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出会い
4・記憶の中で…
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後ろを振り返るといなくなったはずの男たちがこちらへと向かってきていた。
まるで,アウスたちを待ち構えていたかのように。
(え,やだ,怖い。逃げなきゃ)
刹那に心の中ではそう言っていた。けれど,逃げようとしても身体は動かず,目を瞑ってどうにかその場にしゃがみ込んだ。恐怖と死を覚悟して。
「アウス」
母はそう叫んで,アウスの方へとやってくて,すぐにアウスの身体を包み込んだ.
その瞬間,経ったの数秒のことだった。その数秒で世界はまるっきり違う見え方をした。
「うっ……」
母の苦しそうな声と鈍い音がアウスの耳を掠めた。
何が起こったのか,目を瞑っていたアウスには見えていなかった。
「どうしたの?」
母の身体がこちらに倒れ込んできているのを感じて,アウスは目を開けようとする。
「目を,開けては,ダメよ」
息を途切れ途切れにしながら話す,母の手で目を隠されて,アウスは視界が遮られたままになる。
「どうして?」
余計に怖くなって,アウスは母の手を退けて,母の方に目をやる。いつもなら,手を退けることなんてできない母の手はあっさりとアウスによって退けられてしまったのだ。
「えっ?」
言葉が出たのはそれだけだった。それ以上は言葉が声にならなかった。
目の前に広がっていた光景。それは,母の着ていた服が血で赤く染まっていたこと。それも母親自身の血で。
あの瞬間,アウスを守って,背中から,思いっきり刺されていた。それも,もう少しでアウスにも刺さってしまうかもしれないくらいに。
(やだ,やだ)
視界が涙によって次第にぼやけていくのがわかった。涙が頬をつたり,自分の洋服にシミを作っていく。
傷のところに手を当てて血を止めようとする。お父さんに,そうすれば血が止まると聞いていたから。
でも,止まるはずなどなく,次第にアウスの手が血で染まり,赤くなっていった。
「お母さん」
涙ながらにアウスは言ったが,反応がほとんどなかった。唯一,微かに眉が動いただけだった。
「嫌だ。やだ。ねぇ,反応してよ。お願いだから」
「大丈夫……だから,逃げなさい」
微かにそんな声が聞こえた気がした。
とても小さく,気のせいだったのかもしれない。
「なら,返事して。お願い」
母の身体をゆすり,アウスはもう一度懇願する。
その間,アウスの家にきた男たちは黙ってアウスを見ていた。それも,楽しそうに。次は何をしてやろうと考えながら。
「どうするか?」
「殺すのもなんか嫌だからな……」
まるで,アウスたちを待ち構えていたかのように。
(え,やだ,怖い。逃げなきゃ)
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「アウス」
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その瞬間,経ったの数秒のことだった。その数秒で世界はまるっきり違う見え方をした。
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母の苦しそうな声と鈍い音がアウスの耳を掠めた。
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「えっ?」
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でも,止まるはずなどなく,次第にアウスの手が血で染まり,赤くなっていった。
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「なら,返事して。お願い」
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その間,アウスの家にきた男たちは黙ってアウスを見ていた。それも,楽しそうに。次は何をしてやろうと考えながら。
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