38 / 73
4章
8話 えっ…と…
しおりを挟む
「レオ,身体拭いてあげる」
部屋に入ってくるなり,坊ちゃんがそう言った。まだ,身体が動かしづらくてありがたいことだと思う。
けれど,心がそう思っても頭ではダメだと言わないわけがなかった。
「…ありがとうございます。ですが,坊ちゃんのお手を煩わせるのは…」
「いいから。まだ,身体動かしづらいでしょ?」
「そうですが…」
親切心で言っているのはわかる。それでも,主人にそんなことさせるのがおかしいことだと知っている。それに,知られたくないこともあった…。
「ね,だから,服脱いで」
僕の身体は勝手に僕の意思に反して服を脱ぎ始める。
無意識なのか意識的なのか,わからないけれど,命令を使われる。
「あ,あの…」
「ごめん,レオにどうしても何か…したくて…。嫌だった…?」
「いやというわけでは,ないのですが…」
そう言いながら,上半身の服は全て脱ぎ去っていた。
「レオ…どうしたの?」
僕の身体を見て聞いてくる。僕の身体に刻まれているその傷を見て。
「その…それは…」
言葉に詰まってしまう。
説明しなきゃいけないのに,できない。どうにか言葉を声にしなきゃいけないのにどうしても声にはならなかった。
「痛くない…?」
沈黙を消し去るように,震えている声で坊ちゃんが聞く。
「痛くは…ないです。その…だから,心配とかは…」
「心配するよ。だって…こんなの…」
勢いよく僕の両手を掴んで,目を合わせる。
「大丈夫ですから。そんな悲しそうな顔しないでください」
この傷を見るたび,嫌なことを思い出す。それでも,今はそんなこと考えないようにしようそう思って,なるべく平常心を保つ。
「するよ。だって,悲しいから。悲しいと思ったから。ダメ?なんで,レオはそんなに落ち着いていられるの?」
「落ち着いていられますよ。いつも見てきたのですから」
「そ,それは,そうだけど…でも,辛そうだよ。身体はそう言っているように見える」
「そうですね。実際辛かったです。でも,それは昔のお話です。坊ちゃんが気にするようなことでは…」
「僕の気にすることだよ。だって,僕,レオのこと…大切なんだもん。だから,レオが辛かったら,僕も辛くなる」
真剣な様子で,まるで怒っているかのように声を出した。
「……そう言ってもらえるのは嬉しいです。でも,本当に坊ちゃんが気にすることではないのです」
「なんで,僕がまだ子どもだから?それとも,僕にはレオが辛いって気持ちを見せられないの?」
「そうではありません…ただ…僕が…」
僕が,何にも坊ちゃんに話せそうにないそれだけのこと。
「じゃあ,教えてよ。レオのこと…」
部屋に入ってくるなり,坊ちゃんがそう言った。まだ,身体が動かしづらくてありがたいことだと思う。
けれど,心がそう思っても頭ではダメだと言わないわけがなかった。
「…ありがとうございます。ですが,坊ちゃんのお手を煩わせるのは…」
「いいから。まだ,身体動かしづらいでしょ?」
「そうですが…」
親切心で言っているのはわかる。それでも,主人にそんなことさせるのがおかしいことだと知っている。それに,知られたくないこともあった…。
「ね,だから,服脱いで」
僕の身体は勝手に僕の意思に反して服を脱ぎ始める。
無意識なのか意識的なのか,わからないけれど,命令を使われる。
「あ,あの…」
「ごめん,レオにどうしても何か…したくて…。嫌だった…?」
「いやというわけでは,ないのですが…」
そう言いながら,上半身の服は全て脱ぎ去っていた。
「レオ…どうしたの?」
僕の身体を見て聞いてくる。僕の身体に刻まれているその傷を見て。
「その…それは…」
言葉に詰まってしまう。
説明しなきゃいけないのに,できない。どうにか言葉を声にしなきゃいけないのにどうしても声にはならなかった。
「痛くない…?」
沈黙を消し去るように,震えている声で坊ちゃんが聞く。
「痛くは…ないです。その…だから,心配とかは…」
「心配するよ。だって…こんなの…」
勢いよく僕の両手を掴んで,目を合わせる。
「大丈夫ですから。そんな悲しそうな顔しないでください」
この傷を見るたび,嫌なことを思い出す。それでも,今はそんなこと考えないようにしようそう思って,なるべく平常心を保つ。
「するよ。だって,悲しいから。悲しいと思ったから。ダメ?なんで,レオはそんなに落ち着いていられるの?」
「落ち着いていられますよ。いつも見てきたのですから」
「そ,それは,そうだけど…でも,辛そうだよ。身体はそう言っているように見える」
「そうですね。実際辛かったです。でも,それは昔のお話です。坊ちゃんが気にするようなことでは…」
「僕の気にすることだよ。だって,僕,レオのこと…大切なんだもん。だから,レオが辛かったら,僕も辛くなる」
真剣な様子で,まるで怒っているかのように声を出した。
「……そう言ってもらえるのは嬉しいです。でも,本当に坊ちゃんが気にすることではないのです」
「なんで,僕がまだ子どもだから?それとも,僕にはレオが辛いって気持ちを見せられないの?」
「そうではありません…ただ…僕が…」
僕が,何にも坊ちゃんに話せそうにないそれだけのこと。
「じゃあ,教えてよ。レオのこと…」
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる