58 / 73
5章
13話 ちゃんと伝えたい気持ち
しおりを挟む
ベランダに出てみると星がキラキラと輝いている。
(明日,明日で坊ちゃんが学校へ行ってしまう…)
まだ返事はできていなくて,しなければと思いながら,答えは出そうで出ていない。
旦那さまには,一応,明日までに答えを出すとお願いをしておいた。
本当は,無理とかダメとかそんな言葉で片付けてしまうこともできる。そんなことわかっているのに,どうしても僕はその言葉が出ない。むしろ出したくないとすら思う。
けれど,とっくに答えは見つかっている。
本当の気持ち。坊ちゃんが好きだと一緒にいて欲しいと僕以外を見ないで欲しいとそう言っている。それでも…この想いは…。
そうして,ぼーっと外を眺めていると,庭で星を観察している坊ちゃんを見つける。
坊ちゃんを見つけるなり,僕はどうしてだが,坊ちゃんのいるところまで駆け出していた。
「カイン様…?」
「ん?レオ,どうしたの?」
僕の方を向きながら,言った。
「カイン様が,どこか遠くに行ってしまうように思って…」
本当は,“明日から慣れない生活が始まるから,もうお休みになった方がいいのではないですか?”と言うつもりだった。
けれど,僕が出した言葉は全く違かった。
「そうだね。明日,僕は寮に入るから本当に遠くに行くよ。レオも知っているでしょ?」
何言っているの?とでも言うような顔をしている。
「…はい。知っています。突然,すいません。僕は,部屋に戻りますね」
頭が真っ白になって,落ち着くために僕は部屋に戻ろうとする。
「待って…」
坊ちゃんはそう言って,僕の裾を引っ張り離さなかった。
「どうしましたか?」
振り返り何にもなかったかのようする。
「ねぇ,レオ,僕が言いたいことわかっているでしょ?どうしてそんなふうにいなくなろうとするの?はぐらかそうとしているの?僕,待った方だと思うよ。ねぇ…」
「……坊ちゃん…」
当たり前だけど,坊ちゃんが何を言おうとしているのか,どうして僕を引き留めたのかわかる。
「ねぇ,いなくならないでよ」
そう言って,僕は後ろに力強く引っ張られて後ろから逃げられないようにハグをされる。
「……っ」
「レオが本当にどう思っているか教えて…」
耳元でそう囁かれる。
「そ,それは…」
もう一層のこと僕は本当のことを言ってしまおうそう思っていた。
坊ちゃんの人生を傷つけたりなんて決してしてはいけないのはもうずっと前からわかっていて,こんな想い捨てていたのに…。それなのに…。
坊ちゃんのこの間の言葉で思い出して,諦めなくていいかもなんて心の底から思ってしまっている。
「ねぇ,これが最後だから…最後にもう一度だけ聞くね。レオ,レオは僕のことどう思っているの?」
最後そんな言葉が頭の中で何度も往復する。
最後それなら,言ってしまおう。そんな思いと最後なのだから隠し通そうそんな反対の思いが何度も何度も頭の中で駆け巡った。
声が出ない。出したくない。そんなふうに思いながらも僕は素直に思っていることを口に出した。
「え,っと……私は,坊ちゃんのこと,す…好きです。お慕いもしております。けど,これ以上は何にもしません。そして,坊ちゃんには僕以外のパートナーを見つけてもらう。これはもう決めております。決められております。そして,それを覆せるほどの力は私にも坊ちゃんにもありません。だから,どんなに想っておりましても,伝えてはいけないことだと知っておりました。だから,もう…」
もう逃げてしまおう。そう思った。
言い逃げでもすれば,何にもなかったことになる。
「では,私はこれで」
僕は,そう言って目の前にある坊ちゃんの手を払いのける。
“あぁ,離れたくない…”そう思いながらもどうにか一歩を踏み出し,坊ちゃんから早く離れようとした。
辛いなと思いながら,涙も出てくる。
泣いてるのがバレてないといいななんて思う。それは,恥ずかしいからとかじゃない。ただ離れたくないことが泣いていることによってバレてしまいそうだと思ったから。
「待って…」
坊ちゃんの声と同時に手が伸びてきて,僕は動けなくなった。その瞬間、コマンドをつかわれたと気づく。
「えっ…なんで…今,使うんですか?」
「ごめん,そんなつもりなかった。ごめんなさい。けど,どうしても,レオが僕にそう思っているのならちゃんとパートナーになって欲しいって思ったから」
顔を見られたら,泣いていることがバレてしまう。
振り払ってでも逃げないといけない。
逃げないと,きっと,坊ちゃんと生きれるかもなんていう淡い期待を抱いてしまうだろうから。
「あ,あの…離してもらえませんか?」
「離さないよ。だって,僕と一緒にいたくないってわけでも,嫌いってわけでもないんでしょ?」
「そうですが…ダメなんです。坊ちゃんにとっても,社会的に見てもダメなんです」
この社会は,優しくない。
それに,坊ちゃんは1人っ子それに将来が有望なお方。パートナーが男なんて絶対に許されない。
「そんなこと,僕もわかってる。わかってるけど…どうしてもいなくならないで欲しいって思う。だから,こっちを向いてよ。ねぇ…⁇」
「無理ですよ。無理なんです。そんなこと私ができたら,しておりますよ。だから,離してください」
勢いよく手を揺さぶって振り解こうとした。
「嫌だ。絶対,離さない。離さないから絶対に」
強く腕を引っ張られて無理やり,顔を見られる。
「ほら,やっぱり,泣いている」
「泣いておりませんよ」
「ならなんで,涙が出ているの?」
瞳からこぼれ落ちていく,雫を拭き取りながら聞かれる。
「それは…」
「やっぱり泣いているの?」
知っていてそんなこと言わないで欲しいと思う。
それでも,僕の心はどこか楽になってきたような気がした。バレたくないなんて思っているのに、やっぱりその手は暖かくて好きで,離れなくてもいいことがわかると安心する。
「泣いて…いるのかもしれないです」
恥ずかしくなって,目線を下に逸らした。
すると,坊ちゃんは僕の頬を両手で挟んで目線を合わせて言う。
「そうだね。それで、レオ,僕は,レオのことが,大好きだよ。レオは僕のこと好き?」
幼い声を出し、昔のように無邪気な顔をしながら聞いてくる。
目の前に,坊ちゃんの顔があると恥ずかしくて,でも嬉しくなってしまう。これは…,きっと恋と言うやつなんだともう認めるしかなかった。
「……好き…です」
「顔赤くなってる。それに耳も」
耳を触られながら言われるので,少し驚いてしまう。
(明日,明日で坊ちゃんが学校へ行ってしまう…)
まだ返事はできていなくて,しなければと思いながら,答えは出そうで出ていない。
旦那さまには,一応,明日までに答えを出すとお願いをしておいた。
本当は,無理とかダメとかそんな言葉で片付けてしまうこともできる。そんなことわかっているのに,どうしても僕はその言葉が出ない。むしろ出したくないとすら思う。
けれど,とっくに答えは見つかっている。
本当の気持ち。坊ちゃんが好きだと一緒にいて欲しいと僕以外を見ないで欲しいとそう言っている。それでも…この想いは…。
そうして,ぼーっと外を眺めていると,庭で星を観察している坊ちゃんを見つける。
坊ちゃんを見つけるなり,僕はどうしてだが,坊ちゃんのいるところまで駆け出していた。
「カイン様…?」
「ん?レオ,どうしたの?」
僕の方を向きながら,言った。
「カイン様が,どこか遠くに行ってしまうように思って…」
本当は,“明日から慣れない生活が始まるから,もうお休みになった方がいいのではないですか?”と言うつもりだった。
けれど,僕が出した言葉は全く違かった。
「そうだね。明日,僕は寮に入るから本当に遠くに行くよ。レオも知っているでしょ?」
何言っているの?とでも言うような顔をしている。
「…はい。知っています。突然,すいません。僕は,部屋に戻りますね」
頭が真っ白になって,落ち着くために僕は部屋に戻ろうとする。
「待って…」
坊ちゃんはそう言って,僕の裾を引っ張り離さなかった。
「どうしましたか?」
振り返り何にもなかったかのようする。
「ねぇ,レオ,僕が言いたいことわかっているでしょ?どうしてそんなふうにいなくなろうとするの?はぐらかそうとしているの?僕,待った方だと思うよ。ねぇ…」
「……坊ちゃん…」
当たり前だけど,坊ちゃんが何を言おうとしているのか,どうして僕を引き留めたのかわかる。
「ねぇ,いなくならないでよ」
そう言って,僕は後ろに力強く引っ張られて後ろから逃げられないようにハグをされる。
「……っ」
「レオが本当にどう思っているか教えて…」
耳元でそう囁かれる。
「そ,それは…」
もう一層のこと僕は本当のことを言ってしまおうそう思っていた。
坊ちゃんの人生を傷つけたりなんて決してしてはいけないのはもうずっと前からわかっていて,こんな想い捨てていたのに…。それなのに…。
坊ちゃんのこの間の言葉で思い出して,諦めなくていいかもなんて心の底から思ってしまっている。
「ねぇ,これが最後だから…最後にもう一度だけ聞くね。レオ,レオは僕のことどう思っているの?」
最後そんな言葉が頭の中で何度も往復する。
最後それなら,言ってしまおう。そんな思いと最後なのだから隠し通そうそんな反対の思いが何度も何度も頭の中で駆け巡った。
声が出ない。出したくない。そんなふうに思いながらも僕は素直に思っていることを口に出した。
「え,っと……私は,坊ちゃんのこと,す…好きです。お慕いもしております。けど,これ以上は何にもしません。そして,坊ちゃんには僕以外のパートナーを見つけてもらう。これはもう決めております。決められております。そして,それを覆せるほどの力は私にも坊ちゃんにもありません。だから,どんなに想っておりましても,伝えてはいけないことだと知っておりました。だから,もう…」
もう逃げてしまおう。そう思った。
言い逃げでもすれば,何にもなかったことになる。
「では,私はこれで」
僕は,そう言って目の前にある坊ちゃんの手を払いのける。
“あぁ,離れたくない…”そう思いながらもどうにか一歩を踏み出し,坊ちゃんから早く離れようとした。
辛いなと思いながら,涙も出てくる。
泣いてるのがバレてないといいななんて思う。それは,恥ずかしいからとかじゃない。ただ離れたくないことが泣いていることによってバレてしまいそうだと思ったから。
「待って…」
坊ちゃんの声と同時に手が伸びてきて,僕は動けなくなった。その瞬間、コマンドをつかわれたと気づく。
「えっ…なんで…今,使うんですか?」
「ごめん,そんなつもりなかった。ごめんなさい。けど,どうしても,レオが僕にそう思っているのならちゃんとパートナーになって欲しいって思ったから」
顔を見られたら,泣いていることがバレてしまう。
振り払ってでも逃げないといけない。
逃げないと,きっと,坊ちゃんと生きれるかもなんていう淡い期待を抱いてしまうだろうから。
「あ,あの…離してもらえませんか?」
「離さないよ。だって,僕と一緒にいたくないってわけでも,嫌いってわけでもないんでしょ?」
「そうですが…ダメなんです。坊ちゃんにとっても,社会的に見てもダメなんです」
この社会は,優しくない。
それに,坊ちゃんは1人っ子それに将来が有望なお方。パートナーが男なんて絶対に許されない。
「そんなこと,僕もわかってる。わかってるけど…どうしてもいなくならないで欲しいって思う。だから,こっちを向いてよ。ねぇ…⁇」
「無理ですよ。無理なんです。そんなこと私ができたら,しておりますよ。だから,離してください」
勢いよく手を揺さぶって振り解こうとした。
「嫌だ。絶対,離さない。離さないから絶対に」
強く腕を引っ張られて無理やり,顔を見られる。
「ほら,やっぱり,泣いている」
「泣いておりませんよ」
「ならなんで,涙が出ているの?」
瞳からこぼれ落ちていく,雫を拭き取りながら聞かれる。
「それは…」
「やっぱり泣いているの?」
知っていてそんなこと言わないで欲しいと思う。
それでも,僕の心はどこか楽になってきたような気がした。バレたくないなんて思っているのに、やっぱりその手は暖かくて好きで,離れなくてもいいことがわかると安心する。
「泣いて…いるのかもしれないです」
恥ずかしくなって,目線を下に逸らした。
すると,坊ちゃんは僕の頬を両手で挟んで目線を合わせて言う。
「そうだね。それで、レオ,僕は,レオのことが,大好きだよ。レオは僕のこと好き?」
幼い声を出し、昔のように無邪気な顔をしながら聞いてくる。
目の前に,坊ちゃんの顔があると恥ずかしくて,でも嬉しくなってしまう。これは…,きっと恋と言うやつなんだともう認めるしかなかった。
「……好き…です」
「顔赤くなってる。それに耳も」
耳を触られながら言われるので,少し驚いてしまう。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる