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2章

2話 昔馴染み

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「あぁ、由良。来ていたのか」

 昔からの馴染みの顔に涼斗は久しぶりに心が踊って笑みを浮かべた。
 
「うん。まぁね。久しぶり」

 いつものように人懐っこい笑顔で涼斗の目の前へとやってくる。相変わらず年齢よりも若くみえる顔は健在でホッとした。

「久しぶり。元気にしてたか?」

 由良と会うのは6ヶ月ぶり。
 由良も涼斗と同じ被験者だけど、この施設ではなく、外で生活をしているので会うことはほとんどなかった。
  
「うん。きりもいるし、元気だったよ」

 そう言った由良のうなじには一生消えないであろう噛み跡がついている。
 見るからに痛そうな噛み跡。なのに涼斗は見るたびに幸せをもらっている気分になる。
 それも、由良とはお互い記憶がない子どもの頃から同じ児童養護施設で育った仲だから。

「なら、何より良かった」

「うん。まぁね」

 由良は落ち着いて、穏やかな表情を浮かべた。
 
(そうか、もう……)

「幸せなんだな」

「うん、幸せだよ。やっと、身体も良くなってきたし。ほんと、涼斗のおかげ、ありがとう」

「俺は何もしてない。幸せをつかみ取ったのは桐と由良の頑張った証だろ」

 素直にそう思っていた。弟のように思っていた由良のこと。幸せであって嬉しいという気持ちが何よりも願っていたことだから。
 なのに、それと同時に1人である孤独感が今まで以上に押し寄せてきた。
 
「って、今はそんなことよりも、涼斗。涼斗の方こそ体調、大丈夫なの? ずっと気になっていた」

 大きな瞳で涼斗を見上げれば、じっと顔を見つめてくる。その瞳には心配の色と不安の色が見えた。
 それでも、いつもみたいに返事をする。

「大丈夫だ。そんな心配しなくても。今はそんな体調、悪くない」

 実際、熱も怠さも長く寝たせいか消えていて、朝起きるのも困らなかった。
 ただ、一つ言えるのは今朝、鏡で見た自分の顔にはひどいクマができていいて、身体は平均よりも痩せ細ってきたことが辛いくらいだった。

「ほんと?」

「ほんと。ただ、昨日まで病院の方にいたから、悪く見えるかもしれない」
 
 いつもみたいに何事もなかったように話をした。
 けれど、いつもとは違かったらしい。

「そうじゃなくて、ふらつきとかない? 顔色がだんだん悪くなっているように思うんだけど」

 由良が慌てて話しを始め、涼斗はついていけなかった。それでも、由良の表情と声色によって不安が募り始める。
 今手元に鏡はなく、自分の顔を見ることはできない。

「うん。別に何もないけど」

「そっか。でも、不安だから座って。それから話とかしよう」

 食堂に向かう予定だったけど、涼斗の体調面に気遣って、由良が言っていることなので断る必要はなかった。

「わかった。じゃあ、俺の部屋でもいいか?」

「もちろん」

 2人で一旦、涼斗の部屋へと行って向かいあって座った。 
 涼斗はベッドの上。由良はその向かいにあるテーブルの反対側に。

「それで、本題なんだけど、何があったの?」

 恐る恐る聞いてくる由良の表情は余計に険しくなっているように見え、涼斗も真剣に話を始める。

「それは……」

 今回の実験のことをなるべく大まかに話をした。
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