坊ちゃんと執事の日々のお話

紫雲もか

文字の大きさ
上 下
16 / 73
2章

9話 プレイ?

しおりを挟む
「せっかく作ったのだから,持っていくのはどうですか?」
メアリさんはそう言ってくれた。
「ですが,メアリさん。こんな僕の作ったものを食べさせるわけには,やはり,作って貰えばよかったですかね…」
「坊ちゃんが,そんなことを気になさると思っているのですか?」
「…それは…気になさらない…と思います」
気にしないでむしろ喜んでくれるそんなふうに思った。
「なら,行くべきです」
「行った方がやはり,いいですよね?」
何度も不安で確かめてしまう。
「だから,行ってきた方がいいですよ。最悪,食べたくないと言われたら,私とレオさんで食べましょう」
「…そ,そうですね……では,いってきます」
「うん.いってらっしゃい,です」
メアリさんに挨拶をして坊ちゃんが今日の予定が終わる時間になって部屋へと向かう。
一応作ったクッキーを持って行って。
「坊ちゃん失礼しますね」
部屋に入ると机に向かって真剣に手を動かしている坊ちゃんがいた。
「勉強をなされるのはいいことですが,少しお休みになった方がいいのではないですか?」
「ん?」
僕のことにようやく気づいたのか,こちらを向いた。
「レオ…どうしたの?」
びっくりしながら僕に尋ねる。
「いえ,勉学を頑張っているとおっしゃっておりましたから,お飲み物とちょっとした食べ物をと思いまして…それと,今日約束していましたから…」
寝れてないのか昼間はすごく眠たそうにしていた。
「やっぱり,僕はプレイしたくない。今日,1日考えたんだけど,嫌だと思った」
声を張り上げ拒絶をした。よほどプレイというか命令コマンドを使うのが嫌なのだろうと毎度思う。けれど,消化しないといけないというものだから,ある程度使うのに慣れないといけないとも思う。
これからの将来のことも考えて。
「分かりました。しかし,お願いがあるのです」 
「お願い?」
「はい,お願いです」
「それは,どんなお願い?」
先ほどまで僕の方をしっかりと見ようとしなかったのに,今はちゃんと僕と目が合っている。
少しは興味が湧いたのかもしれない。
「私が今回おやつを作ったのですが,それを食べてくださいませんか?それも私の手から食べさせてくださいませんか?」
「どういうこと?」
僕は作ったクッキーを手に取り,坊ちゃんに差し出した。
「こういうことです。このまま食べてくださればいいのです。その代わり私が今自主的にやったのではなく,坊ちゃんがコマンドを使って食べさせるというものです」
プレイだけれども,しっかりとしたプレイよりも軽く見え,それに欲求を発散できるというようなもの。
「それで…いいの?」
「いいのです。お互いこれだと嫌じゃないですよね?」
「う…ん。これだったら,いや…じゃない…と思う…」
やはり不安そうな顔をしていたけれどどうにか了承をしてくれる。
「よかったです。では,よろしくお願いします」
「う,うん。レオ,これ食べさせて…」
坊ちゃんは机の上に置いた,クッキーを指さして僕に言った。
「…はい」
一瞬,ビクッとなったけれど,毎度使われていた時に比べて幾分も楽だった。
やはりこれなら,お互い楽だなと思う。
クッキーを手に取り坊ちゃんの口に差し出し,食べさせる。
「あ,あの…,美味しいですか?」
初めて作ったクッキーであるから坊ちゃんの口に合うか少し不安だった。自分は美味しいと思ったけれど。
口をもぐもぐとさせて食べ終わると「美味しい…。ありがとう,レオ」と僕の頭を撫でて,笑顔で応えてくれた。
「こちらこそ,食べてくれて…あ,ありがとうございます」
よかったと思うと,少し手が震えていた。
「レオ,もう一枚…」
手を唇につけて促す。
「はい…」
クッキーは全部で5枚あった。
その5枚を食べ終わる頃にはどこか心がすっきりとしていた。
「…坊ちゃん…?」
コマンドを使われるとやはり意識がぼーっとすることは変わらず、頭がふわふわして回らなかった。
「レオ,ありがとう。僕ほんの少し,すっきりした。今日はよく寝れそう…」
僕をじっとみて黙ってしまった。
「ん?」
「レオ,ちょっとこっちに来て」
僕の表情を見てか,手を伸ばして言う。
「どうしたのですか?」
コマンドを使われているわけではないので,行かないということもできるが別に嫌じゃないので坊ちゃんにより近づく。
「何かありましたか?」
そんな中,坊ちゃんが僕の胸に飛び込んでくる。
「えっ…と…これは…」
戸惑いながらも僕はしゃがんで坊ちゃんと目線を合わせる。
「レオ,やっぱり辛い?」
自分がどんな表情をしているのかわからない。きっと,あまりいい顔色をしていないのだろう。
「辛くはないですよ…。ただ,その,」
「辛くはない…の?」
坊ちゃんはSubはプレイを嫌で受け入れているのではないかと考えているのではないかと思った。
「気になさらないでください。もし,嫌だと思ったら,すぐに言いますから」
「本当に嫌だと思ったらちゃんと言ってね」
「はい。もちろんですよ」
そんなことを言いながら僕はセーフワードは使わないだろうなと思った。
坊ちゃんが,僕に対して嫌なことを言っている,行うイメージが全くできなかったから。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

モテ男×盲目ボーイ

おもち
BL
クラスのカーストトップのイケメンモテ男×盲目ボーイのBL。 イケメンくんが盲目くんに猛アタックしてほしい。

処理中です...