できない豪華な金髪。華奢な体には相応しくない鎧を身に着けた女性が姿を現した。
その鎧の胸には光・力・威光を示す3つの稲妻のマークが刻んである。
「教会騎士団……」
見習いの青年はみるみるうちに顔を青く染め上げ、アリスを掴んでいた手も力なく離してしまう。
「さっきの話さー私もすっごく興味あるなー」
「い、いえ、あれは街の者が戯れに話ししているただの噂でして……」
女性の騎士は笑顔を絶やさず見習いの青年に近づく、本人の笑顔に反して青年にはさぞ威圧的に感じただろう。
「この辺の市場街に発生した、死者復活の噂……中央まで届いてるよー?……神父さんに中央の使いが来たって伝えてくれる?」
耳元で囁かれた見習いの青年は慌てて奥の間へ駆け出す。
駆け出す青年を見送り、くるりとこちらを振り返る。
両手を広げ相当にオーバーなアクション付きで。
「大丈夫だったー?ひどいことされなかったー?」
整った顔立ちと屈託のない笑顔が能天気にアリスの鼻先へ近づく。
「すっごーい、透き通る肌っていうのかなぁ、美少女だー。ぷにぷにー」
アリスは不快な表情をあくまでも表に出さず、不躾に自分の頬をもてあそび始めた女騎士の手を丁寧にどかせ、スカートの裾を上げながら頭を下げた。
中央の大聖堂直轄の騎士「教会騎士団」。
神の剣であり秩序の盾、目の前の女性には礼を尽くさねばならない理由があった。
すさまじくバカっぽそうなしゃべり方はさておいて。
「先ほどは助けていただきありがとうございました、何かをされたわけではありませんので特に御心配にはおよびません」
「そう?それはよかったー、あ!私はねーソフィアだよー、よっろしっくねー」
「ソフィア様、騎士様であられるのですね。私はアリス、放浪の占い師でございます」
「占い師!黒猫を連れた占い師かー!えー?じゃあ私の恋占いでもしてもらっちゃおうかなー」
「騎士様ほどの女性なら占わずとも殿方からの求婚が後を絶えないのではないですか?」
アリスは営業用の言葉を用い、何とか平静を取り戻す時間を作る。
「えー本当に?ありがとうー!でもねーあたしバカだから誰も近づいてこないのー」
「自覚していただと!?」
『自覚していただと!?』
銀髪の少女と黒猫がシンクロした瞬間だった。
「お待たせして申し訳ありません」
教会の奥よりようやく神父が顔を出す。見習いの青年より事情を聞いたのかすごく焦った様子で駆けつけてきた。
顔立ちから神父というにはまだ若い様に見えるが、痩せた体と頭に目立つ白髪が正しい年齢をボヤつかせている。
「教会騎士の方にこんな所までご足労いただいて申し訳ございません。どうぞお疲れでしょうし奥の方へ」
「あはははーありがとう。でもお話はこのアリスちゃんも一緒じゃなきゃダーメだよー」
「こちらの方は……?」
見習いの青年は何かを隠すかのように神父の視線を全身でを遮る。
「いえ、神父様こちらは少し勘違いをされているみたいで・・・」
「えー!さっきの会話聞こえちゃったよー?アリスちゃんも理由があって街のウ・ワ・サを調べてくれてるんだしー、それに……さっきお兄さんが強引に何かしようとしてたの……見ちゃったしー」
「そっ!……それはちが……」
たじろぐ見習いの青年に神父がため息交じりに肩をたたく。
「お前は真面目だが気が短いのが欠点だ、神は見ておられるのだぞ」
静かに、だが強い言葉で神父は青年をたしなめる。
「お嬢さん、うちの者が失礼した。悪い男ではないのだが一生懸命さが空回りするタイプで」
「あー」
「あー」
銀髪の少女と金髪の騎士がシンクロした瞬間だった。
「事情はどうあれ騎士様がそこまでおっしゃるのならば、神のお導きでしょう。お二人ともこちらへどうぞ」
「だってさーアリスたん行こう?」
いつのまにかアリスは腕を組まれ密着して連れ去られていた。
「金髪うぜぇ……」
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