坊ちゃんと執事の日々のお話

紫雲もか

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5章

3話 いよいよ始まる

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「人来てますね」

僕はこんな豪華なパーティーに行くことはなかったから分からなくて,正直驚いた。

「来ますよ。坊ちゃんの誕生会なのですから」
「まあ,そうですが…なんかすごいなと思いまして…」

メアリさんは慣れた様子で来客の方々を眺めている。
さすが,長年勤めているだけあるなと思う。

「私はどちらかというと招待状がちゃんと届いていることに安心してます」

そういえば,メアリさんはメアリさんで大きな仕事をしてたことを思い出す。招待状を出すという大きな仕事を。

「あの時の,メアリさんいつになく焦っていましたよね」
「焦りますよ。そんな大きな仕事したことなかったんですから」
「でも,なんか意外でした。メアリさんも焦ることとか困ることあるんだなと思って」

メアリさんは僕にとって導いてくれる人とか憧れに近いところにいる人にいつのまにかなっていた。同じ同僚でも1人だけ違うそんなふうに思う人。
だから,余計にメアリさんが焦っていることは意外でしかなかった。

「ありますよ。慣れないことややったことのないことは誰だってそうですよ」
「そうですか?なんか,メアリさんは器用でなんでもできるなんて思ってました」
「いつもは,慣れているからできるのであって,慣れないことはできませんよ」
「それもそうですね」

そんな話をしながら,僕とメアリさんは定位置に着く。

「ようこそお越しくださいました」

僕は,礼をしながら,来客の方々を迎えていく。
来客の方々の服装はやはり正装であり,しっかりとしていて,緊張感がより高まってくる。
次第に来客の足も落ち着き始めて,僕は会場へと向かった。
会場には,たくさんの人がいて,料理が並べられている。

(いつのまに,こんなになってたんだろう?)

僕がそう驚いていると,後ろから旦那様がやってきた。

「レオくん,ありがとうね。こんなに立派なパーティー開けるのは君のおかげだよ」
「いえ,僕は何にも,この料理もここまでの来客も僕は何にもできていません。ですから…」
「ううん。君が頑張ってくれたことによってこの会場はできたんだよ。だから,そんなに謙遜しないでほしいな」

旦那様はいつもそうやって僕を励ましてくれる。

「あ,ありがとうございます」
「こちらこそ,ありがとう。では,僕は行かないといけないから。あとでね」

そう言って,旦那様はすぐに来客の方がに挨拶をしに行く。その様子を見る限りとても慣れていることを感じて,いつか坊ちゃんもあのようになるのだなと想像する。

(どんどん,遠くに行ってしまうのだな…)

そう考えながら,僕は会場を見渡した。その時…。

「ねえ,レオ」

突然名前を呼ばれて僕は会場の外へと引っ張られる。

「えっ…なんですか?」

驚きつつも,坊ちゃんの声であることがわかるから,黙ってついて行く。

「お願い,あるんだけど…」

こちらに振り返って真剣な表情で僕に言った。

「お,お願い…?」


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