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最終話 ※

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 津田の体温ってこんなに熱いんだな。素肌でくっつくと、それがよくわかる。毎晩抱きしめられてた時は服越しだったから、ここまでの熱を感じなかった。

 お互い寝てる間におかずにし合うという、奇妙な関係だったのに、裸で抱き合う日がくるなんて………なんだか感慨深い気持ちにもなる。

「ごめん、泣かせたりして」

 背中に腕をまわされて、ぎゅうっと抱きしめられた。

 ああ、やっぱり落ち着く……。
 いい匂いするし、あったかくて気持ちいい。ずっとこうしてたい………。

「人前でこんなに泣いたの、小学生ぶりだよ。恥ずかしい」
「………俺のこと、マジで殴っていいよ。それぐらい最低なことしたと思う」

 腕を伸ばして抱きしめ返したら、胸の奥まで熱くなった。

「………殴らないよ。好きな人のことは殴れない」

 あんなに好きだと言うのが恥ずかしかったのに、一度伝えてしまえばすんなりと口からこぼれていく。

 なんだ、思っていたよりもずっと簡単なことだ。どうしてもっと早く素直に伝えなかったんだろう?

「……………ほんと、ごめん」
「もういいから。ごめんじゃなくて、好きって言ってほしい」

 どこかで聞き覚えのあるような、ありきたりな台詞さえ吐く余裕もある。今なら何でも言えそうだ。

「……うん。高瀬のこと、好き。好きだよ………」
「…………俺も、好きだよ」

 寝てる相手に言った時は、どこか虚しかった。けど、今は違う。すごく嬉しい。

 反応が返ってくること、自分と同じ気持ちだってこと、それがわかるのってこんなに嬉しいんだな…………。



「………あのさ。キスしてもいい?」
「………うん、したい」

 何度か軽く唇が重なってから、舌が入ってくる。

「…………ん…………んん………」

 乱暴じゃなくて、とろけるような甘いキス。息の仕方も段々とわかってきて、その気持ちよさに下半身も反応してしまう。

 ………ああー、むずむずする。
 でも、さっきは前をいっぱい擦られたから、後ろを触って欲しいな……。

「…………お願いがあるんだけど」
「なに?」
「…………後ろ、触ってくれない?」

 津田の身体が硬直した。

「………触りたいけど……今、ローションとかゴムないし………」
「いや、あるんだ」
「は」

 実は、男同士のやり方を調べていて、必要な道具は買っていた。まだちゃんと実践はしてないけど、なんとなくは頭に入っている。

「ちょっとごめん」

 ベッドから出て、勉強机の引き出しに隠してあったローションとコンドームの箱を取り出した。それを呆気に取られている津田に手渡す。

「津田としてみたいって思ってたから……買ってたんだよ。ただ、自分だと上手く出来る気がしなくて、使ったことないけど………」
「…………高瀬って、けっこう………」
「……変態だよ。引いた?」

 自嘲気味に笑ったら、津田が首を横に振った。

「いや、全然……。むしろ、俺としたいって思ってくれてたのが嬉しい」

 エログッズを持ってるなんて、人によってはドン引きするだろうけど、津田は嬉しそうにはにかんでくれた。それだけで俺も嬉しくなる。

「俺も男とヤんの初めてだし、上手く出来るかわかんねーけど………していい?」
「……うん、してみよう」
「途中で無理そうだったら言って」
「わかった」

 お尻の中を綺麗にしてから、もう一度ベッドの上に仰向けで寝転がった。

「後ろ向きのほうがやりやすいらしいけど……お尻向けるの恥ずかしいな」

 これもこれで顔を見られて恥ずかしいんだけど、犬みたいなポーズするほうが嫌だ。

「一旦、これでやってみるか。俺も高瀬の顔を見ながらしたい」
「…………あんま見ないでよ。さっきも俺ばっかり恥ずかしい目に遭ってたんだから」
「………可愛かったけどな」
「………っ! い、いいから、早くして」
「……うん」

 カチッ、とローションの蓋を開ける音がした。その音だけで身体に力が入る。

 ………緊張する。
 未知の体験すぎて、期待と恐怖が半々ぐらいだ。津田相手じゃなかったら泣いてたと思う。

「……………っ」

 お尻の穴に指が触れて、ぞわっとした。触られ慣れてないから…………。変な感じ。

「じゃ、挿れてみる。………力抜いて」

 表面を数回撫でられてから、一本目の指が入ってきた。うわっ、きもちわるい。違和感すごい!

「痛くない?」
「……い、痛くはないけど……」
「気持ち悪いって感じ?」
「そう。それ…………うう………」
「慣れるまでゆっくりするから、頑張れ」

 気持ちいいより違和感が勝っていて、呻き声が出てしまう。色気がなさすぎるけど………これ、どうしよう。耐えられるのかな?



 ーーー数十分後。
 ずっと中を指で解されていて、いつの間にか一本から三本に増えている。

「………ん、う…………あぁ………っ」

 なんとか耐え続けて違和感を乗り越えた先に待っていたのは、何とも言いがたい快感だった。

 イけるほどじゃないけど、気持ちいい。
 前も同時に手のひらで撫でられているのもあって、先走りがとろとろ溢れ出てきている。

「…っは、……ん♡………あっ、あ………っん!」

 前立腺をこりこりと撫でられるたびに、腰が勝手に浮く。

「ここ、気持ちいい?」
「~~~っ♡……ひ!……あっ、ぁ♡」
「顔隠すなよ。腕どけて」

 顔を見られたくなくて腕で隠していたら、無情にもどけられてしまった。目が合うと、津田の目元が緩む。

「あー……マジで可愛い……。その顔、好き」

 どんな顔だよ……。
 自分じゃわかんないよ……。
 絶対、あほ面だし。見られたくない。

「みないでって……いった、じゃん……っ」
「そんな顔するほうが悪い」

 なんだそれ………っ!
 津田のせいで、こうなってるんだけど……?

「っはあ………もう、挿れてほしい………津田の挿れてよ……」

 指三本も入ってるんだし、さすがに入るだろう。俺ばっかり醜態を晒すなんて、いい加減こりごりだ。津田の余裕ない顔が見てみたい。 

「………………」

 無言で指をずるっと引き抜かれて、「んっ!」と大きい声が出た。抜かれる時が一番きつい。抜くなら抜くって言ってよ………!

 ーーーそう、言いかけた時。
 袋を破る音がしてから、尻の窄みに硬くて熱いモノが当たった。

「………ああ……もう……我慢すんの無理……」
「………つ、津田?」
「……ごめん、挿れる。痛かったら言って」

 熱っぽい目で見下ろされて、息を呑んだ。

 …………今から津田とするんだ。
 急にそんな実感が湧いてきて、心臓がドクドクと脈を打つ。津田の顔から目が離せなくなる。

「…………っ!」

 あ、入ってきた…………。
 指よりも圧迫感が違う。
 痛くはないけど…………苦しいかも………。

「…………う、あ……………」
「………大丈夫か? 痛い?」
「いっ、いたくはない………」

 違和感がすさまじいし、ぶっちゃけお尻が裂けそうで怖い………。

 でも、同じように苦しそうな顔をした津田が優しく声を掛けてくれるから、なんとかなりそうな気がしてくる。

「先は入ったけど………あー、これ、やばいな……」
「………っな、なにが?」
「………すぐ出そう。高瀬の中が気持ちよすぎて」

 よく考えたら、津田はずっと俺のをいじってばかりで一度も出していない。むしろ、どんだけ耐久力あるんだ。

「はー………マジできつい。ちょっと休憩」

 まだ全部入りきる前に、津田が身体を倒して俺を抱きしめてきた。

 津田に抱きしめられてるのに…………中に入ってるのがドクンドクンしてて、なんだか落ち着かない。

 …………すごく、そわそわする。
 このままでいたいっていうのと、動いてほしいっていうのと………とにかく落ち着かなくなった。

「……我慢しなくていいよ。もっと奥まで挿れていいから………」
「………じゃあ、あんま締めるなよ……」
「そ、そんなこと言われても………っう!」

 ぐぐっと奥に進んでくる。

「っふ、う……あ、ぁあ………っ」

 津田のモノが深くまで入ってきて、腰が逃げそうになる。けど、抱きしめられてるから逃げることなんて出来ない。

「……ふーっ……全部入った」
「く、くるし……っう……んん……!」

 口までキスして塞がれて、緩く腰が動きはじめた。気持ちいいけど、これ、津田に捕獲されてるみたいだ…………。

「んぐっ、んん……ん………♡」

 前まで津田の腹で擦れてるから、どこもかしこも気持ちいい。もう苦しいだけじゃなくなっている。

「どう? 気持ちいい?」
「きもち、い♡………っあ、あ、んっ、あ!♡」

 ぐちゅぐちゅと音を立てながら、前立腺や奥を突かれていく。長く愛撫されていたせいか、すぐに出したいって気持ちが強くなってくる。

 咄嗟に津田の肩を掴んで、腰を離そうとした。

「あ、だめ、イっちゃうっ、まってっ」
「………いいよ。てか、イって」

 だけど、容赦なく腰を振られ続けて、絶頂感が押し寄せてくる。逃げたい。でも、逃げられない………!

「~~~っ!♡♡」

 ………イった。
 イったけど、腰を振るのをやめてくれない。

 ………なんで!?

「ま"ってぇ♡いま♡♡イってる、から♡♡」
「…………………」

 しかも、返事が返ってこない。無言で突かれまくってる。

「おっ♡あっ、あっ♡や、ああっ♡」
「もうちょい我慢して」

 我慢できない! できないから!
 そう言いたくても、俺の口から出てくるのはみっともない声ばかりで。

「う"ぁ、あっ♡あっ♡ぐ、うっ♡」

 ずちゅっ! ずちゅっ! ずちゅっ!

「…………っふ………………」
「~~~ひっ!!♡♡」

 耳元でわずかな吐息を感じたあと、奥を思いきり突き上げられた。中でドクドクと吐き出される感覚がする。津田もイったみたいだ。

 ………危なかった。
 もう少しで、漏らすかと思った……。

「………あー……好き。高瀬、かわいい……」

 なんてことしてくれるんだと思ったけど、ぎゅうぎゅう抱きしめながらそう言われてしまったら、何も言えなくなってしまう。

「………俺も好き………気持ちよかった………」
「……………うん、気持ちよかった」

 中から津田のモノが引きずり出されていく。

 …………もう、終わりか。
 名残惜しさはあるけど、満足感もある。
 初めてだけど、最後まで出来てよかった。

 ーーーピリッ

 そう思っていたら、また袋を破る音がした。

「……………え?」
「我慢しなくていいんだろ?」

 …………なにが? なんの話?

「俺が満足するまで付き合って。まだ全然足りない」
「ちょっ、ちょっと待って………うわーっ!」

 ……………その後も、寸止めはされなかったけど、めちゃくちゃイかされた。









 お互いに好きだと伝えてから、一日中べったりしてるかというとそうでもなくて。普段通りの距離感で過ごしていた。俺も人前でイチャついたり、自分の時間がなくなるのが嫌だから、津田のその性格に居心地の良さを感じている。

 時折、俺が部屋で本を読んでいたり、スマホをいじっていたらちょっかいかけてくるけど、そこもまた可愛いなって思う。

「ところで、何で最初は俺のこと避けてたの?」
「別に避けてたつもりないけどな」
「よく友達の部屋泊まってたりしたじゃん」
「それは、高瀬と居るとムラムラするから」

 それって、だいぶ最初から俺をそういう目で見てたってこと?

「…………俺のどこが好きなの?」
「変に気を使ってこないってのと……あとは」
「うん」
「笑顔がかわいい」
「………っ!!」
「高瀬は?」
「こ、今度言う!」

 よく真顔で恥ずかしげもなく言えるな。

「そっ、それより、今度の休みどっか行こうよ」
「いいよ。行きたいとこあんの?」
「スカイツリーがいい。まだ行ったことないんだよね」
「………俺、高いところ怖いんだっつの。高瀬もそうなんだろ?」
「ああ、それ嘘だよ」
「えっ」
「津田が怖がってるとこ見てみたい」
「………………」
「なに?」
「…………いや、なんでもない。………行くか」




END




最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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