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 イク寸前で止められると、呼吸も止まる。酸素が足りなくなった頭はふわふわとしてきて、思考する力を少しずつ奪っていく。

「~~~っお♡♡………っ♡……♡♡」

 また、止められた。三度目だ。
 身体がビクビクと震えるだけで、声が出ない。

「間隔短くなってるな。そろそろイきたい?」
「……っ♡♡」

 イきたいよ。イきたいに決まってる。

 無言で何度も頷くと、陰茎を持つ手にわずかに力が入って動きはじめる。ゆるい刺激なのに、嘘みたいに身体が反応してしまう。寸止めされてるせいで敏感になりすぎてるんだ。

「んー……どーしよっかな………」

 津田が片方の手で陰嚢をふにふにと揉んでくる。精液が押し出されそうになる感覚に、射精したい欲求がさらに強くなっていく。

「おねが、い……っイきた、い♡……イかせて……♡イきたいの………♡♡」

 みっともなく舌を晒して強請る俺を見て、津田が目を細めて笑った。

「はは………すげー可愛い………」

 心底愛おしそうに微笑んでくるから、非道な行いに興奮してしまう自分と、ここまでの仕打ちを受ける必要があるのかと疑問を抱く自分が混在している。

 好きって、言ったのに。
 なんで信じてくれないんだよ………。

 このやるせない感情も、強烈な絶頂感の波をせき止められているせいで暴発寸前だ。ふつふつと湧き上がってくる苛立ち。これは射精欲だけじゃない。

「もう、イぎたい、おねがい、おねがい……っ」

 けど、今の俺は懇願することしかできない。なんでもいいからイきたい。どうしたら許してくれるんだろう。

「俺としかこういうことしない?」
「しな、い♡しないっ♡っう、あ♡ん♡♡」

 上下する手の動きが早くなる。
 あ、だめだ。もう、我慢できない。

「好きな奴のこと、諦める?」
「~~っだめ、イく、も、イ~~~~♡♡………っっ??」

 今度こそイける………そう思ったのに、また手が離れた。先端からわずかに白濁が漏れる。

「~~っあ"、ぁ…………っ♡」
「あー……少し遅かったな。もうイかせてあげようと思ってたから」
「っ、な、んれぇ………っ♡♡と、めたの……♡」

 呂律の回っていない舌で必死に訴えると、津田の顔が股の間に近づいていく。

「だって、"だめ"なんだろ? それならまだイかせてやれない」
「………?」

 自分が何を聞かれて、どう答えたかなんて、もう覚えていない。津田が何を勘違いしたのかもよくわからない。頭の中に思考する力がもう残ってないんだ。

 津田の言葉を理解出来ないまま、陰茎にぬめりとした感触が当たった。先端の漏れ出した白濁を舐め取られる。今まで味わったことのない刺激に腰が浮いた。

「~~っふ、ぅ♡……あっ♡」

 先端から摩擦で赤くなった裏筋にかけてキスされていく。柔らかい唇に吸われる感覚が気持ちいい。

 最早そんなところを舐めないで、という恥じらいすら一切ない。されるがままの状態だ。心も身体も屈服してるのに、まだ許してもらえない。

「たかせ、好きだよ……。本当はこんな可哀想なこと、するつもりなかったんだけどさ……」

 ちゅ、ちゅ、ぺろ、ちゅ……♡

「今も俺以外のこと考えてるのかと思うと、すげー腹立つんだよな………」

 考えてないよ。考えられないよ。
 津田のことと、イくことしか考えられない。何でそれが伝わらないの。

「っふ、ぇ……ゆるし、て、もう、ゆるしてぇ………っごめん、ごめんなさい……っ」

 何に謝ってるかもよくわからない。根元に添えられた手に力が入る。

「その、ごめんってなに?」
「わか、んない、もう、なんも、わかんな……っ♡♡」
「………あー、限界って意味?」
「そう、イきたい、の、♡♡つだに、イかせて、ほし、い……っっ♡♡しゅき、だから、おれもしゅき、なの♡♡」

