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6章
1話 お買い物
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家のまえでどのくらい待っただろうなんて思うくらい長く待っているように感じた。少しして,ずっと待っていたものが姿を現す。
そうして,家の前には一台の馬車が止まった。馬車のドアが開くと降りてきたのは坊ちゃん。
「カイン…様」
嬉しくてつい、呟いてしまう。周りに僕以外誰も居なくてよかったなと思う。
「レオ,ただいま」
降りてきた坊ちゃんは、こちらに駆け寄ってくる。
「おかえり…カイン…様」
以前よりも背が高くなった,坊ちゃんはそうして僕の身体を包み込む。
「レオ…会いたかった…元気にしてた?」
「僕も…ずっと会いたくて…」
自分からこんなに会いたくて,愛おしい人が今までにできたことがなかったから,少しこそばゆい。
「レオと同じ気持ち。すごく嬉しい…」
いつもと変わらない,笑顔でほっとした。
こんなに長い間会ってなかったのは初めてで,坊ちゃんが変わっていたらどうしようなんて考えていた。学校に行って,たくさんの人たちと関わっているから。
「僕も嬉しいです。カイン様が僕のこと忘れないでいてくれたこと」
ふとずっと考えていたことが漏れていた。
「あっ,あのこれ違くて…」
忘れるはずないそう信じていたのに…。
「うん。不安だったんだね。でも,なんで忘れると思っていたの?」
不思議そうに,いつも通りの柔らかな表情で聞いてきた。
「それは…」
言葉にできそうでできなかった。
「…言えなかったら,それでも大丈夫。でもね,僕はレオのことが1番好きで,レオのために学校でもいい成績とって,レオを守るために僕は生きているんだよ。これだけはしっかりと理解してね」
恥ずかしげもなく淡々と僕に話す。こういうところが,坊ちゃんのすごいところだといつも感じる。
僕は,思っていることを素直に言葉に出すのにまだほんの少し抵抗感があるから。
「…そんな,恥ずかしいこと…よく言えますね…」
顔が熱を持っていることが嫌でもわかる。
「言えるよ。レオを不安にさせたくないから」
不安…。“あぁ,そうか…僕は…”
「坊ちゃん…いえ,カイン様…,私は気持ちを言葉に出すのは苦手です。だから,カイン様を不安にさせているかもしれません。だけど,ちゃんとちゃんと私もカイン…のこと好き…です。それにこんなにお慕いしている人今までにできたことありません。だから,安心してください…」
自分からこんなに想っていることをしっかり言葉にして坊ちゃんに言ったことはなくて,やっぱり恥ずかしくなる。
両手で顔を隠して,見られないようにしたいけれど,やっぱり止められてしまう。
「恥ずかしがらないで…。僕も正直嬉しすぎて恥ずかしい…でも,すごく嬉しいから…こっちちゃんと見て…僕もレオのことちゃんと見たい」
「…っ、うん」
「ありがとう」
幼い頃と変わらない笑みでこちらを見つめてくる。
「…もう,お家に入りましょう。寒くなっても参りますから」
たまらなくなって,そう切り出した。
「そうだね。その前に…っ」
額に口付けを落とされる。
「なんで,その前になんですか?」
額を押さえて嬉しいのにそんな言葉が先行した。
「なんとなくだよ。それじゃあダメ?」
「ダメじゃない…ですけど…」
「ねぇ,そんなこといいから早く入ろ」
手を結ばれて,僕と坊ちゃんは家の中へと入った。
「カイン様,ところで今日はどうなさいますか?」
特に今日は何をするとか決めていなかった。
「ん?それは,もう決めてるよ」
何かを企んでいる笑みでこちらを見つめる。
「何ですか?」
「それは…,レオが嫌じゃなければ,何だけど,僕とcolorを買いに行かない?本当は,黙って買うのもいいなと思ったんだけど,レオが僕にパートナーになった人にはちゃんと聞いた方がいいって言っていたから,一応…って嫌だったらそう言って…そしたら,今日は違うことしよ」
