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出会い
1・記憶の中で…
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***
(痛い……)
意識を失う前に,アウスが思ったことだった。
今日もいつもとなんら変わりのない日になるはずだった。
朝起きて,お母さんのご飯を食べて、それから家の手伝いをする。そんな、日常を送るつもりだった。
けれど,その日常は地響きと共に簡単に消え去っていった。
アウスが楽しく母のご飯を食べていた時だった、突然,感じたこともない揺れがアウスたちの街を襲った。
地面が揺れているというよりは,何かがこちらにきているという感覚があり、得体の知れない恐怖を感じた。逃げようとしたけれど,身体はとっさには動かずに固まってしまう。
「お母さん……」
イスに座っていたアウスは母に助けを求めたが,母もアウス同様に身体がすぐには動かなかった。
一方の父はというと仕事に行く準備をしていて,玄関付近におり,すぐにアウスたちのいるダイニングへと慌ててやってきた。
「大丈夫か?」
「う,うん。大丈夫」
アウスは慌てながらもどうにか父の言葉に反応すた。
というもの揺れはすぐに収まったから。棚にあったものやテーブルの上にあったものは壊れたり落ちたりすることはなかった。そうして,アウスたちはどうにか心を落ち着かせる。
「そうか,よかった。俺は一旦,外で何があったのか見てくる」
そう言って,父は外に出ようとした。
「お父さん,その,僕も行ってもいい?」
アウスは何があったのか気になり,父について行こうとする。けれど……。
「アウス,ちょっとお前はそこで母さんと一緒に待っていなさい。何が起きたのか父さんも分からない。そんなところに,お前を連れていくことはできない。それに,アウスは,母さんと一緒にいてやってくれ。俺は入れないからな」
父はしゃがんでから,アウスの肩に両手を置いてしっかりと目を見て話す。その表情は,さっきの出かけるようとする前に見たいつもの顔ではなく険しい表情をしていた。
「う,うん。わかった。でも,お父さんは,大丈夫なの?」
「うん。大丈夫だ」
そう言って,アウスの頭を撫でてから,桑を持って家から出ていく。
その背中を見てアウスは追いたかったけれど,追ってはいけないと本能が言っていた。
父の言うことを聞けと。
「お母さん」
アウスは,父のことを心配しながらも,リビングへと戻り母に話しかける。
「大丈夫よ。アウス,私たちはここで待ってましょう」
母はアウスの表情を見てすぐに抱きしめて落ち着かせる。
「だけど……」
「大丈夫だからね」
アウスが喋ろうとすると母はより強くアウスを抱きしめた。
(痛い……)
意識を失う前に,アウスが思ったことだった。
今日もいつもとなんら変わりのない日になるはずだった。
朝起きて,お母さんのご飯を食べて、それから家の手伝いをする。そんな、日常を送るつもりだった。
けれど,その日常は地響きと共に簡単に消え去っていった。
アウスが楽しく母のご飯を食べていた時だった、突然,感じたこともない揺れがアウスたちの街を襲った。
地面が揺れているというよりは,何かがこちらにきているという感覚があり、得体の知れない恐怖を感じた。逃げようとしたけれど,身体はとっさには動かずに固まってしまう。
「お母さん……」
イスに座っていたアウスは母に助けを求めたが,母もアウス同様に身体がすぐには動かなかった。
一方の父はというと仕事に行く準備をしていて,玄関付近におり,すぐにアウスたちのいるダイニングへと慌ててやってきた。
「大丈夫か?」
「う,うん。大丈夫」
アウスは慌てながらもどうにか父の言葉に反応すた。
というもの揺れはすぐに収まったから。棚にあったものやテーブルの上にあったものは壊れたり落ちたりすることはなかった。そうして,アウスたちはどうにか心を落ち着かせる。
「そうか,よかった。俺は一旦,外で何があったのか見てくる」
そう言って,父は外に出ようとした。
「お父さん,その,僕も行ってもいい?」
アウスは何があったのか気になり,父について行こうとする。けれど……。
「アウス,ちょっとお前はそこで母さんと一緒に待っていなさい。何が起きたのか父さんも分からない。そんなところに,お前を連れていくことはできない。それに,アウスは,母さんと一緒にいてやってくれ。俺は入れないからな」
父はしゃがんでから,アウスの肩に両手を置いてしっかりと目を見て話す。その表情は,さっきの出かけるようとする前に見たいつもの顔ではなく険しい表情をしていた。
「う,うん。わかった。でも,お父さんは,大丈夫なの?」
「うん。大丈夫だ」
そう言って,アウスの頭を撫でてから,桑を持って家から出ていく。
その背中を見てアウスは追いたかったけれど,追ってはいけないと本能が言っていた。
父の言うことを聞けと。
「お母さん」
アウスは,父のことを心配しながらも,リビングへと戻り母に話しかける。
「大丈夫よ。アウス,私たちはここで待ってましょう」
母はアウスの表情を見てすぐに抱きしめて落ち着かせる。
「だけど……」
「大丈夫だからね」
アウスが喋ろうとすると母はより強くアウスを抱きしめた。
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