上 下
2 / 11

2

しおりを挟む
 翌朝、珍しく俺と同じ早い時間に津田が起きてきた。朝弱いから、いつもギリギリの時間に起きて登校するのに。

「おはよう」
「………はよ」

 声が少し枯れた津田は、ベッドに座りながら目を擦っている。横にぴょんと寝癖もついていた。

 ………なんか、可愛いな。
 やたら顔がいいからなのか、不良だからなのか、よくわからないけど。ギャップってやつだろうか。

「この時間に起きるの珍しいね。何か用でもあるの?」
「……いや、ないけど。………高瀬と一緒に出ようかなと思って」
「……! じゃあ、食堂で朝ご飯食べようよ」
「うん」

 すごい………。
 津田と朝食を食べるなんて初めてだ。ただの同室相手じゃなくて、友達になれるのかな………。

 のそのそと起き上がって支度しはじめた津田を見て、期待で胸が高鳴った。



 食堂に移動して、津田と向かい合わせに座って朝食を食べる。

「……はー、眠い。よくこんな早く起きれるな」
「この時間なら食堂が混まないからね」

 周りを見渡すと、学生の姿はまばらだ。一年生の中でも特に目立つ津田と一緒だから、普段よりも視線は感じるけど。

「ふーん。でも、もうちょい遅くすれば?」
「え? な、なんで」
「俺が毎日この時間に起きるのきついから」

 ………つまり、俺とまた一緒に食べたいってこと? そういうことだよね?

 聞くの怖いけど、聞いてみたい。

「それって、また俺と食べたいってこと?」
「……まあ、そうだけど」
「……どうして?」
「…………変な誤解されないようにだよ」
「誤解?」
「昨日言ってただろ。俺が高瀬を嫌ってるって」

 ………確かに言ったけど。だから、今日は早起きしてくれたのかな。

「……何でそこまでしてくれるの?」

 疑問が口を突いたら、津田の手が止まった。

「………なんとなく」
「え?」
「なんとなくだよ。理由なんてない」

 津田はそう言い切った。ますます謎は深まるばかりだ。俺なんて面白い人間じゃないのに。

「そっか……まあ、俺は津田と朝ごはん食べれて嬉しいけどさ」
「なら、明日からもうちょい遅く起きて。ついでに俺も起こして」
「う、うん。わかった」

 津田のお願いは不思議と嫌な気がしない。避けられるよりもよっぽどいい。理由はよくわからないけど、俺と仲良くしたいっていうのが伝わってくるからだろう。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

若さまは敵の常勝将軍を妻にしたい

雲丹はち
BL
年下の宿敵に戦場で一目惚れされ、気づいたらお持ち帰りされてた将軍が、一週間の時間をかけて、たっぷり溺愛される話。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

番に囲われ逃げられない

ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。 結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。

ダメですお義父さん! 妻が起きてしまいます……

周防
BL
居候は肩身が狭い

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

愛を探しているんだ

飛鷹
BL
熱心に口説かれて付き合い始めた筈なのに。 たまたま見た雑誌で、アイツが来年の夏に結婚する事を知ってしまう。 次の愛を探さなきゃなぁ……と思いつつ、別れのメッセージをアイツに送ったのだけど………。 両思いのはずが微妙にすれ違って、そして仲直りするまでのお話です。 2022年2月22日の猫の日に因んで書いてみました。

処理中です...