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1章
5話 頑張ります
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次の日の朝。
コンコンというドアを叩く音で目覚めた。
「はい…」
「レオくん,大丈夫だったかい?」
目の前には旦那様とメアリさんが立っている。
「えっ?どうしましたか?」
急のことで頭が回らず,驚いた。けれど,粗相があってはいけないとドアを閉めてドアの前に姿勢を整えて立つことにした。
「具合は大丈夫かな?立つのも辛かったら,部屋で話してもいいんだよ」
昨日のことを心配してか聞かれた。
「だ,大丈夫です。お気になさらないでください」
「ならいいんだが,昨日あの後,君が息子と色々とあって体調悪くしていたと聞いてね」
「体調は悪くなりましたが,今は本当に大丈夫です」
なるべく元気そうに話してみる。そうでもしないと,坊ちゃんに何か言われるのではないかと思った。
「本当かい?息子にも何か言った方がいいかなと思ったんだが…」
「あ,あの,それなら何にも言わないということはできませんか?」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
「……どういうことかな?」
「カイン様はまだダイナミクスについて知らないことが多いと思います。その,だからダイナミクスについて僕だけが話すということはできないかなと思いまして…」
ダイナミクスについて習うのは早くても12歳から。今坊ちゃんは10歳。まだ気づいたばかりなのかあまりその教育について旦那様も奥様もやっていないと昨日のことで思った。
「それは,君1人で抱え込むということに繋がらないかな?」
少し考えてから旦那様が言った。
「あ,それは…」
確かに…そうだと思った。
これまで1人で抱え込んで色んな人に迷惑をかけてきている。そんなこと知らなかったわけではない。
“どうすれば”…。
そんな中,旦那様が口を開いた。
「1人で抱え込まないというのであれば,僕は構わないと思っている。ダイナミクスについてはカイくん,君の方が詳しいと思うし,それに,Subにとって何が嫌なのかはっきり教えることができるのも君だからね」
「それは,いいということでしょうか?」
もし違ったら,どうしようなんて考える。
「うん。そうだね。でも,何かあったら隠さないで僕にちゃんと言ってくれないかな?それができないようであれば認められない」
頷きながら,旦那様の口調はいつもよりも強かった。
僕が,今まで,1人でどうにかしようとしてきたことを全て兄から伝えられているんだろうと思った。
そうでないとここまで僕が1人でなんでも抱え込むなんて知っている人はいないはずだから。
「もちろんです。今まで,兄や両親たちを悲しませてきました。もう,あんな顔見たくない。そう思っています。だから…」
今回はどうにか認めて欲しいと思った。信じて欲しいと思った。
坊ちゃんの笑顔を,楽しんで生きていくのを僕は見たいと思ったから。
「そこまで,決意が固いのなら…。仕方ないね。メアリ,君もちゃんと聞いたよね?」
「はい,旦那様。ちゃんとこの両耳で聞いておりました」
メアリさんは淡々とそう話した。
「ということだから,レオくん,何かあったら僕かメアリにちゃんというんだよ」
「はい,もちろんです。本当にありがとうございます。それに,おこがましい提案だと承知の上でお聞きしたので,採用していただいて大変,嬉しいです」
本当に嬉しいと思った。僕が何かを提案して,ちゃんと聞き入れてもらったのは久しぶりのように感じていたから。
「そんなことはないよ。君はもともと優秀だと聞いていたしね…」
優秀…。そんな言葉を言われていた時なんてあったけ?と思うほど随分と昔のこと。もう誰も覚えてないと思う。
今はそれよりも,嫌な噂の方が目立っている。
「そんなことないです」
「そうかい?まあ,君に息子を任せられるのは嬉しく思っているよ。なんせ,君は…」
それ以上,旦那様は語らなかった。
僕が嫌な顔をしていだからだと思う。
「…それは,光栄なことを…。ありがとうございます」
「うん。じゃあ,これからもよろしくね」
改めて手を差し出された。
「はい,これから,よろしくお願いします」
手を握り返して,僕は深く頭を下げた。
これから,どうなっていくのか僕にはまだまだわからない。
けれど,この仕事をちゃんと5年間全うしようそう思った。その先に何かあるのではないかと思ったから。
コンコンというドアを叩く音で目覚めた。
「はい…」
「レオくん,大丈夫だったかい?」
目の前には旦那様とメアリさんが立っている。
「えっ?どうしましたか?」
急のことで頭が回らず,驚いた。けれど,粗相があってはいけないとドアを閉めてドアの前に姿勢を整えて立つことにした。
「具合は大丈夫かな?立つのも辛かったら,部屋で話してもいいんだよ」
昨日のことを心配してか聞かれた。
「だ,大丈夫です。お気になさらないでください」
「ならいいんだが,昨日あの後,君が息子と色々とあって体調悪くしていたと聞いてね」
「体調は悪くなりましたが,今は本当に大丈夫です」
なるべく元気そうに話してみる。そうでもしないと,坊ちゃんに何か言われるのではないかと思った。
「本当かい?息子にも何か言った方がいいかなと思ったんだが…」
「あ,あの,それなら何にも言わないということはできませんか?」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
「……どういうことかな?」
「カイン様はまだダイナミクスについて知らないことが多いと思います。その,だからダイナミクスについて僕だけが話すということはできないかなと思いまして…」
ダイナミクスについて習うのは早くても12歳から。今坊ちゃんは10歳。まだ気づいたばかりなのかあまりその教育について旦那様も奥様もやっていないと昨日のことで思った。
「それは,君1人で抱え込むということに繋がらないかな?」
少し考えてから旦那様が言った。
「あ,それは…」
確かに…そうだと思った。
これまで1人で抱え込んで色んな人に迷惑をかけてきている。そんなこと知らなかったわけではない。
“どうすれば”…。
そんな中,旦那様が口を開いた。
「1人で抱え込まないというのであれば,僕は構わないと思っている。ダイナミクスについてはカイくん,君の方が詳しいと思うし,それに,Subにとって何が嫌なのかはっきり教えることができるのも君だからね」
「それは,いいということでしょうか?」
もし違ったら,どうしようなんて考える。
「うん。そうだね。でも,何かあったら隠さないで僕にちゃんと言ってくれないかな?それができないようであれば認められない」
頷きながら,旦那様の口調はいつもよりも強かった。
僕が,今まで,1人でどうにかしようとしてきたことを全て兄から伝えられているんだろうと思った。
そうでないとここまで僕が1人でなんでも抱え込むなんて知っている人はいないはずだから。
「もちろんです。今まで,兄や両親たちを悲しませてきました。もう,あんな顔見たくない。そう思っています。だから…」
今回はどうにか認めて欲しいと思った。信じて欲しいと思った。
坊ちゃんの笑顔を,楽しんで生きていくのを僕は見たいと思ったから。
「そこまで,決意が固いのなら…。仕方ないね。メアリ,君もちゃんと聞いたよね?」
「はい,旦那様。ちゃんとこの両耳で聞いておりました」
メアリさんは淡々とそう話した。
「ということだから,レオくん,何かあったら僕かメアリにちゃんというんだよ」
「はい,もちろんです。本当にありがとうございます。それに,おこがましい提案だと承知の上でお聞きしたので,採用していただいて大変,嬉しいです」
本当に嬉しいと思った。僕が何かを提案して,ちゃんと聞き入れてもらったのは久しぶりのように感じていたから。
「そんなことはないよ。君はもともと優秀だと聞いていたしね…」
優秀…。そんな言葉を言われていた時なんてあったけ?と思うほど随分と昔のこと。もう誰も覚えてないと思う。
今はそれよりも,嫌な噂の方が目立っている。
「そんなことないです」
「そうかい?まあ,君に息子を任せられるのは嬉しく思っているよ。なんせ,君は…」
それ以上,旦那様は語らなかった。
僕が嫌な顔をしていだからだと思う。
「…それは,光栄なことを…。ありがとうございます」
「うん。じゃあ,これからもよろしくね」
改めて手を差し出された。
「はい,これから,よろしくお願いします」
手を握り返して,僕は深く頭を下げた。
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