23 / 73
3章
6話 パレード
しおりを挟む
そんな中,坊ちゃんは,集まってくる人たちを見ながらキラキラと瞳を輝かせている。
「どうしたのですか?」
「なんか、みんな楽しみにしているのかと思うと僕ものすごく楽しみになって,今からすごくワクワクするなって」
「ワクワク,私もしています。レオさんはそうではないのですか?」
メアリさんも楽しそうにそう話した。
「いえ,楽しみなのですが,それと同時に,緊張感もあるような…」
どこかピリつく空気がここには漂っている。
この国一番のお祭り。それに,騎士のパレードとくれば漂わないわけがないのだけれど,その空気は重く自分の生きている世界とは違うのだと否が応でも感じさせられている気分だった。
自分がいけなかった場所,そんなふうに感じてはほんの少し悲しくなるのは,人には言えないこと。
「でも,私たちは緊張しなくていいんですよ。私たちは,楽しめばいいのですから」
「そうですね」
「うん。楽しも。レオも」
僕たちは,その場にしゃがんでパレードを始まるのを待つことにした。
というのも,後ろの人たちにも見えるようにと。
そうして,1時間が過ぎていき,パレードが幕をあけた。
最初は,騎士団の人々ではなく,一般の人たちがいろんなことをして歩いていく。
そして,最後に騎士の人たちが,歩くというような感じだった。
兄も旦那様も凛とした表情でいつもの感じが嘘なのではないかと思うほどかっこよかった。
(いいな…)
心の中で僕はそんな感情が浮かんできていた。
そんな時,手を引っ張り,坊ちゃんは僕たちを呼ぶ。
「ねえねえ」
『どうしたんですか?』
メアリさんと僕は同時に反応する。
「なんか,かっこいいね。僕は…将来,あんなふうになれるかな?」
てっきり,剣術が嫌いだったので,将来は旦那様とは違う道に行きたいと思っているのではないかと思っていた。
だから,正直,驚いて,言葉を失いつつも,どこか嬉しくもなる。
「そう,ですね…坊ちゃんの努力次第だと思います。だから,これからは剣術もちゃんとやってください」
「…う,うん。もう少しだけ,頑張ってみようかな…」
「その調子です。応援してます」
「私も応援してますよ」
メアリさんもそう声に出して,坊ちゃんは嬉しそうに頬を赤く染めた。
「ありがとう。僕,明日から頑張るね」
そう意気込む坊ちゃんの目は確かに,真剣な眼差しそのものだった。
「ところで,このあとはどうしますか?もう帰るという感じですか?」
「それが,まだどうしても行きたいところに行けてなくて…」
メアリさんが,そう声に出して,案内の紙を僕たちに見せた。
「あ,なるほど…確かにここは…」
僕は,メアリさんが地図で示した場所を見て納得する。
メアリさんが指さしていた場所は行列の絶えない人気店のお祭りバージョンで,お祭り限定の食べ物を売っている場所だった。
「…ほんと,お二人には申し訳ないのですが,どうしても行ってみたくて…売り切れ覚悟で行こうかなと…お二人は,変えてもらってもいいので…」
そのお店のあるあたりは,確か休憩できるスペースがあるはず。だから,待つにはいいところでもある。
「待っておりますよ。ね,坊ちゃん?もう少しお祭り楽しみたいですよね?」
「うん,僕も,メアリのこと待ってる」
「ほんとですか。嬉しいです。ありがとうございます。ほんとは,お二人と一緒にもう少し回りたいと思っていたので…」
照れながら言うメアリさんを見て僕までもどこか嬉しくなってしまう。
そうして,僕たちは地図の場所へと向かった。
やはり,その店はまだまだ行列を作っていた。
「…はぁ,やっぱりまだ多くの人たちが並んでいますね…なんか,ほんと申し訳ないです…」
「気にしないでください。僕たちは座ってそこで待ってます」
「うん,気にしないで,僕もレオと待ってる」
「…ほんっとありがとうございます」
