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……寝れなかった。寝ようと考えれば考えるほど悶々として、気付いたら朝になっていた。
まさか夢オチと思うことすらできないなんて。
「おはよ」
津田は起こす前に目が覚めたみたいだ。ぐっすり寝れました、と顔に書いてある。
「………………おはよう……」
「なんか、元気ないな。そっこー寝てたのに」
寝てないんだよ。寝たフリなんだよ。
………………なんて、言えるはずもない。
何でキスしたのってど直球で聞ける性格だったら、どれだけ良かったか。自分の半端に内気な性格を呪った。
「寝すぎて逆に眠いっていうか……はは……」
………何言ってるんだろ、俺。
ベッドから出て立ち上がったら、身体のあちこちが痛い。途中で津田から解放されたけど、それでもベッドが狭すぎた。寝返りもろくに打てやしない。
一緒に寝るなら、広いベッドがいいな……。
…………って、何でまた一緒に寝ることを考えてるんだ?
「俺はいつもよりスッキリ寝れたけどな。高瀬のおかげ」
「そ、そっか……よかった」
「また一緒に寝る?」
「え?」
振り返ったら、ベッドに座る津田と目が合った。じいっと見つめられて、つい目が泳いでしまう。
「………冗談だって。本気にすんなよ」
津田がそう言って立ち上がり、俺の横を通り過ぎようとした。咄嗟にスウェットの裾を掴む。
「なに?」
「………………寝よう。一緒に」
……………ほんと何言ってるんだ、俺。
昨日は梯子から落ちたから。
じゃあ、次は? 何で一緒に寝るの?
「俺も実は………高いところ怖いんだよね」
………という嘘をついたら、津田は目を少し大きく見開いた。
「………っはは、もっと早く言えよ」
また笑った。笑わせるつもりはなかったのに。どうして俺は嘘をついてしまったんだろう。
◇
それからというもの、奇妙な抱き枕生活は毎日続いていた。
人は理解できないことがありすぎると、勝手に許容できる身体の作りになっているらしい。寝れなかったのは最初の一回だけで、回数を重ねるごとに寝るスピードが早くなっていた。昨日なんて五分もかからないうちに寝た気がする。
津田と一緒に寝るのは落ち着く。キスされたのも一回だけだから、その衝撃すら忘れていた。聞くタイミングを逃したから、理由もわからない。
だけど、今日は一個気になることがあって。後ろから抱きしめられてるんだけど。
……………腰に、当たってるんだよ。
………硬いのが。
さすがにこんなんじゃ寝れなくて。
落ち着けるわけがなくて。
息を殺して寝たフリしてるんだけど。
男って意識しなくても勃起してることあるし、寝てる時もそうなるから…………最初はその類かなって思ってたんだ。
「はー……………やばい………」
起きてるんだよね、確実に。
さっきなんて、うなじにキスされたし。
今もお腹あたりを撫でられてる。
急展開についていけない。振り返って「俺も起きてるよ」って言ったらどうなるんだろう。たぶん、一緒に寝ることはなくなるだろう。それこそルームメイトを変えることになるかも。
……………そのほうが、嫌なんだよなあ。
そう思ってしまう自分が一番怖い。
「……………っふ……」
あ、出てきた。
先端を俺の肌に擦り付けられて、上下にしごく振動が伝わってくる。
………何でこんなことするんだろう?
「…………たかせ………ごめん………」
俺の名前を呼ぶ声がやたらと色っぽくて、下半身が反応してしまいそうになる。というか、もう半勃ちになっていた。
性のはけ口にされてることに、嫌悪感を抱かないのは何故なのか。俺ってそんなに変態だったのかな…………。
感情が行方不明だ。
俺の気持ちも、津田の気持ちも。
お互いにお互いを嫌ってるわけじゃない。
一緒に寝るのが落ち着くって思う。
それだけはわかっている。
ただ、もっと腑に落ちる言葉があるんじゃないか。
「……………っ」
あ、イった。
そう考えてるうちに、津田はイったみたいだ。
余韻に浸るような荒い息遣いがうなじにかかる。ぞくぞくした。
今、津田はどんな表情をしてるんだろう。どんな気持ちなんだろう。
「…………はあ………好き……好きだ……」
好き。
……………そうか、好き…………なのか。
だから、ルームメイトを変えたくなかったんだ。それで俺と急に話すようになったり、一緒に寝ようと言ってきたのか。唐突におかずにされたのもそのせいか。
なるほど……………好き、好き………。
…………………好き?
…………なんで?
「………………おやすみ」
もう一度うなじにキスをされて、ぎゅっと抱きしめられた。しばらくしたら、寝息が聞こえてくる。
…………ちょっと待て。寝るな!
一方的に欲をぶつけて、好きって言っといて先に寝るのか?
俺、起きてるんだけど?
いや………津田の視点だと寝てるのか……。
なんで寝てる俺に好きって言うんだよ。
せめて起きてる時に言ってよ。
あー、もう、なんで!?
腕をどかして振り返ると、無防備な寝顔があった。普段のクールな印象とは違い、あどけなさを感じる。
……………可愛いな………。
一気に毒気が抜かれて、食い入るようにその寝顔を見つめてしまう。
「…………あー………好きだな…………」
無意識のうちに口に出していた。
好き。
……………そうか、俺も好きなんだ。
だから、よく心臓がドキドキして苦しくなるし、また一緒に寝たいって思ったし、おかずにされても嫌だと感じなかったんだな…………。
「はーっ………好き。好きすぎる………」
津田の首元に顔を埋めて、すんすんと匂いを嗅ぎまくる。この匂い、好き。匂いフェチじゃなかったはずなのに、津田の匂いはずっと嗅いでいたくなる。
やばい、本格的に勃ってきた。
寝てる相手に欲情するなんて最低か? でも、津田も同じことしてきたし………別にいいよね?
下のスウェットをずらして、モノを取り出す。裏筋から先端にかけてゆっくりとしごきはじめた。
「……っふ…………んぁ…………」
あー、すごく興奮する…………。
好きな人の匂いを嗅ぎながら触るの、やばい。
津田は俺をおかずにすることに罪悪感を抱いていたようだけど、これっぽっちも申し訳なさを感じない。
俺のほうが欲深い人間なのかも……。
「…………っ」
………秒でイった。早漏すぎる。
手の中に吐き出した欲をティッシュに丸めて捨てた。
俺の余裕のない顔とは違う、穏やかな寝顔を眺める。まさか自分がおかずにされてるとは思っていないだろうな。
「……………好き。俺も好きなんだよ………」
唇にそっと口付けを落とした。寝てる相手に言ったって意味はないのに。
この日を境に、奇妙な抱き枕生活に変化が起きた。互いに寝てる間におかずにし合うようになった。我ながら意味がわからない。
というのも、津田が本音を口にする瞬間が"俺が寝てる時(ということになってる)だけ"だからだ。
日中は至って普通に接してくるし、順調に仲良くはなってきている。ただ、それはあくまで友達としてというだけで。
……………どうすればいいんだ、これ。
告白したらいいのかな?
素直に「好き」って言えばいいの?
「………? なんでそんな見てくんの?」
朝、食堂で朝ご飯を食べている時に津田を見ていたら不思議そうに聞かれた。
ああ、今日もイケメンだなあ………。
味噌汁が熱くて「あちっ」って言ってたの、可愛かったなあ……。
ピアスばっちばちで、髪色もど派手なのに、なんでこんなに可愛いんだろ………。
好きすぎる。可愛すぎる。
でも、言える気がしない………。
「ううん、なんでもないよ」
だって、俺も素直に言えない性格だから!
まさか夢オチと思うことすらできないなんて。
「おはよ」
津田は起こす前に目が覚めたみたいだ。ぐっすり寝れました、と顔に書いてある。
「………………おはよう……」
「なんか、元気ないな。そっこー寝てたのに」
寝てないんだよ。寝たフリなんだよ。
………………なんて、言えるはずもない。
何でキスしたのってど直球で聞ける性格だったら、どれだけ良かったか。自分の半端に内気な性格を呪った。
「寝すぎて逆に眠いっていうか……はは……」
………何言ってるんだろ、俺。
ベッドから出て立ち上がったら、身体のあちこちが痛い。途中で津田から解放されたけど、それでもベッドが狭すぎた。寝返りもろくに打てやしない。
一緒に寝るなら、広いベッドがいいな……。
…………って、何でまた一緒に寝ることを考えてるんだ?
「俺はいつもよりスッキリ寝れたけどな。高瀬のおかげ」
「そ、そっか……よかった」
「また一緒に寝る?」
「え?」
振り返ったら、ベッドに座る津田と目が合った。じいっと見つめられて、つい目が泳いでしまう。
「………冗談だって。本気にすんなよ」
津田がそう言って立ち上がり、俺の横を通り過ぎようとした。咄嗟にスウェットの裾を掴む。
「なに?」
「………………寝よう。一緒に」
……………ほんと何言ってるんだ、俺。
昨日は梯子から落ちたから。
じゃあ、次は? 何で一緒に寝るの?
「俺も実は………高いところ怖いんだよね」
………という嘘をついたら、津田は目を少し大きく見開いた。
「………っはは、もっと早く言えよ」
また笑った。笑わせるつもりはなかったのに。どうして俺は嘘をついてしまったんだろう。
◇
それからというもの、奇妙な抱き枕生活は毎日続いていた。
人は理解できないことがありすぎると、勝手に許容できる身体の作りになっているらしい。寝れなかったのは最初の一回だけで、回数を重ねるごとに寝るスピードが早くなっていた。昨日なんて五分もかからないうちに寝た気がする。
津田と一緒に寝るのは落ち着く。キスされたのも一回だけだから、その衝撃すら忘れていた。聞くタイミングを逃したから、理由もわからない。
だけど、今日は一個気になることがあって。後ろから抱きしめられてるんだけど。
……………腰に、当たってるんだよ。
………硬いのが。
さすがにこんなんじゃ寝れなくて。
落ち着けるわけがなくて。
息を殺して寝たフリしてるんだけど。
男って意識しなくても勃起してることあるし、寝てる時もそうなるから…………最初はその類かなって思ってたんだ。
「はー……………やばい………」
起きてるんだよね、確実に。
さっきなんて、うなじにキスされたし。
今もお腹あたりを撫でられてる。
急展開についていけない。振り返って「俺も起きてるよ」って言ったらどうなるんだろう。たぶん、一緒に寝ることはなくなるだろう。それこそルームメイトを変えることになるかも。
……………そのほうが、嫌なんだよなあ。
そう思ってしまう自分が一番怖い。
「……………っふ……」
あ、出てきた。
先端を俺の肌に擦り付けられて、上下にしごく振動が伝わってくる。
………何でこんなことするんだろう?