「嫌じゃないですよ。むしろ嬉しいです。僕のことそんなふうにちゃんと考えてくれているなんて,嬉しい以外の何者でもないです。ほんと,ありがとうございます。だから,今日は,買いに行きませんか?」
嬉しすぎて,早口になってしまう。
「はぁ…そっか…よかった。これでも,すごく緊張したんだよ…だから,ほんと僕も嬉しい」
顔を押さえながら,しゃがんでそう喜んでいる。
いつも,恥ずかしげもなく何でも僕に言ってくるから,こんなふうに身体で喜んでくれるのは嬉しいと思った。
「こちらこそ,そんなふうに好きな人に言ってもらえるのは僕にとってはとっても喜ばしいことなんですよ。ありがとうございます」
「じゃあ,部屋に荷物置いたらすぐに出かけよ」
再び手を繋ぎ坊ちゃんの部屋に向かう。
「はい。そういたしましょう。では,僕も出かける準備してきてもいいですか?」
出かけると思っていなくて,今日は執事服をきている。別に,今の格好でも出かけられるけれど,流石に執事服で行くのはなと思う。
僕は,坊ちゃんの執事であることは変わりない。けれど,せっかくならパートナーに見られたい。主従関係を結んでいるからじゃなくて,対等である立場というふうに。
「えっ?何で?早く行こうよ。馬車の人待たせているんだよ」
「そ,それは…カイン様の執事じゃなくて,ちゃんとパートナーに見られたいって思ったから,それじゃダメですか?」
「何それ,ずるい…。その理由は反則。その理由はダメって言えない」
「じゃあ,着替えてきますね」
坊ちゃんの手を離して,自分の部屋へ向かおうとする。
「それはダ~メ。僕と一緒に部屋きてよ。せっかくの休み,僕はレオとずっと一緒にいるんだから」
より強く手を握られた。
「でも,申し訳ないです。馬車を待たせているのですよ。個別に移動すれば、時間も短縮できますよ」
「知ってるよ。でも,少しくらいわがまま言ってもいいでしょ?それに,僕のお金で馬車も借りているのだから」
「…わかりました。まずはカイン様の部屋に向かいましょう」
「そうだね」
そうして,家の前には一台の馬車が止まった。馬車のドアが開くと降りてきたのは坊ちゃん。
「カイン…様」
嬉しくてつい、呟いてしまう。周りに僕以外誰も居なくてよかったなと思う。
「レオ,ただいま」
降りてきた坊ちゃんは、こちらに駆け寄ってくる。
「おかえり…カイン…様」
以前よりも背が高くなった,坊ちゃんはそうして僕の身体を包み込む。
「レオ…会いたかった…元気にしてた?」
「僕も…ずっと会いたくて…」
自分からこんなに会いたくて,愛おしい人が今までにできたことがなかったから,少しこそばゆい。
「レオと同じ気持ち。すごく嬉しい…」
いつもと変わらない,笑顔でほっとした。
こんなに長い間会ってなかったのは初めてで,坊ちゃんが変わっていたらどうしようなんて考えていた。学校に行って,たくさんの人たちと関わっているから。
「僕も嬉しいです。カイン様が僕のこと忘れないでいてくれたこと」
ふとずっと考えていたことが漏れていた。
「あっ,あのこれ違くて…」
忘れるはずないそう信じていたのに…。
「うん。不安だったんだね。でも,なんで忘れると思っていたの?」
不思議そうに,いつも通りの柔らかな表情で聞いてきた。
「それは…」
言葉にできそうでできなかった。
「…言えなかったら,それでも大丈夫。でもね,僕はレオのことが1番好きで,レオのために学校でもいい成績とって,レオを守るために僕は生きているんだよ。これだけはしっかりと理解してね」
恥ずかしげもなく淡々と僕に話す。こういうところが,坊ちゃんのすごいところだといつも感じる。
僕は,思っていることを素直に言葉に出すのにまだほんの少し抵抗感があるから。
「…そんな,恥ずかしいこと…よく言えますね…」
顔が熱を持っていることが嫌でもわかる。
「言えるよ。レオを不安にさせたくないから」
不安…。“あぁ,そうか…僕は…”
「坊ちゃん…いえ,カイン様…,私は気持ちを言葉に出すのは苦手です。だから,カイン様を不安にさせているかもしれません。だけど,ちゃんとちゃんと私もカイン…のこと好き…です。それにこんなにお慕いしている人今までにできたことありません。だから,安心してください…」
自分からこんなに想っていることをしっかり言葉にして坊ちゃんに言ったことはなくて,やっぱり恥ずかしくなる。
両手で顔を隠して,見られないようにしたいけれど,やっぱり止められてしまう。
「恥ずかしがらないで…。僕も正直嬉しすぎて恥ずかしい…でも,すごく嬉しいから…こっちちゃんと見て…僕もレオのことちゃんと見たい」
「…っ、うん」
「ありがとう」
幼い頃と変わらない笑みでこちらを見つめてくる。
「…もう,お家に入りましょう。寒くなっても参りますから」
たまらなくなって,そう切り出した。
「そうだね。その前に…っ」
額に口付けを落とされる。
「なんで,その前になんですか?」
額を押さえて嬉しいのにそんな言葉が先行した。
「なんとなくだよ。それじゃあダメ?」
「ダメじゃない…ですけど…」
「ねぇ,そんなこといいから早く入ろ」
手を結ばれて,僕と坊ちゃんは家の中へと入った。
「カイン様,ところで今日はどうなさいますか?」
特に今日は何をするとか決めていなかった。
「ん?それは,もう決めてるよ」
何かを企んでいる笑みでこちらを見つめる。
「何ですか?」
「それは…,レオが嫌じゃなければ,何だけど,僕とcolorを買いに行かない?本当は,黙って買うのもいいなと思ったんだけど,レオが僕にパートナーになった人にはちゃんと聞いた方がいいって言っていたから,一応…って嫌だったらそう言って…そしたら,今日は違うことしよ」
「嫌じゃないですよ。むしろ嬉しいです。僕のことそんなふうにちゃんと考えてくれているなんて,嬉しい以外の何者でもないです。ほんと,ありがとうございます。だから,今日は,買いに行きませんか?」
嬉しすぎて,早口になってしまう。
「はぁ…そっか…よかった。これでも,すごく緊張したんだよ…だから,ほんと僕も嬉しい」
顔を押さえながら,しゃがんでそう喜んでいる。
いつも,恥ずかしげもなく何でも僕に言ってくるから,こんなふうに身体で喜んでくれるのは嬉しいと思った。
「こちらこそ,そんなふうに好きな人に言ってもらえるのは僕にとってはとっても喜ばしいことなんですよ。ありがとうございます」
「じゃあ,部屋に荷物置いたらすぐに出かけよ」
再び手を繋ぎ坊ちゃんの部屋に向かう。
「はい。そういたしましょう。では,僕も出かける準備してきてもいいですか?」
出かけると思っていなくて,今日は執事服をきている。別に,今の格好でも出かけられるけれど,流石に執事服で行くのはなと思う。
僕は,坊ちゃんの執事であることは変わりない。けれど,せっかくならパートナーに見られたい。主従関係を結んでいるからじゃなくて,対等である立場というふうに。
「えっ?何で?早く行こうよ。馬車の人待たせているんだよ」
「そ,それは…カイン様の執事じゃなくて,ちゃんとパートナーに見られたいって思ったから,それじゃダメですか?」
「何それ,ずるい…。その理由は反則。その理由はダメって言えない」
「じゃあ,着替えてきますね」
坊ちゃんの手を離して,自分の部屋へ向かおうとする。
「それはダ~メ。僕と一緒に部屋きてよ。せっかくの休み,僕はレオとずっと一緒にいるんだから」
より強く手を握られた。
「でも,申し訳ないです。馬車を待たせているのですよ。個別に移動すれば、時間も短縮できますよ」
「知ってるよ。でも,少しくらいわがまま言ってもいいでしょ?それに,僕のお金で馬車も借りているのだから」
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