メアリさんは,そう言って,列へと並んで行った。
「じゃあ,僕たちは,あそこで座ってましょうか?」
ちょうど2人分の席が空いて,手を繋いでいる僕たちはそこへと向かった。
座って少しすると,坊ちゃんがソワソワしてきた。その様子を見て,僕は気になって聞いてみる。
「何かしたいこととかありますか?」
「あのね,僕,一度でいいから1人で,お買い物してみたいなって思っていて…それで,だから,今日,今1人でお買い物したいなって…」
「…そうですね…」
正直,坊ちゃんを1人にするのはちょっと嫌だと思った。
けれど,僕の見える範囲なら別にいいかと言う考えが浮かんでしまった。
「ねえねえ,いい?」
悩んでいる僕を尻目に,何度も何度も聞いてくる。
「…わかりました.では,すぐそこのお店で何かを買ってきてください」
僕は,あまり混んでいない,お店を指さして言う。
「いいの⁉︎ありがとう。僕嬉しい」
「いいですよ。では,これで買ってきてくださいね」
お金を坊ちゃんに渡す。
「じゃあ,買ってくるね」
「はい,待ってますね」
ついつい許してしまうのはいけないなと思いながら,僕は坊ちゃんが帰ってくるのを待った。
それでもいつのまにか坊ちゃんは人混みに紛れてしまっていた。
「えっ…」
すぐに僕は坊ちゃんの背中を追うことにして,すぐに坊ちゃんのことを見つけた。けれど,パレードを見終わった人たちも押し寄せて坊ちゃんのところに行くまでに時間がかかりいつのまにか見失ってしまう。
“どうしよう”
もしかしたらなんていくらでも考えていたのに,一瞬気が緩んでしまった自分が許せなくなる。
「坊ちゃん…」
気が気じゃなくなり,すぐに坊ちゃんを探すことにした。
人気のないところまでいつのまにか走って行くと,坊ちゃんの声を見つける。
「レオ…」
その声は確かに,か細くて聞こえづらかったけれど,確かに坊ちゃんの声に聞こえる。
「坊ちゃん…?」
「どうしたのですか?」
「なんか、みんな楽しみにしているのかと思うと僕ものすごく楽しみになって,今からすごくワクワクするなって」
「ワクワク,私もしています。レオさんはそうではないのですか?」
メアリさんも楽しそうにそう話した。
「いえ,楽しみなのですが,それと同時に,緊張感もあるような…」
どこかピリつく空気がここには漂っている。
この国一番のお祭り。それに,騎士のパレードとくれば漂わないわけがないのだけれど,その空気は重く自分の生きている世界とは違うのだと否が応でも感じさせられている気分だった。
自分がいけなかった場所,そんなふうに感じてはほんの少し悲しくなるのは,人には言えないこと。
「でも,私たちは緊張しなくていいんですよ。私たちは,楽しめばいいのですから」
「そうですね」
「うん。楽しも。レオも」
僕たちは,その場にしゃがんでパレードを始まるのを待つことにした。
というのも,後ろの人たちにも見えるようにと。
そうして,1時間が過ぎていき,パレードが幕をあけた。
最初は,騎士団の人々ではなく,一般の人たちがいろんなことをして歩いていく。
そして,最後に騎士の人たちが,歩くというような感じだった。
兄も旦那様も凛とした表情でいつもの感じが嘘なのではないかと思うほどかっこよかった。
(いいな…)
心の中で僕はそんな感情が浮かんできていた。
そんな時,手を引っ張り,坊ちゃんは僕たちを呼ぶ。
「ねえねえ」
『どうしたんですか?』
メアリさんと僕は同時に反応する。
「なんか,かっこいいね。僕は…将来,あんなふうになれるかな?」
てっきり,剣術が嫌いだったので,将来は旦那様とは違う道に行きたいと思っているのではないかと思っていた。
だから,正直,驚いて,言葉を失いつつも,どこか嬉しくもなる。
「そう,ですね…坊ちゃんの努力次第だと思います。だから,これからは剣術もちゃんとやってください」
「…う,うん。もう少しだけ,頑張ってみようかな…」
「その調子です。応援してます」
「私も応援してますよ」
メアリさんもそう声に出して,坊ちゃんは嬉しそうに頬を赤く染めた。
「ありがとう。僕,明日から頑張るね」
そう意気込む坊ちゃんの目は確かに,真剣な眼差しそのものだった。
「ところで,このあとはどうしますか?もう帰るという感じですか?」
「それが,まだどうしても行きたいところに行けてなくて…」
メアリさんが,そう声に出して,案内の紙を僕たちに見せた。
「あ,なるほど…確かにここは…」
僕は,メアリさんが地図で示した場所を見て納得する。
メアリさんが指さしていた場所は行列の絶えない人気店のお祭りバージョンで,お祭り限定の食べ物を売っている場所だった。
「…ほんと,お二人には申し訳ないのですが,どうしても行ってみたくて…売り切れ覚悟で行こうかなと…お二人は,変えてもらってもいいので…」
そのお店のあるあたりは,確か休憩できるスペースがあるはず。だから,待つにはいいところでもある。
「待っておりますよ。ね,坊ちゃん?もう少しお祭り楽しみたいですよね?」
「うん,僕も,メアリのこと待ってる」
「ほんとですか。嬉しいです。ありがとうございます。ほんとは,お二人と一緒にもう少し回りたいと思っていたので…」
照れながら言うメアリさんを見て僕までもどこか嬉しくなってしまう。
そうして,僕たちは地図の場所へと向かった。
やはり,その店はまだまだ行列を作っていた。
「…はぁ,やっぱりまだ多くの人たちが並んでいますね…なんか,ほんと申し訳ないです…」
「気にしないでください。僕たちは座ってそこで待ってます」
「うん,気にしないで,僕もレオと待ってる」
「…ほんっとありがとうございます」
メアリさんは,そう言って,列へと並んで行った。
「じゃあ,僕たちは,あそこで座ってましょうか?」
ちょうど2人分の席が空いて,手を繋いでいる僕たちはそこへと向かった。
座って少しすると,坊ちゃんがソワソワしてきた。その様子を見て,僕は気になって聞いてみる。
「何かしたいこととかありますか?」
「あのね,僕,一度でいいから1人で,お買い物してみたいなって思っていて…それで,だから,今日,今1人でお買い物したいなって…」
「…そうですね…」
正直,坊ちゃんを1人にするのはちょっと嫌だと思った。
けれど,僕の見える範囲なら別にいいかと言う考えが浮かんでしまった。
「ねえねえ,いい?」
悩んでいる僕を尻目に,何度も何度も聞いてくる。
「…わかりました.では,すぐそこのお店で何かを買ってきてください」
僕は,あまり混んでいない,お店を指さして言う。
「いいの⁉︎ありがとう。僕嬉しい」
「いいですよ。では,これで買ってきてくださいね」
お金を坊ちゃんに渡す。
「じゃあ,買ってくるね」
「はい,待ってますね」
ついつい許してしまうのはいけないなと思いながら,僕は坊ちゃんが帰ってくるのを待った。
それでもいつのまにか坊ちゃんは人混みに紛れてしまっていた。
「えっ…」
すぐに僕は坊ちゃんの背中を追うことにして,すぐに坊ちゃんのことを見つけた。けれど,パレードを見終わった人たちも押し寄せて坊ちゃんのところに行くまでに時間がかかりいつのまにか見失ってしまう。
“どうしよう”
もしかしたらなんていくらでも考えていたのに,一瞬気が緩んでしまった自分が許せなくなる。
「坊ちゃん…」
気が気じゃなくなり,すぐに坊ちゃんを探すことにした。
人気のないところまでいつのまにか走って行くと,坊ちゃんの声を見つける。
「レオ…」
その声は確かに,か細くて聞こえづらかったけれど,確かに坊ちゃんの声に聞こえる。
「坊ちゃん…?」
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる