坊ちゃんと執事の日々のお話

紫雲もか

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6章

3話 お店で

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「どれがいいとかある?」
ショップにはたくさんの種類のcolorが並んでいる。
「特には…ないです。ただ,坊ちゃんがどこにつけたいとかあれば教えて欲しいです。僕は,もらえるだけで嬉しいので…」
素直にそう感じている。きっと,一生パートナーなんてできないそんなふうに思っていた。だから,誰かが僕を選んでくれるのは本当に嬉しいことだった。
「レオ…。そう言ってもらえるのは嬉しいけれど,レオはどうしたいの?」
「だから…」
「ダメ。レオに選んでもらうって決めていたの。だから,レオが決めて。もちろん,お金は僕が払うけど」
「そう言われましても…」といいながら考えてみる。
どんな色が似合うのか,どんな形態がいいのか…。
今まで,つけてきたのは首元につけるタイプだった。それはそれで,すぐにSubだとバレる代わりに襲われることも少なくなる。
そんなことがあったりで,首元もいいなと思う。けれど,坊ちゃんは昔,僕がつけていたら,嫌な顔していたしな…。どうしよう…。
「カイン様,カイン様が嫌じゃなければ,僕は首元につけたいって思っていて…」
考えても答えは見つからなかったので,諦めて素直にそう話す。
「そっか,ならその形態のものにしないとね」
嫌な顔せずに承諾をしてくれる。
「えっ…いや,じゃないですか?」
僕はてっきり少しは嫌がられると思っていた。
「嫌とかないよ。当たり前でしょ?レオがしたいと思っているのに僕が否定する必要ないしね」
「そうですが…ありがとうございます」
そんなことを思ってくれるなんて思ってもいなかったので,嬉しくなる。
「うん。もちろん」
「そ,それで色は一緒に選んでくれませんか?それは2人で決めたいと思って…」
せっかくの記念になる一生のものになるものだからそこはやはり2人で決めたいそんなふうに思った。
「うん。もちろん,そうしよう」
そうして,僕と坊ちゃんは店にある首元につける種類のcollarを試してみる。
「レオは,肌白いからやっぱり青系がいいかなって僕は思ったんだけど…どうかな?」
「そうですね。青系の色,割と好きなので,そう言ってもらえると嬉しいです」
「うん…。じゃあ,これとかどうかな?」
坊ちゃんは,紺色のcolorを手にしている。
派手でも目立つわけでもなくて,良かったと思う。
「いいですね。僕もそれにしようかなって思っていたので、嬉しいです」
「じゃあ,これで決まりでいい?」
「そうですね。でも…値段は…」
僕が値段を知ろうとすると坊ちゃんは僕の口を押さえる。
「それは,気にしない約束。ね…だから、レオは車に乗って待ってて」
「でも…」
申し訳ないなと思う。もらえることは嬉しいけれど、無理して買ってもらったものをつけるのはちょっと気が引けてしまう。
「ほら,いいから…」
店の出口まで背中を押されて,僕は店を出た。
仕方ないと思い,馬車に乗る。
少ししても,坊ちゃんが来ないので心配になって、降りようとすると坊ちゃんがこちらにやってきた。
「そういえば、colorなんだけど、言葉を掘ってもらえるらしいから,お願いしてたんだ…。なんて掘ってもらったかはその時のお楽しみにしてね」
「楽しみにしてますね。それで,いつくるんですか?」
てっきり,今日もらえると思っていた。
「3日後,まだ僕がいることができる日だったからいいかなって思ってさ」
「そうですね…」
心の中がずしりと重くなる。
「どうしたの、何かあった?」
僕の声色が暗くなったのを察してか聞かれる。
「いえ,特にないです。3日後が楽しみですね」
なるべく,笑顔でそう言った。
「ほんと?何かあったらいうんだよ」
「もちろん。なんでも言いますよ」
でも,今思ったことは言わない。言ってしまったら。坊ちゃんの目指していることの邪魔になる。
僕は,坊ちゃんの邪魔だけはしたくない。だから,今だってどれだけ会えなくたって待つって決めている。
「ならよかった。じゃあ,帰ろっか」
「そうですね」
そうして,馬車は走り出した。
「レオ,僕が何入れたと思う?」
「そうですね…。見当つきませんね…」
それよりも重くなった心を持ち直すことの方に気を取られていた。
「なに…考えてくれないの?」
両手で頬を挟まれて,無理やり坊ちゃんと目を合わせられる。
「違いますよ。本当にわからないのです」
目を逸らさないようにする。嘘だってバレないように…。
「ほんと?なんか,違うこと考えているように見えた」
僕のことを見透かしているような目で見つめられる。そんな目で見られるとつい,本当のことを言ってしまう。
「そ,それはほんの少し…考えて,いましたけど…そんなに気にしないでください」
「そう?気にするけど気にしない。レオが言いたくないなら聞かないから」
そう言って,僕から手を離す。
“あぁ,離れちゃった…”ポツリと心の中で呟いていた。
それにしても,こういう時だけは,坊ちゃんは僕を優先させてくれる。
「ありがとうございます。けど,本当に何を彫ってくれたかも考えていましたよ」
「で,何だと思う?」 
そう聞かれたけれど考えないで,彫られているものを見て感動したい気分だったりもして
「…楽しみにしていますね」
とだけ答えた。
「そう,ならちゃんと喜んでよ。これでもしっかりレオのこと思って考えたんだから」 
「もちろんですよ」
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