 自分はどれだけ情けない顔をしてるんだろう。その顔を見た津田が口元を緩めた。

「ああ、そういうことか……。それ、もっと言って?」

 先端を舐められながら、また手でしごかれはじめる。

「……っしゅき♡♡…っあ♡つだのこと、しゅき♡♡つだに、イかせて、ほしいのッ♡♡♡」
「……すげーバカっぽくて可愛い……。いいよ、イって。俺の口に出していいよ」

 亀頭を咥えられて、ジュプジュプ音を立てて吸い上げられる。その間も陰茎を握る手の動きは止まらない。空いた手で陰嚢まで揉まれて、あっという間に限界に近づいた。

 口の中、気持ちいい。手も、気持ちいい。
 早くイきたい。限界。イきたい。

 ………もう、イく。イく。出す。

「~~~~~~っっ!!!♡♡♡」

 我慢の限界を迎えて、津田の口の中に精を放った。視界が点滅して、反り返った背中はビクビクと痙攣する。

「………量、多いな。ちょっとこぼした」

 陰茎についた白濁を丁寧に舐め取られて、気持ちよさを通り越して、くすぐったい感覚が襲ってくる。

「っは……も、やめ、いま、きつ、い………!」
「まだ一回しかイってないから大丈夫だろ」

 …………何が大丈夫なんだ?
 ようやく射精できて余白が生まれた頭の中は、興奮よりも苛立ちのようなもので埋まっていく。

 そりゃ好きだって言うのが遅くなった俺が悪いんだけど。誤解してるからってやりすぎじゃない!?

 じわあ、と視界が滲んでいき、目の端から涙がこぼれ落ちていく。

「つだの……っばか、あほ、好きって、言ってんのにぃ……っ」
「………た、高瀬?」

 ぎょっとした津田が俺の顔の近くまで寄ってきて、指で涙を拭った。今更優しくされても、そう簡単に涙は止まらない。

「はずかしくてっ、すきって言えなかったんだよお、わかれよ、ほんと、あほ、ばか……」

 こんなに腹立つのに、嫌いって言えない。
 津田のこと、好きなんだよ。
 何でそれが伝わらないんだろ。

「……………それ、マジで言ってる?」

 もう、ほんと、むかつく。
 津田の髪を掴んで、思いきり首に噛みついた。

「っあ、いてっ」
「おれは、好きでもない男といっしょに寝たりっ、こんなえっちなことしないよ……! なんでわかんないんだよお、あほすぎ………」

 泣きじゃくる子供のように罵声を浴びせ続けると、津田の目が泳ぎ出す。

「………じゃあ、高瀬は俺のことが好きってこと…………?」
「さっきから、そう言ってる……っ!!」

 俺が怒りながら言うと、津田が呆然としたように一点を見つめたあと、口元を手で覆った。

「………ご、ごめん、ずっと勘違いしてた………。そっか………。高瀬も俺のこと、好きなんだ……」
「………そうだよ。やっとわかってくれた……?」
「…………うん。最低なことしてごめん………」
「べ、別にいいよ。その、き、気持ちよかったし……」

 さすがにまた寸止めされまくるのは辛いけど。初めてにしてはハードすぎるけど。正直、興奮してたから。

「………あー……俺、マジでクソだな………今、嬉しいって気持ちのほうが勝ってる………」

 津田の手で隠されていない頬あたりが赤く火照っていた。初めて見る赤面顔に、つられて赤くなる。涙も引っ込んだ。

 …………可愛い。そんな反応するんだ。

「……俺も嬉しいよ、やっと伝わったし。………でも、俺ばっかり醜態晒すのって不公平だと思うんだけど?」
「………ん?」
「………津田のも………見てみたい」

 一方的に弄られただけで、津田は服すら脱いでいない。気持ちが伝わったことで、苛立ちから興奮へとすり替わっていく。

 津田にだって、気持ちよくなってもらいたい。

「…………高瀬も、まだしたいんだ?」

 こくりと頷くと、涙の跡を拭うように目尻へとキスされた。

「じゃあ、今度は優しくする。一緒に気持ちよくなろ。高瀬もぜんぶ脱いで?」

 津田がそう言って、服を脱ぎ始める。引き締まった身体と、俺よりもはるかに大きいモノが現れた。それに見惚れてしまって、返事することもできない。

 ………腹筋があるのは知ってたけど、こんなにちんこもデカいんだ…………。

「ガン見しすぎ。自分で脱げねえの? ほら、ばんざーい」

 上の服を脱がされて、素肌が重なり合う。熱い。全裸になっただけなのに、先程よりも興奮している自分が居る。

 …………これ、大丈夫かな。
 またしたいって言ったばかりだけど、少し怖気付いてしまう。でも、優しくしてくれるって言ったし、大丈夫だよね?

「あの………もう、さっきみたいにいじめないよね?」
「………うん。寸止め"は"しない」
「そ、そっか………?」

 …………なら、大丈夫か。
 ほっと安堵した俺は、津田にまた身を委ねることにした。
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