「…………たかせ………ごめん………」
俺の名前を呼ぶ声がやたらと色っぽくて、下半身が反応してしまいそうになる。というか、もう半勃ちになっていた。
性のはけ口にされてることに、嫌悪感を抱かないのは何故なのか。俺ってそんなに変態だったのかな…………。
感情が行方不明だ。
俺の気持ちも、津田の気持ちも。
お互いにお互いを嫌ってるわけじゃない。
一緒に寝るのが落ち着くって思う。
それだけはわかっている。
ただ、もっと腑に落ちる言葉があるんじゃないか。
「……………っ」
あ、イった。
そう考えてるうちに、津田はイったみたいだ。
余韻に浸るような荒い息遣いがうなじにかかる。ぞくぞくした。
今、津田はどんな表情をしてるんだろう。どんな気持ちなんだろう。
「…………はあ………好き……好きだ……」
好き。
……………そうか、好き…………なのか。
だから、ルームメイトを変えたくなかったんだ。それで俺と急に話すようになったり、一緒に寝ようと言ってきたのか。唐突におかずにされたのもそのせいか。
なるほど……………好き、好き………。
…………………好き?
…………なんで?
「………………おやすみ」
もう一度うなじにキスをされて、ぎゅっと抱きしめられた。しばらくしたら、寝息が聞こえてくる。
…………ちょっと待て。寝るな!
一方的に欲をぶつけて、好きって言っといて先に寝るのか?
俺、起きてるんだけど?
いや………津田の視点だと寝てるのか……。
なんで寝てる俺に好きって言うんだよ。
せめて起きてる時に言ってよ。
あー、もう、なんで!?
腕をどかして振り返ると、無防備な寝顔があった。普段のクールな印象とは違い、あどけなさを感じる。
……………可愛いな………。
一気に毒気が抜かれて、食い入るようにその寝顔を見つめてしまう。
「…………あー………好きだな…………」
無意識のうちに口に出していた。
好き。
……………そうか、俺も好きなんだ。
だから、よく心臓がドキドキして苦しくなるし、また一緒に寝たいって思ったし、おかずにされても嫌だと感じなかったんだな…………。
「はーっ………好き。好きすぎる………」
津田の首元に顔を埋めて、すんすんと匂いを嗅ぎまくる。この匂い、好き。匂いフェチじゃなかったはずなのに、津田の匂いはずっと嗅いでいたくなる。
やばい、本格的に勃ってきた。
寝てる相手に欲情するなんて最低か? でも、津田も同じことしてきたし………別にいいよね?
下のスウェットをずらして、モノを取り出す。裏筋から先端にかけてゆっくりとしごきはじめた。
「……っふ…………んぁ…………」
あー、すごく興奮する…………。
好きな人の匂いを嗅ぎながら触るの、やばい。
津田は俺をおかずにすることに罪悪感を抱いていたようだけど、これっぽっちも申し訳なさを感じない。
俺のほうが欲深い人間なのかも……。
「…………っ」
………秒でイった。早漏すぎる。
手の中に吐き出した欲をティッシュに丸めて捨てた。
俺の余裕のない顔とは違う、穏やかな寝顔を眺める。まさか自分がおかずにされてるとは思っていないだろうな。
「……………好き。俺も好きなんだよ………」
唇にそっと口付けを落とした。寝てる相手に言ったって意味はないのに。
この日を境に、奇妙な抱き枕生活に変化が起きた。互いに寝てる間におかずにし合うようになった。我ながら意味がわからない。
というのも、津田が本音を口にする瞬間が"俺が寝てる時(ということになってる)だけ"だからだ。
日中は至って普通に接してくるし、順調に仲良くはなってきている。ただ、それはあくまで友達としてというだけで。
……………どうすればいいんだ、これ。
告白したらいいのかな?
素直に「好き」って言えばいいの?
「………? なんでそんな見てくんの?」
朝、食堂で朝ご飯を食べている時に津田を見ていたら不思議そうに聞かれた。
ああ、今日もイケメンだなあ………。
味噌汁が熱くて「あちっ」って言ってたの、可愛かったなあ……。
ピアスばっちばちで、髪色もど派手なのに、なんでこんなに可愛いんだろ………。
好きすぎる。可愛すぎる。
でも、言える気がしない………。
「ううん、なんでもないよ」
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