坊ちゃんと執事の日々のお話

紫雲もか

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3章

2 話 楽しみですね

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坊ちゃんに早速,明日言わないといけないなと思う。流石に今日は夜ももう遅く,すでに眠ってしまっている頃だった。
きっと,坊ちゃんは喜んでくれるだろうな…。それから、メアリさんにも旦那様から連絡が行くだろうから,どうするか話し合わないと…。
「あ,レオさん」
後ろから声がかけられた。
「はい。どうかしましたか?」
声のする方へ振り返る。
そこには,急いで走ってきたであろうメアリさんがいた。
「あ,あの,パレード一緒に行くってほんとですか?」
早速,旦那様から聞いたらしい。行動するのが早い方だなと思う。
「は…い…やっぱり嫌でしたか?」
メアリさんに何にも言わないで決めてしまったから,申し訳なくなって聞いた。
「違います。むしろありがたいです。だから,お礼をと思って…」
「いやこちらこそありがとうございます。僕もメアリさんと行けるのすごく安心しました。僕と坊ちゃんでは心もとなかったので…。だから,本当にありがとうございます」
「いえ,いいんですよ。私はむしろ,行けないと諦めていたので行けるだけで嬉しいです」
メアリさんもよほど行きたいと思っていたんだろうなと思う。何よりも嬉しそうにそう話しているから。
なら,僕は行く必要があるのかな…?そんな考えが浮かんだ。
「それで,どうしますか?」
「そうですね。まあ,一緒に行動するだけなので,その場で決めるのはどうですか?」
ニコニコの笑顔と共に僕の前に立って言う。
「それもそうですね。何となく,不安になって…」
メアリさんは,僕の過去を知っているのかわからない。だから,メアリさんにはちゃんと自分の思っていることを言っておかなければならないと感じた。
「そうですよね。不安になりますよね…?まあ,でも坊ちゃんとお出かけは誰でもそうなりますよ」
「…そう言うものですか?」 
「はい,私も不安はありますから…。ですが,楽しむ気満々です。だから,レオさんも思いっきり楽しみましょうね」
メアリさんは僕を元気づけるようにそう話す。
「そうですね。せっかくのお出かけ…楽しまないとですね」
「そうですよ」
「わかってます。メアリさんの方こそ,楽しみにしすぎて,風邪とか引かないようにしてくださいね」
「もちろんですよ…ってもう遅い時間ですね。失礼します。おやすみなさい。レオさん」
メアリさんは時間をみるなりそう言って,自分の部屋へと向かった。
「…おやすみなさい。メアリさん」
僕もそう言って,自分の部屋へと向かいベッドの中に入る。
ここにきて一年。さすがにここの部屋で寝ることや日々の生活に慣れてきている。それが,どこか嬉しいようで虚しく感じてしまう。
期限付きだからだろうか…?そんなことをふと考えてしまう。
“いやいや,それよりもパレードどうするか考えないと…”
そう言い聞かせて,眠りに入った。
「坊ちゃん,おはようございます」
寝起きではない坊ちゃんに挨拶をする。
「おはよう,レオ」
ここ一年で坊ちゃんは僕が起こしにこなくても最近はどうにか起きれるようになっていた。着替えはまだまだだけれども…。
まあ,僕に向かって“おはよう”というその表情だけは1年前と全く変わっていないから,まだまだ幼さを感じさせてくれる。
「おはようございます」
「うん…そういえばなんだけど,お父様に聞いてくれた?」
僕の前にきて,そわそわしてながら聞いてくる。よほど楽しみにしていたんだろうなと思った。
「はい,ちゃんと聞いてきましたよ」
「えっ…ほんと⁉︎てっきりレオ聞いてくれないと思ってた」
驚いた表情をしつつも嬉しそうだった。
ちなみに僕はそんなに聞きたくなさそうにしていたのかと恥ずかしくならずにはいられなかった。
「それは…あそこまで坊ちゃんに言われたから…」
「うふっ,そっか。レオもそんなふうに考えていたんだ。知らなかった」
「考えますよ。だって…」
それ以上は興味がないのか、言葉を遮られた。
「それより、どうだった?」
ニコニコの笑顔と共に話す。
「どうだったと思いますか?」
「知らないから、早く教えてよ」
ズボンの裾を引っ張り,聞かれる。
「教えて欲しいですか?」
ここまで楽しそうにしていると,どこか焦らしたくなってしまった。
「…早く,教えて欲しい」
裾を何回も引っ張りそう急かした。
「仕方ないですね…」
「仕方なくない」
頬に空気を含ませて言う。
「そうですね。旦那様は…」
「お父様は?」
「行ってもいいとおっしゃっておりましたよ」
僕がそう話すと、身体全体で嬉しそうにしていた。
「やった~。すごく嬉しい。レオと出かけることができるの」
「行けるのがではなく、私と行けるのが嬉しいのですか?」
てっきり,行けることが嬉しくてそんなにはしゃいでいるのだと思っていた。というか,ほとんどの人はそう考えるはず…。
「うん。レオとお出かけが初めてで,嬉しいの」
何の気なしにそう話す。けれど,僕にとってはそう思ってもらえることが何よりも嬉しかった。僕に心を開いてくれていることが。
「私も嬉しいですよ」
「それで,どんな服装で行けばいいのかな?僕ね,お祭りやパレード行ったことないんだ。それに,街にも行けたことないんだ…。身体も弱かったし,それに危険だからって理由で」
意外だった。坊ちゃんが街に対してある意味憧れのようなものをもっていることが。それなのに,僕と一緒に行ける方が優っているのは余計に嬉しいことだったりする。
それでも,僕にとって街はすごく嫌な思い出のある場所でもある。なんか,申し訳ないなと思う。こんなに喜んでもらえているから余計に。
「なら,今回は思いっきり楽しみましょうね。旦那様と兄さんが出るパレードもありますから」
「うん。そのつもり」
元気よく返事をした。こんな笑顔を見れるなんて思ってなかったから,ちゃんと旦那様に話してよかったなと思う。
「あ,一ついい忘れておりました」
「何を言い忘れてたの?」
「2人きりじゃなくて,メアリさんも一緒にいくと言うことです」
「そうなの?メアリも一緒に行けるの?」
これまた笑顔で嬉しそうに言った。
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