62 / 73
5章
17話 またね
しおりを挟む
「なんですか?」
「やっぱり,レオの体温は,落ち着く」
ゆったりとした時間が過ぎていく。
外はすっかり,日が高くなり始めていた。
「カイン様,やっぱり寂しくなりますね」
坊ちゃんの腕の中にいると離れたくないそんなことを思った。
明日から,いや今日の昼過ぎから,この温もりをすぐには感じられなくなってしまう。
昨日までは,きっとそんなことを思わなかっただろう。けれど,今はそんなことを考えてしまう。
「寂しくなるけど,待っててよ。ちゃんと,レオのこと守れるように強くなるから」
「……待ってますよ。当たり前じゃないですか。立派になってくださいね」
なるべく,前向きに明るく僕たちは話した。離れることが辛くないかのように。
それに,会えなくなるなんて言っても,休みの日は坊ちゃんはこの家に帰ってくる。だから,何年も会えないとかじゃない。
なのに,離れたくはなかった。
「うん」
坊ちゃんは,希望に満ち溢れた,返事をする。
「頑張ってください。私はちゃんと待っておりますから」
心配させないように、僕は付け加えた。
そして,離れ難くもなりながら,するりと坊ちゃんの背中にある手を離し,立ち上がる。
流石に,もう起きなくてはいけない時間になってしまっていたから。
「レオ,なんで…もう少しだけなら」
手を引っ張り僕を引き止めようとする。
「だ、ダメですよ。これ以上は……」
「なんで?」
下から顔を覗き込まれてる。
これ以上は,離れたくなくなるから。なんて,言葉恥ずかしくて言えなかった。
「ダメなものはダメなんです。ほら,カイン様も準備始めてください」
「わかっている。けど…」
布団から顔を出して,坊ちゃんがいった。
「いいですから。僕は,朝食の準備に行きますね」
もうすでに坊ちゃんの荷造りは終わっているらしく,あとは馬車へと運ぶだけのようだった。けれど,僕はすぐにでもその場から離れたくなり,逃げるようにしてその場を去った。
そうして,朝食の準備を済まして,坊ちゃんを呼びにいく。
「カイン様,朝食の準備が終わりましたよ」
いつも通り,扉の前で伝える。
「あ,うん。今行くから,先レオ行ってて」
「わかりました」
僕はそう言って,ダイニングで坊ちゃんのことを待った。
「お待たせ」
ダイニングへと入ってくるなり,すぐに席につき,ご飯を食べ始める。
これが寮に入る前の坊ちゃんがここで食べる最後の食事。
だから,今日は,シェフにもお願いして,僕も少し作らせてもらった。
「美味しいですか?」
「うん。美味しい。あとは,馬車をくるのを待つだけだね」
坊ちゃんは,小さい声でつぶやいた。
「そうですね。また,すぐに会えますから。心配なさらないでください」
めいいっぱいの強がりと自分に言い聞かせるための言葉だった。
「うん」
そうして,馬車が来るまでの時間2人で過ごした。
いつもは長く感じる時間がとてつもなく,早く過ぎていった。
「カイン様では,お気をつけて」
「レオも健康には気をつけてね。あと,何かあったらすぐに知らせてね」
馬車に乗って,もうすぐ出発する間際にそんな話する。
すぐに休みがやってくると信じて。
「やっぱり,レオの体温は,落ち着く」
ゆったりとした時間が過ぎていく。
外はすっかり,日が高くなり始めていた。
「カイン様,やっぱり寂しくなりますね」
坊ちゃんの腕の中にいると離れたくないそんなことを思った。
明日から,いや今日の昼過ぎから,この温もりをすぐには感じられなくなってしまう。
昨日までは,きっとそんなことを思わなかっただろう。けれど,今はそんなことを考えてしまう。
「寂しくなるけど,待っててよ。ちゃんと,レオのこと守れるように強くなるから」
「……待ってますよ。当たり前じゃないですか。立派になってくださいね」
なるべく,前向きに明るく僕たちは話した。離れることが辛くないかのように。
それに,会えなくなるなんて言っても,休みの日は坊ちゃんはこの家に帰ってくる。だから,何年も会えないとかじゃない。
なのに,離れたくはなかった。
「うん」
坊ちゃんは,希望に満ち溢れた,返事をする。
「頑張ってください。私はちゃんと待っておりますから」
心配させないように、僕は付け加えた。
そして,離れ難くもなりながら,するりと坊ちゃんの背中にある手を離し,立ち上がる。
流石に,もう起きなくてはいけない時間になってしまっていたから。
「レオ,なんで…もう少しだけなら」
手を引っ張り僕を引き止めようとする。
「だ、ダメですよ。これ以上は……」
「なんで?」
下から顔を覗き込まれてる。
これ以上は,離れたくなくなるから。なんて,言葉恥ずかしくて言えなかった。
「ダメなものはダメなんです。ほら,カイン様も準備始めてください」
「わかっている。けど…」
布団から顔を出して,坊ちゃんがいった。
「いいですから。僕は,朝食の準備に行きますね」
もうすでに坊ちゃんの荷造りは終わっているらしく,あとは馬車へと運ぶだけのようだった。けれど,僕はすぐにでもその場から離れたくなり,逃げるようにしてその場を去った。
そうして,朝食の準備を済まして,坊ちゃんを呼びにいく。
「カイン様,朝食の準備が終わりましたよ」
いつも通り,扉の前で伝える。
「あ,うん。今行くから,先レオ行ってて」
「わかりました」
僕はそう言って,ダイニングで坊ちゃんのことを待った。
「お待たせ」
ダイニングへと入ってくるなり,すぐに席につき,ご飯を食べ始める。
これが寮に入る前の坊ちゃんがここで食べる最後の食事。
だから,今日は,シェフにもお願いして,僕も少し作らせてもらった。
「美味しいですか?」
「うん。美味しい。あとは,馬車をくるのを待つだけだね」
坊ちゃんは,小さい声でつぶやいた。
「そうですね。また,すぐに会えますから。心配なさらないでください」
めいいっぱいの強がりと自分に言い聞かせるための言葉だった。
「うん」
そうして,馬車が来るまでの時間2人で過ごした。
いつもは長く感じる時間がとてつもなく,早く過ぎていった。
「カイン様では,お気をつけて」
「レオも健康には気をつけてね。あと,何かあったらすぐに知らせてね」
馬車に乗って,もうすぐ出発する間際にそんな話する。
すぐに休みがやってくると信じて。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる