25 / 73
3章
8話 ピンチ
しおりを挟む
「おいおい,そんなに泣いて喚いたってお前の声は誰にも届かなねぇーよ」
男は僕を馬鹿にしたように笑いながらそう言って,僕のズボンを脱がそうとする。
「……んっ」
びっくりしながら,抵抗しようとするも全身の力は抜けていて,身体は動くことすら許してくれなかった。
「よしじゃあ,ここでやるか?」
そんな声が聞こえて,僕の下腹部が触れられる。
「んっ…う…うっ」
身体はビクッと驚き,気持ちが悪くて仕方がない。
(いや…早く誰か…きて…)
願っても誰も来ないんじゃないだろうか?そんな思いが芽生え始めていた。もう既に,頭が回らなくて,何かしないと行けないと思っているのに,だんだん意識が遠のき始めている。
(あ,もう無理…)
一層のこと意識を手放してしまおう。そう思った瞬間。
「レオ…?」
どこからともなく,坊ちゃんの声が聞こえてきて,意識がはっきりとする。
(え…?もしかして…)
坊ちゃんに助けを求めに行けと言ったものの今の自分は坊ちゃんに見られてもいい状態にないように思う。
目隠しされて,手は後ろに組んで縛られて身動きすら簡単にとることができない。そんな状態坊ちゃんに見られたら,きっとトラウマを植え付けてしまう。
それに…僕自身が嫌だと思った。坊ちゃんの前ではなるべく自我を,理性を,大人であることを保っていたいと思っていたから。
だから,この声の主が坊ちゃんではないことを祈った。似たような声色の人物であるとそう願った。
それでも,普段からずっと聞いたことのある声であるそう聞こえてしまう。
「おいっ…お前は…っうっ…」
どこからともなく,男たちが苦しんでいる音が聞こえた。
一体,ここでなにが起こっているのだろう?
目が見えずなにが起こっているのか全くわからなかった。でも,確かにわかることは,僕の周りにいる人たちがだんだんと少なくなっていること。
「…ちっ,仕方ねぇか…お前ら行くぞ…」
舌打ちをして,僕の身体から全ての手が離れていき、人もいなくなった,その瞬間,安心する声が聞こえた。
「レオ…大丈夫か?」
“あっ…この声は…兄さん?”
声をする方を見上げてみる。けれど,当たり前のように声に出すことも,目で見ることもできなくて,不安は拭いきれなかった。
「待ってな…外してやるから…」
そう言われて,最初に目を覆っていた布を外して,次に口に咥えさせられていた布を外された。
目に光が差し込んだ瞬間,目の前にいるのは兄さんだとわかってホッとする。
「…はぁ…はぁ…」
どうにか口から息ができるようになり,深呼吸を繰り返した。
「手も取ってやるから,ちょっと待ってな」
僕の後ろに周り,腕に結ばれていた布を解いていった。
確かに,解かれているはずなのにいまだに身体は思うようには動いてくれない。
「大丈夫か?」
兄さんは,少し慌てた様子で僕に尋ねる。
「わっかん…ない…それより…坊ちゃん…は?」
ボッーっとする頭で,1番最初に出てきたことが坊ちゃんのことだった。
「レオ…まずは自分のことを心配しろ」
兄さんは呆れた様子で僕に言った。
「…そう,なんだけど…坊ちゃん…まだ…幼い…から、こんな…怖い思い…させて,僕,執事…失格だなって…だから…まだ無事なら…僕が落ち…着く」
言葉をつらつらと話すことはできなくて,どうにか息を吹き出すように声に出した。
「…そうだな…カインくんなら大丈夫だぞ。お前を見つけるために案内してくれたしな…」
(えっ…!?)
僕は驚いたと同時に不安が積もった。あの光景を見られていたかと思うと嫌で嫌でたまらない。
「…兄さん…それは…もしかして…見られ…た?」
「…レオ…ごめんな…それはわからない。一応,ギリギリのところで目は隠しておいた…けど,カインくんが見ているか見ていないかは全くわからない…」
兄さんは申し訳なさそうに僕にそう言った。
「兄さん…兄さんは,悪くない…だから,そんな顔しないで…でも…見られていない…といいな…」
「うん。そうだな…それで,もう大丈夫か?」
兄にそう聞かれて,僕は身体を起こそうとした。さっきまで動かなかった身体は今は動かすることがどうにかできた。けれど…。
「おっと…」
起き上がった瞬間,身体がふらつき倒れそうになって,兄に支えられた。
「ごめん…」
自分が情けなくて,何にもできなくて辛くなる。
「気にしなくていい。それより,身体大丈夫か?」
「…うん」
どうにかそう答えたけど,大丈夫ではないのは誰の目で見てもわかってしまうだろうと思った。
「そうか…なら肩を貸してやるから一旦立とうな」
「う,うん」
そう言って,僕は兄に肩を貸してもらって立とうとする。けれど,当たり前のように足には力が入らなかった。
「…ごめんっ…立てそうに,ない」
申し訳ない気持ちと自分の不甲斐なさが相まって声は震えていた。
「わかった。大丈夫だからな。だから,どうして欲しい?」
兄は戸惑いながら僕を落ち着かせるようにして尋ねる。
「…わからない…けど,坊ちゃんには…会いたい。ちゃんと,無事かどうか…それだけは,確かめたい…」
「そうか,ならまずは通りに出ないといけないな。ほら手を首に回せ」
「う,うん」
兄はしゃがんで僕はどうにか動く手で兄の首に手を回した。
「…持ち上げるぞ」
僕の背中を支えるようにしてから,膝の裏側に手を通してそう言った。
「うん…」
どうにか兄に持ち上げられて,坊ちゃんのいる方へと向かった。
(坊ちゃんは大丈夫だろう?)
心配で自分のことよりも不安になる。
道がひらけて,人通りがある通りまで行くと坊ちゃんを見つけて,今までの緊張感がするりと抜けていった。
「坊ちゃん…」
男は僕を馬鹿にしたように笑いながらそう言って,僕のズボンを脱がそうとする。
「……んっ」
びっくりしながら,抵抗しようとするも全身の力は抜けていて,身体は動くことすら許してくれなかった。
「よしじゃあ,ここでやるか?」
そんな声が聞こえて,僕の下腹部が触れられる。
「んっ…う…うっ」
身体はビクッと驚き,気持ちが悪くて仕方がない。
(いや…早く誰か…きて…)
願っても誰も来ないんじゃないだろうか?そんな思いが芽生え始めていた。もう既に,頭が回らなくて,何かしないと行けないと思っているのに,だんだん意識が遠のき始めている。
(あ,もう無理…)
一層のこと意識を手放してしまおう。そう思った瞬間。
「レオ…?」
どこからともなく,坊ちゃんの声が聞こえてきて,意識がはっきりとする。
(え…?もしかして…)
坊ちゃんに助けを求めに行けと言ったものの今の自分は坊ちゃんに見られてもいい状態にないように思う。
目隠しされて,手は後ろに組んで縛られて身動きすら簡単にとることができない。そんな状態坊ちゃんに見られたら,きっとトラウマを植え付けてしまう。
それに…僕自身が嫌だと思った。坊ちゃんの前ではなるべく自我を,理性を,大人であることを保っていたいと思っていたから。
だから,この声の主が坊ちゃんではないことを祈った。似たような声色の人物であるとそう願った。
それでも,普段からずっと聞いたことのある声であるそう聞こえてしまう。
「おいっ…お前は…っうっ…」
どこからともなく,男たちが苦しんでいる音が聞こえた。
一体,ここでなにが起こっているのだろう?
目が見えずなにが起こっているのか全くわからなかった。でも,確かにわかることは,僕の周りにいる人たちがだんだんと少なくなっていること。
「…ちっ,仕方ねぇか…お前ら行くぞ…」
舌打ちをして,僕の身体から全ての手が離れていき、人もいなくなった,その瞬間,安心する声が聞こえた。
「レオ…大丈夫か?」
“あっ…この声は…兄さん?”
声をする方を見上げてみる。けれど,当たり前のように声に出すことも,目で見ることもできなくて,不安は拭いきれなかった。
「待ってな…外してやるから…」
そう言われて,最初に目を覆っていた布を外して,次に口に咥えさせられていた布を外された。
目に光が差し込んだ瞬間,目の前にいるのは兄さんだとわかってホッとする。
「…はぁ…はぁ…」
どうにか口から息ができるようになり,深呼吸を繰り返した。
「手も取ってやるから,ちょっと待ってな」
僕の後ろに周り,腕に結ばれていた布を解いていった。
確かに,解かれているはずなのにいまだに身体は思うようには動いてくれない。
「大丈夫か?」
兄さんは,少し慌てた様子で僕に尋ねる。
「わっかん…ない…それより…坊ちゃん…は?」
ボッーっとする頭で,1番最初に出てきたことが坊ちゃんのことだった。
「レオ…まずは自分のことを心配しろ」
兄さんは呆れた様子で僕に言った。
「…そう,なんだけど…坊ちゃん…まだ…幼い…から、こんな…怖い思い…させて,僕,執事…失格だなって…だから…まだ無事なら…僕が落ち…着く」
言葉をつらつらと話すことはできなくて,どうにか息を吹き出すように声に出した。
「…そうだな…カインくんなら大丈夫だぞ。お前を見つけるために案内してくれたしな…」
(えっ…!?)
僕は驚いたと同時に不安が積もった。あの光景を見られていたかと思うと嫌で嫌でたまらない。
「…兄さん…それは…もしかして…見られ…た?」
「…レオ…ごめんな…それはわからない。一応,ギリギリのところで目は隠しておいた…けど,カインくんが見ているか見ていないかは全くわからない…」
兄さんは申し訳なさそうに僕にそう言った。
「兄さん…兄さんは,悪くない…だから,そんな顔しないで…でも…見られていない…といいな…」
「うん。そうだな…それで,もう大丈夫か?」
兄にそう聞かれて,僕は身体を起こそうとした。さっきまで動かなかった身体は今は動かすることがどうにかできた。けれど…。
「おっと…」
起き上がった瞬間,身体がふらつき倒れそうになって,兄に支えられた。
「ごめん…」
自分が情けなくて,何にもできなくて辛くなる。
「気にしなくていい。それより,身体大丈夫か?」
「…うん」
どうにかそう答えたけど,大丈夫ではないのは誰の目で見てもわかってしまうだろうと思った。
「そうか…なら肩を貸してやるから一旦立とうな」
「う,うん」
そう言って,僕は兄に肩を貸してもらって立とうとする。けれど,当たり前のように足には力が入らなかった。
「…ごめんっ…立てそうに,ない」
申し訳ない気持ちと自分の不甲斐なさが相まって声は震えていた。
「わかった。大丈夫だからな。だから,どうして欲しい?」
兄は戸惑いながら僕を落ち着かせるようにして尋ねる。
「…わからない…けど,坊ちゃんには…会いたい。ちゃんと,無事かどうか…それだけは,確かめたい…」
「そうか,ならまずは通りに出ないといけないな。ほら手を首に回せ」
「う,うん」
兄はしゃがんで僕はどうにか動く手で兄の首に手を回した。
「…持ち上げるぞ」
僕の背中を支えるようにしてから,膝の裏側に手を通してそう言った。
「うん…」
どうにか兄に持ち上げられて,坊ちゃんのいる方へと向かった。
(坊ちゃんは大丈夫だろう?)
心配で自分のことよりも不安になる。
道がひらけて,人通りがある通りまで行くと坊ちゃんを見つけて,今までの緊張感がするりと抜けていった。
「坊ちゃん…」
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる