黒猫の王と最強従者【マキシサーヴァント】

あもんよん

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寄り道Ⅲ(ノーコンティニュー)

第異話「異世界へ転生したチートの独白 Ⅰ」

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 やあ、俺の名は“花菱 奏那経ハナビシ カナタ”。


 何処にでも居そうな、ごく平凡な高校二年生だ。……え?こんな自己紹介は聞き飽きたって?


 そう言うなよ。俺も一度はこのセリフを言ってみたかったんだ。


 ま、そういう意味では、夢が一つ叶ったってわけだ。



 でだ。



 今日は俺の独白を聞いてもらいたい。



 冒頭で“どこにでもいる平凡な高校二年生”って自己紹介をしたが実はそうでもない。しょっぱなから嘘ついた、ゴメン。


 だってそうだろ?高校二年生って設定で生きているけど学校行ってないし。部屋から滅多に出ないし、友達いない、ネトゲでもボッチプレイ。

 これじゃ、いわゆる世間一般の高校二年生って言えないんじゃないかと思うんだ。


 あ、学校に行かなくなった理由は、別にいじめられてたとか重い病気にかかった……とかじゃないんだ。 まあ切っ掛けは……なんて思い出す事も出来ないぐらいしょうもない理由で不登校になった。


 ただ、何となくそうしたかっただけ。


 朝起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝食を食べて、部屋に戻って出て来なくなった。……ね?しょうもないでしょ?


 親も泣く、先生も泣く。まあ、ぶっちゃけこの人ら以外は心配すらしてくれる人はいなかったんだけど。あっけなく人生転落コース。バッドエンド確定ってやつだ。


 それがしばらく続いて現在十七歳。世間ではこれくらいの年齢だと“高校二年生”になるんだろ?だからまるっきし嘘でもない。


 はい!自己紹介はおしまい。もう少し詳しく知りたい人はウィキペディアでも調べてよ。まあ、載ってないけど。



 でだ。



 そんなダラダラした日々を送り続け、心配していた親もとりあえず俺のの生存確認ぐらいしかしなくなったある日、俺はなぜだか無性に外へ出たくなった。

 神の気まぐれというか、俺の気まぐれというか、まあそんな感じでとりあえず家の玄関を出ようと試みた。


 最初は手が震えたよ。だってすっごい久しぶりの外界だよ?足も震えた。もう小鹿かってくらい震えた。胸はバクバク頭はガンガン。体中の血液が沸騰するかと思ったよ。


 それでも勇気を振り絞って一歩踏み出すと、そこはいつもの玄関先。そこはただの現実世界。


 ではなかったんだ。


 すっごくまぶしい光に包まれたかと思うと、心地いい風と花の香。一瞬死んで天国に飛ばされてのかと 思ったけどそうじゃない。俺の肉体は確かにここにあった。


 ただただ真っ白な世界で俺はどこに行きようもなくぼーっと突っ立ってた。そんなとき目の前に別の誰かが表れた。


 光が強いせいで、はっきりとは見えなかったけど、ショートカットの髪に細身の体。背はそんなに高くないが、どこか他を圧倒する威圧感みたいなものがある。とは言え、家族以外の人間に会うのはすごく久しぶりなので俺がビビっていただけかもしれないけど。


 ともかく、そんな奴が近づいてきて俺にこう言うんだ。




「あなたは異世界に転生されました」




 え?なんだって?


 俺は耳を疑ったよ。それは別に聞こえてきた声が男だか女だかわからない声だったからではないよ。念のため。


 だって異世界だよ?異世界転生ものだよ?こんなのアニメかゲームの世界でしかありえないでしょ?仮にそうなら俺のキャラデザ誰よ?中の人は誰がやってんの?


 そもそも異世界への転生って確か死んだりゲームに入ったりしなきゃ来られないんじゃなかったっけ? つーか転生するとしても死ぬのは嫌だよね?やっぱ痛いし。


 そんなこんなで絵に描いたように混乱する俺にそいつはこう言ってきやがった。





「あなたは異世界に転生されました。でもこの世界は弱肉強食、あなたにとっておきのプレゼントをしましょう。みっつだけ。」



 “みっつだけ”かよとか、“ひとつだけ”じゃなくてよかった、とか考えているうちに、そいつは指を三本立てて一本ずつ折りながらプレゼントの説明をした。



「ひとつ。あなたには戦う力を授けます。あらゆる武器、あらゆる魔法を使いこなし。体力・魔力ともに制限はありません」


 おお!これはいわゆつチートってやつでは?レベル上げやアイテム探しみたいな手間もいらないストレスフリー仕様じゃん!


「ふたつ。あなたは時間を巻き戻す事が出来ます。巻き戻す時間の長さは自由。さすがにこの世界が誕生する前は無理ですが」


 ええ!チート設定の上、時間を巻き戻せるってことはプロファイルロードじゃん!もうこれはチート以上の存在なのでは?


「みっつ。あなたに最大の危機が訪れた時、一つだけ願いを叶えましょう」


 まじか!?最初のふたつですらラノベ主人公クラスの能力なのに、何かがあった時のための保険付きとは!でも、こんなに都合のいい話があるか?何か裏でもあるのでは……と思った俺は素直に質問してみた。言っておくが俺にはまとまったお金も豊かな人生経験も無いんだぞ、と。


「そんなものは必要としません。私は物語が見たいのです。世界を変える力を与えれた人間が起こす物語を。さあ、あなただけの冒険を始めてください」


 そう言って彼?もしくは彼女は姿を消そうとした。あわてて俺はもう一つ気になっていた事を質問した。


「それで、あんたは誰なんだ?」


 そいつは振り返って一言こういったんだ。




 “神”と。




 まぶしかった光は次第に消えてなくなり、緑豊かな風景が姿を現した。


 そこには高層ビルやコンクリートの道路は無い。自然豊かな田舎とも少し違う。RPGゲームでよく見る光景だ。


 まだ正直、気持ちの整理はついていないけど、神様が俺に与えてくれた第二の人生。しかも最強最高のチート設定。これで新しい世界を楽しめないわけがない。


 あと更に贅沢を言うならば……。



 そう、“異世界”“チート”とくれば残るキーワードは“ハーレム”だ。


 ちなみに言わなくても分かっているだろうが、俺は彼女いない歴=年齢のDT野郎だ。学園一の美少女に惚れられたり、地味系幼馴染が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたりしたことは無い。一度もだ、もう一度言う、一度もだ!


 しかし、例え最強の力を手に入れたからといって、いきなりモテモテハーレム体質になったりするのだろうか?



 その答えはYESだ。



 現に今、俺には五人の女の子が側にいる。


 突然で驚いた?そりゃあもちろん様々な経緯があったさ。



 まず一人目は“アイネ”。


 この世界で一番最初に出会った見習シスターの女の子だ。

 小さい体に黒髪のショート。恥ずかしがり屋なのか前髪で目を隠していつも緊張している。

 引っ込み思案な性格とは正反対に、その小さな体の一部分はすごーく主張している。


 迷い込んだ森の奥でコボルトの群れに襲われていたところを俺が助けた。

 ただ一匹ずつ視点を合わせ「ファイヤーボール!」って叫んだだけだったんだけど……。知らない魔法だったんだけど定番じゃん?火の玉ファイヤーボール


 一緒に魔物の巣窟を一網打尽にした後も“命の恩人”とかで、ずっと付いてきてる。

 薬学に秀でていて、薬草やステータス向上の薬を作る達人だ。ちょっと失敗して俺は犬の姿に変わってしまったりした事もあったけど……。



 二人目は“イチカ”。


 この世界で武者修行をしている女剣士だ。

 オレンジの髪を後ろで束ね、ライトアーマーに身を包んだ長身のスレンダー美少女は真っ直ぐ一途な性格で、たまたま訪れた街の剣術教室で用心棒をしている所に道場破りにやってきた。

 瞬間移動テレポート高速衝撃破ソニックウェーブの魔法であっさり倒してからは、何かと再戦リベンジと称して付いてきている。


 事あるごとに対戦を申し出てこられて迷惑しているが、戦闘の際には最前線で戦ってくれる頼もしい仲間だ。

 そういえば最近は対戦の申し込みも少なくなって、側にいる時間がが多くなった。何か心境の変化でもあったのかな?



 三人目は“ウルオネ”。


 この世界にもサーカスというものがあって、正確には移動劇団というらしいんだが、そこで踊り子をしていた女の子。

 褐色の肌に豪奢な白髪が舞う十七歳には見えない色気。踊りだけではなくその独特な体裁きから繰り出すナイフの正確さと攻撃力は侮れない。


 密かに人身売買に加担していた移動劇団の企みを打破した際、悪事と知りながら加担してきた罪への贖罪を求め行動を共にしている。


 遠慮のない物言いとい性格から周りと喧嘩が絶えないが、とっても頼りなる姉御肌で皆は“ウルオ姉”って呼んでる。

 時折その色気たっぷりの体で迫ってくるのも、周りの女の子との喧嘩の原因なんだけど……。



 四人目は“エミーナ”。


 この世界で極めて狭き門として有名な魔法学院在学の女の子。

 三角帽子に長めのマント、そして本人の背丈以上ある魔法の杖。テンプレ通りの姿だが紺のロングヘアーに小柄な姿、メガネをかけたクールな表情からは想像できないドジっ子である。

 マントの下は服を着ない主義らしく、戦闘の最中は目のやりどころに困りアイネからは常に小言を言われている。


 魔法学院の卒業試験は“自分自身で魔法を習得する事”。

 エミーナはその魔法にまつわる伝承を探す途中で俺たちに出会った。


 うっかり魔法を使ってしまった俺に興味を持たれ、それ以来ずっと研究の対象とされている。



 そして五人目は、オルファ。


 この世界の真ん中にある、“十六国協議会”のひとつ。カリプソ王国のお姫様だ。


 金髪金眼の少女はその生まれ持った運命のせいで、十四歳という年齢が嘘の様なしっかりとした顔立ちをしていた。

 大小さまざまな国家がひしめき合う“十六国協議会”に中にあって弱小国とされるカリプソ王国は内乱の危機を迎えていた。

 争いを好まない国王に野心むき出しにした摂政は言葉巧みに一部の貴族や騎士団を懐柔し国王の退位を図った。オルファは国民を摂政の圧政から守る為、一人戦いを挑んだんだ。


 その時に助けたのが俺達ってわけ。騎士団との戦闘や事件の主犯である摂政を取り逃したりと色々あったけど、ついにカリプソ王国は平和を取り戻した。

 オルファの悲願は達成されたってわけだ。


 その後は何故だか俺が花婿候補とかにされたり大変だった事もあったけど、オルファの王様には本当に良くしてもらった。




 そんなこんなで、今は修行も兼ねて目標の為に全員で旅を続けている。


 目標っていうか、夢。


 いつか理想の国を俺たちの手で作り上げようと思っているんだ。

 この世界は教会が絶対の力を持っている。良いこともあるけどその強引なやり方に泣いてる人たちもいるんだ。

 誰もが、誰からも縛られず、自由で平等に生きていける国。そんな場所を作りたいと思ってる!



 というわけで、現実世界では負け犬ニートの俺が色んな人を助け、そして国まで救っちまった。さらにハーレムまでゲット!


 順風満帆だろ?異世界万歳!!






 でだ!


 冒険の途中だった俺たちの前に今、奇妙な奴らが立っている。


 人数は五人。

 それぞれ違った格好をしているが共通しているのは鎧や服のどこかに“三つの稲妻”が刻まれているってことだ。
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