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3章
1話 お祭りに行きますか?
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坊ちゃんに出会ってから1年が過ぎようとしていたある日のこと。
「だから,どうしても行きたいの」
坊ちゃんはこちらを真剣な眼差しで見ている。
「そう言われましても…。旦那様の許可も取らないといけませんよ」
坊ちゃんがどこに行きたいかというと,街の中心部で行われる予定のパレード。
パレードはお祭りと同じ日に行われる予定でパレードには旦那様と僕の兄さんが出る予定だったりする。
実際,僕も少しは気になっていた。
兄さんの晴れ舞台,それから旦那様の晴れ舞台の日である。
「じゃあ,お父様に確認すればいいの?」
「そう…ですね…」
「なら,ちゃんと話はするから」
今回は譲らないと言わんばかりにそう話す。
「…わかりました。では,私がお願いしに参ります」
どうしても坊ちゃんに言わせたくないと思った。
僕は行くことに、ほんの少し躊躇しているから。それに、不安がそこにはたくさん付き纏っているのもある。
「ちゃんと聞いてね」
僕が躊躇しているのを感じ取っているのか言われてしまう。
「えぇ,わかっております」
そうして僕は、今旦那様の部屋へと向かっている。
“それにしてもどうしようかな”
僕も行きたくないわけではなく、むしろ行きたいという気持ちの方が大きい。
それでも、坊ちゃんと2人というのはどこと言えぬ不安が付きまとう。もう1人誰かいれば安心するなと。
「旦那様…レオになります。お話があり、伺いました」
いまだにこういう場面は慣れないなと思う。流石に坊ちゃんの部屋に入るのは慣れてきた。
けれど、他の部屋はどことなく坊ちゃんの部屋よりも緊張感を放っているように感じてしまう。例外なく坊ちゃんの部屋も緊張感は漂ってはいる。ただ,慣れの方が最近は強くなってきた。
「入ってきていいよ」
「失礼します」
僕がドアを開けると,旦那様が机で色々な作業をしているのが見えた。
「…あの,日にちを改めた方がいいでしょうか?」
机には資料がたくさんあり,決して今日で片付けられる量には思えない。話すことはたいしたことじゃないけれど,邪魔になるんじゃないかと不安になる。
「いや,大丈夫だよ。ところで,どうしたんだい?」
「その,カイン様がどうしてもお祭り,パレードを見に行きたいと申しておりまして…。それの許可をもらいにきました」
一瞬の沈黙でも緊張してしまう。やはり,騎士団長は違うなと思う。
「…そんなことかい?」
旦那様は,机の上で作業をしてこちらには目もくれずにそう言った。
「やはり無理でしょうか?」
「いや,違うよ。そんなこと聞きにこなくても大丈夫なのにと思ってね」
「あ,ありがとうございます。カイン様もお喜びになります…」
嬉しいような,どうすればいいんだろうというような不安が入り混じった。
「ん?どうしたんだい」
僕がそう答えたきり,動かないのを不思議に思ったのか旦那様はこちらを向いた。
「いえ,なんでもありません…」
「ほんとかい?レオくん,今目を逸らしたね。本当のことを言って欲しい」
「…はい…。すいません」
Domでもないのに,騎士団長になっただけあって,目力が強く,どこか怖さがあった。
「大丈夫だから,本当のことを教えて欲しい…。息子が何かしたのかな?」
「いえ,カイン様は何もされておりません。ただ,私が坊ちゃんと2人なのが少し,不安と言いますか…」
坊ちゃんに何か起こったら自分が守れるか,動けるかそれが不安で仕方がなかった。
「そうか。そういうことなら,メアリと3人で行くのはどうかな?メアリも行きたがっていてね。仕事があるからと諦めていたからね。僕からの命なら行けるから喜ぶと思うよ」
「…メアリ…さんと一緒?」
ここ一年でメアリさんとは,従業員の中では1番話すようになっていた。
正直,メアリさんならと僕は思っていた。頼りになるし,何より僕と坊ちゃんのことも割と知っているから一緒に行っても割と楽にいれたりするから。
「そうそう。あとで,聞いてみるといいよ。それとも僕からお願いした方がいいかな?」
「…そうですね。そちらの方でお願いいたします」
僕からいうのもいいなと思ったけれど,旦那様が話した方が絶対に行ってくれそうだなと思う。
「うん。わかった。楽しむんだよ。それと,僕も出るから楽しみにしていてね」
ニコニコの笑顔で話す。
「ありがとうございます」
僕は一礼をした。
「いや,いいよ。それより,レオくん,君がこの家に馴染んでくれて嬉しいよ。息子もいつも楽しそうにしている。そんなこと今までなかなかなかったからね。こちらこそありがとう」
こんな話を旦那様とするのは初めてだった。そう思ってもらえているのは正直嬉しくてにやけそうになる。
「いえ,私は何も。むしろ,毎日カイン様には助けられています。私も毎日楽しいです」
「それは,よかった。これからもよろしくね」
手を差し出され僕は握手をする。
「はい,よろしくお願いします…」
「うん。よろしく」
そうして,手を離される。
「…では,失礼させていただきます」
「うん。他に何かあったらまたちゃんと言うんだよ」
「はい…では,失礼しました」
僕は,特にもう話すこともなかったので部屋を出る。
“緊張した…”
旦那様はやはり優秀なお方であると感じる。僕よりも何手も先に行って物事を考えている。それが,嬉しいような正直,凄すぎてたまに怖くなったりする。
「だから,どうしても行きたいの」
坊ちゃんはこちらを真剣な眼差しで見ている。
「そう言われましても…。旦那様の許可も取らないといけませんよ」
坊ちゃんがどこに行きたいかというと,街の中心部で行われる予定のパレード。
パレードはお祭りと同じ日に行われる予定でパレードには旦那様と僕の兄さんが出る予定だったりする。
実際,僕も少しは気になっていた。
兄さんの晴れ舞台,それから旦那様の晴れ舞台の日である。
「じゃあ,お父様に確認すればいいの?」
「そう…ですね…」
「なら,ちゃんと話はするから」
今回は譲らないと言わんばかりにそう話す。
「…わかりました。では,私がお願いしに参ります」
どうしても坊ちゃんに言わせたくないと思った。
僕は行くことに、ほんの少し躊躇しているから。それに、不安がそこにはたくさん付き纏っているのもある。
「ちゃんと聞いてね」
僕が躊躇しているのを感じ取っているのか言われてしまう。
「えぇ,わかっております」
そうして僕は、今旦那様の部屋へと向かっている。
“それにしてもどうしようかな”
僕も行きたくないわけではなく、むしろ行きたいという気持ちの方が大きい。
それでも、坊ちゃんと2人というのはどこと言えぬ不安が付きまとう。もう1人誰かいれば安心するなと。
「旦那様…レオになります。お話があり、伺いました」
いまだにこういう場面は慣れないなと思う。流石に坊ちゃんの部屋に入るのは慣れてきた。
けれど、他の部屋はどことなく坊ちゃんの部屋よりも緊張感を放っているように感じてしまう。例外なく坊ちゃんの部屋も緊張感は漂ってはいる。ただ,慣れの方が最近は強くなってきた。
「入ってきていいよ」
「失礼します」
僕がドアを開けると,旦那様が机で色々な作業をしているのが見えた。
「…あの,日にちを改めた方がいいでしょうか?」
机には資料がたくさんあり,決して今日で片付けられる量には思えない。話すことはたいしたことじゃないけれど,邪魔になるんじゃないかと不安になる。
「いや,大丈夫だよ。ところで,どうしたんだい?」
「その,カイン様がどうしてもお祭り,パレードを見に行きたいと申しておりまして…。それの許可をもらいにきました」
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「…そんなことかい?」
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「やはり無理でしょうか?」
「いや,違うよ。そんなこと聞きにこなくても大丈夫なのにと思ってね」
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嬉しいような,どうすればいいんだろうというような不安が入り混じった。
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僕がそう答えたきり,動かないのを不思議に思ったのか旦那様はこちらを向いた。
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「…はい…。すいません」
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「大丈夫だから,本当のことを教えて欲しい…。息子が何かしたのかな?」
「いえ,カイン様は何もされておりません。ただ,私が坊ちゃんと2人なのが少し,不安と言いますか…」
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「そうか。そういうことなら,メアリと3人で行くのはどうかな?メアリも行きたがっていてね。仕事があるからと諦めていたからね。僕からの命なら行けるから喜ぶと思うよ」
「…メアリ…さんと一緒?」
ここ一年でメアリさんとは,従業員の中では1番話すようになっていた。
正直,メアリさんならと僕は思っていた。頼りになるし,何より僕と坊ちゃんのことも割と知っているから一緒に行っても割と楽にいれたりするから。
「そうそう。あとで,聞いてみるといいよ。それとも僕からお願いした方がいいかな?」
「…そうですね。そちらの方でお願いいたします」
僕からいうのもいいなと思ったけれど,旦那様が話した方が絶対に行ってくれそうだなと思う。
「うん。わかった。楽しむんだよ。それと,僕も出るから楽しみにしていてね」
ニコニコの笑顔で話す。
「ありがとうございます」
僕は一礼をした。
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