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日々を作る
1おはよう
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2人での生活が始まって、約3ヶ月。
ようやく、今の生活に慣れ始めてきていた。
初めの1ヶ月、アウスは毎日のようにあのことを思い出しては、取り乱し、過呼吸になっていたのだった。
それに加えて、アクラムの方も長いこと1人きりで生活を営んできていたので、アウスに対して、どのように対応すればいいのか分からず、戸惑いが長く続いてしまっていた。
2ヶ月経った頃には、アクラムがアウスとの接し方にも慣れていき、3ヶ月経った今では、アウスもアクラムも2人での生活が日常へと次第に変化してきている。
日の光が、アウスの顔を照らし、朝を知らせた。
「ん……」
瞼を開けると、瞳には光が入り込む。けれど、視界はぼやけており、辺りの景色がはっきりとしなかった。
(……また、泣いていたんだ)
手でゴシゴシと涙を拭き取り、自分の頬に触れ、伝っていたであろう涙の跡を確かめる。
けれど、アウスには、涙を流した記憶はなく、昨日、何が起きたのかわからない恐怖に駆られ、怖くなってしまった。
「アクラム」
声をほんのりと震わせながら名前を呼んで、まだ、気持ちよさそうに眠っているアクラムの方へと身体を動かす。
そうして、アクラムの腕の中へと入り込み、どうにか心を落ち着かせようとする。
「アクラム、アクラム」
何度か名前を呼んで、腕をギュッと握りしめた。
「ん……? どうした?」
アウスが動いたことによって、目を覚ましたらしく、大人の男性の低い声が、アウスの耳元で聞こえる。
「……っ、ご、ごめん」
突然の声に、驚きを感じながら、アウスはその言葉に反応をする。悪いことをしたのだと思って、握りしめていた手を離そうとして。
「大丈夫だ。怖かったのか?」
アクラムがそれに気づいたのか、先ほどの声色よりも落ち着きを持ち、優しくなっている声がアウスの耳を掠めていた。
「う、怖い」
また、涙目になって、アクラムの腕をより一層強く抱きしめ、離れないようにした。
「そうか。怖かったか? もう、大丈夫だからな」
そう言って、腕の中にいる、アウスのことを優しく抱きしめ返す。
「これで、怖くないか?」
アウスへと視線を向け、聞いてくる。
その表情は、どこか不安げで、どこか眠たそうだった。
「うん。怖く、ない。だいじょうぶ」
アウスは視線を逸らしつつ、そう答える。
今の表情を見てしまうと、申し訳なささを覚えてしまうと思って。
「ならよかった。もう大丈夫だからな」
ようやく、今の生活に慣れ始めてきていた。
初めの1ヶ月、アウスは毎日のようにあのことを思い出しては、取り乱し、過呼吸になっていたのだった。
それに加えて、アクラムの方も長いこと1人きりで生活を営んできていたので、アウスに対して、どのように対応すればいいのか分からず、戸惑いが長く続いてしまっていた。
2ヶ月経った頃には、アクラムがアウスとの接し方にも慣れていき、3ヶ月経った今では、アウスもアクラムも2人での生活が日常へと次第に変化してきている。
日の光が、アウスの顔を照らし、朝を知らせた。
「ん……」
瞼を開けると、瞳には光が入り込む。けれど、視界はぼやけており、辺りの景色がはっきりとしなかった。
(……また、泣いていたんだ)
手でゴシゴシと涙を拭き取り、自分の頬に触れ、伝っていたであろう涙の跡を確かめる。
けれど、アウスには、涙を流した記憶はなく、昨日、何が起きたのかわからない恐怖に駆られ、怖くなってしまった。
「アクラム」
声をほんのりと震わせながら名前を呼んで、まだ、気持ちよさそうに眠っているアクラムの方へと身体を動かす。
そうして、アクラムの腕の中へと入り込み、どうにか心を落ち着かせようとする。
「アクラム、アクラム」
何度か名前を呼んで、腕をギュッと握りしめた。
「ん……? どうした?」
アウスが動いたことによって、目を覚ましたらしく、大人の男性の低い声が、アウスの耳元で聞こえる。
「……っ、ご、ごめん」
突然の声に、驚きを感じながら、アウスはその言葉に反応をする。悪いことをしたのだと思って、握りしめていた手を離そうとして。
「大丈夫だ。怖かったのか?」
アクラムがそれに気づいたのか、先ほどの声色よりも落ち着きを持ち、優しくなっている声がアウスの耳を掠めていた。
「う、怖い」
また、涙目になって、アクラムの腕をより一層強く抱きしめ、離れないようにした。
「そうか。怖かったか? もう、大丈夫だからな」
そう言って、腕の中にいる、アウスのことを優しく抱きしめ返す。
「これで、怖くないか?」
アウスへと視線を向け、聞いてくる。
その表情は、どこか不安げで、どこか眠たそうだった。
「うん。怖く、ない。だいじょうぶ」
アウスは視線を逸らしつつ、そう答える。
今の表情を見てしまうと、申し訳なささを覚えてしまうと思って。
「ならよかった。もう大丈夫だからな」
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