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4章
14話 いつも通り?
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「ねぇ,レオどうしたの?急に黙って…」
坊ちゃんが心配そうにしている。
「いえ,特に何にもありません」
自分でもどうして声が出なかったのかわからなかった。
「ほんと?…それならいいんだ。けど,何かあったらちゃんと言ってね」
「はい。わかっております……それでは…」
僕が立ちあがろうとすると,腕の裾を引っ張られてしまう。
「ん…どうしました?」
「だ,だから…ぎゅっしてよ。なんで,それだけはしてくれないの?」
今までとなんら変わらない,そんな表情だった。
「えっと…それも卒業なさったのかなと…申し訳ありません。勝手にそう思っておりました」
「…そのつもりだったんだけど…これだけは,やっぱりないと寂しくて…。大人にならなきゃいけないのに…今日も本当は,言うのやめようと思ったんだけど…」
下を向いて,申し訳なさそうにしている。
「っ…いいですよ。大人に早くなろうとしなくても。私はむしろ,まだまだ幼い坊ちゃんでいてくださる方が私は嬉しいです。でも,坊ちゃんはやっぱり私と離れたいですか?」
坊ちゃんが,もう僕がいなくてもいい,離れてもいい,そんなことを考えていると思っていた。だから,余計に嬉しくなった。僕が,まだ坊ちゃんのそばにいてもいいんだと。坊ちゃんが僕を必要としてくれているのだと知ることができて。
「ううん。思わないよ。レオがそう思ってくれているのなら,またいっぱいレオに甘える。それでもいい?」
ニコリと笑顔を見せ,坊ちゃんは僕の胸に飛び込んでくる。坊ちゃんの体温は,僕より温かい。まだまだ子ども体温。
僕は,両手を坊ちゃんの背中に回して,身体を包み込む。
「レオ,やっぱり僕はレオがいてくれるから頑張れる。だから,レオ,僕のことちゃんとみていて。そして,いなくならないで」
「もちろんです。坊ちゃんが立派になるまでちゃんと見届けますよ」
久々に,こんなに近くで坊ちゃんの体温と声を感じて,ほんの少しの違和感と心地よさがあった。
「ほんと?約束だよ」
「もちろんです」
「ありがとう…」
少しの沈黙の後、僕はいつものように始める。
「…坊ちゃん」
「ん?」
「今日も頑張れそうですか?」
「…うん。頑張るつもり。あと,レオが言ってくれると余計に頑張ろうってそう思う」
「そんなことおっしゃってくれるとは,私も嬉しいです……なら,今日もご一緒しないとですね。……でもっ…体力が持つかわかりませんが…」
坊ちゃんと居たくても,やっぱり仕事は久々で体力が戻っているようには思えなくて不安で、そう付け加える。
「具合悪くなったらすぐに言ってね」
「はい。お言葉に甘えさせていただきます。それでも,なるべく,頑張りたいと思っています」
「頑張ってほしくないって言いたいけど,見ていて欲しいから頑張って欲しいとも思う…ごめんなさい」
坊ちゃんは言いづらそうにしながらも楽しそうだった。
(良かった…いつも通りだ)
そう安心する僕がいた。
坊ちゃんが心配そうにしている。
「いえ,特に何にもありません」
自分でもどうして声が出なかったのかわからなかった。
「ほんと?…それならいいんだ。けど,何かあったらちゃんと言ってね」
「はい。わかっております……それでは…」
僕が立ちあがろうとすると,腕の裾を引っ張られてしまう。
「ん…どうしました?」
「だ,だから…ぎゅっしてよ。なんで,それだけはしてくれないの?」
今までとなんら変わらない,そんな表情だった。
「えっと…それも卒業なさったのかなと…申し訳ありません。勝手にそう思っておりました」
「…そのつもりだったんだけど…これだけは,やっぱりないと寂しくて…。大人にならなきゃいけないのに…今日も本当は,言うのやめようと思ったんだけど…」
下を向いて,申し訳なさそうにしている。
「っ…いいですよ。大人に早くなろうとしなくても。私はむしろ,まだまだ幼い坊ちゃんでいてくださる方が私は嬉しいです。でも,坊ちゃんはやっぱり私と離れたいですか?」
坊ちゃんが,もう僕がいなくてもいい,離れてもいい,そんなことを考えていると思っていた。だから,余計に嬉しくなった。僕が,まだ坊ちゃんのそばにいてもいいんだと。坊ちゃんが僕を必要としてくれているのだと知ることができて。
「ううん。思わないよ。レオがそう思ってくれているのなら,またいっぱいレオに甘える。それでもいい?」
ニコリと笑顔を見せ,坊ちゃんは僕の胸に飛び込んでくる。坊ちゃんの体温は,僕より温かい。まだまだ子ども体温。
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「レオ,やっぱり僕はレオがいてくれるから頑張れる。だから,レオ,僕のことちゃんとみていて。そして,いなくならないで」
「もちろんです。坊ちゃんが立派になるまでちゃんと見届けますよ」
久々に,こんなに近くで坊ちゃんの体温と声を感じて,ほんの少しの違和感と心地よさがあった。
「ほんと?約束だよ」
「もちろんです」
「ありがとう…」
少しの沈黙の後、僕はいつものように始める。
「…坊ちゃん」
「ん?」
「今日も頑張れそうですか?」
「…うん。頑張るつもり。あと,レオが言ってくれると余計に頑張ろうってそう思う」
「そんなことおっしゃってくれるとは,私も嬉しいです……なら,今日もご一緒しないとですね。……でもっ…体力が持つかわかりませんが…」
坊ちゃんと居たくても,やっぱり仕事は久々で体力が戻っているようには思えなくて不安で、そう付け加える。
「具合悪くなったらすぐに言ってね」
「はい。お言葉に甘えさせていただきます。それでも,なるべく,頑張りたいと思っています」
「頑張ってほしくないって言いたいけど,見ていて欲しいから頑張って欲しいとも思う…ごめんなさい」
坊ちゃんは言いづらそうにしながらも楽しそうだった。
(良かった…いつも通りだ)
そう安心する僕がいた。
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