坊ちゃんと執事の日々のお話

紫雲もか

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1章

1話 顔合わせ

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大きいお屋敷だなと思ったのがここでの第一印象。
身体は重く、当たり前のように体調は悪くて,ここまでくるのも大変だった。
けど、これも自分を変えるための一歩そう思って,ドアをノックして開くのを待った。
ドアが開かれるとそこには,20代半ばのメイド服を着ている女性がいた。
「どちら様でしょうか?」
「…えっと,こんにちは、本日,兄の紹介で参ったレオと申します」
通じなかったらどうしようと思いながら,返事を待つ。兄は話はちゃんと伝わっているからと言っていた。
「はい,レオ様ですね。お待ちしておりました。では,こちらに,ご案内いたします」
通じたのか僕はお屋敷に入れてもらい、顔合わせをする場所へと案内してもらうことになった。
顔合わせというのは,僕が今後このお屋敷で働く予定でするもの。そして,今日は旦那様と奥様と初めてお会いするそんな日だったりもする。
けれど,まだこのお屋敷で働くことが確定していなかったりもするから,面接という意味も含まれている。これには僕の過去が色々と関係している。
お屋敷は廊下が長く,一つ一つの部屋も広かった。やはり素晴らしいお家柄の方々が住んでいるというのは一目瞭然だった。
「こちらになります。ご確認してまいりますので,こちらで少々お待ちください」
彼女は部屋を手をさしてそう言って,その部屋の中へと入っていった。
いいお家は警備もしっかりしているなとこういう時に感じる。
「はい,ではお入りください」
確認をして終えた彼女がドアを開けて,案内した部屋には正装をした男女がソファに座っていた、
僕は正装は正装でもあまりいい服を来てきてないからどうしようなんて考える。あまりにも部屋の中にいる人たちがいい服を着ていたから。
「失礼します」
「どうぞ」
一礼をして僕は,その部屋に足を踏み入れる。
踏み入れながらどこか緊張感を感じた。
そうして,どうにか旦那様たちの前に立った。
「ほ、本日はよろしくお願いします」
「うん。よろしくね。それで君かな?リアンくんが紹介してくれたのは」
リアンその名前は僕の兄の名前であり,僕にこの仕事を紹介した張本人。
「はい。そうです。レオと申します」
「そうか,レオくん。よかった,君に会えて」
先ほどまでは深妙な面持ちだったのが打って変わって,柔らかな表情となっていた。旦那様も少しは緊張なさっていたのだなと思うと心が少し軽くなったような気がした。
そうして,手を差し出してくれた。
「…はい。僕も嬉しいです」
差し出された手を取り,そう挨拶した。
「じゃあ,そこに座って話をしようか」
旦那様が座っている,反対側のソファを指さされ僕は座った。
…。その言葉が大きな意味を持っていて、頭から離れなかった。
でもなにを話すのかはある程度察しがついている。きっと,ここで働くと言うこと,そして,僕の今までのこと。大抵そんなものの話だろうと。
「では,まずは,ここで働こうと思ってくれて嬉しく思う。それも,あんな条件を飲んでくれるとは…本当にありがとうね」
「いえ,それより,僕の方こそ受け入れてもらえるとは光栄です。兄やさまざまな人からいろんな話を聞いて,知っているとは思いますので」
自分の過去は変えられない。どうすることもできない。
今更ながら知って悲しくなる。
もっと,真っ当な人生であったらよかったのにと思ってしまう。
「まぁ……それは聞き及んでいるよ」
表情が一瞬暗くなった。
「そ,そうですよね。申し訳ありません」
「いや,気にしなくて大丈夫。どうしてそうなったのかは君のお兄さんのリアンから聞いているからね。そんなに気にしないでほしいな。僕たち家族は気にしないから」
「でも,それは…。本当に申し訳ないです」
もう謝ることしかできなかった。
謝っても許されることではない。そんなこと,知っていてもやはり謝らずにはいられない。
「だから,もう気にすることではないから。落ち着いて」
僕に心配させないように,優しい口調で言ってくれる。
それでも,やはり今までの経験からか言葉をそのまま飲み込めず,信じきれなくなっていた。
「……あ,あのもし本当にいやであれば,僕は帰ります。自分の家に,ちゃんとしっかり帰ります。もう二度ときません。会いにも来ません。だから…」
もう一層のこと,普通の生活を諦めようと思った。
噂で知っているとは思っていた。それも,事実である噂を。だから,知っていることを承知できたはず。なのに,どうしてだか動揺してしまって,自分がなにを話しているのかすらわからない感覚へとなってしまう。
「大丈夫かい?」
ポンと肩に手が置かれ,びっくりしたものの現実へと戻される。
「え,えっと…大丈夫…です。取り乱してしまってすいません」
「レオくん謝ってばかりだね。そんなに,謝らなくてもいいよ。誰も怒ってはいない。それに,君がどんな人生を送っていたとしても,僕ら家族にとってみたら,こんなお願い引き受けてくれることの方がありがたいことなんだよ」
「ほんと…でしょうか?」
恐る恐る聞いてみる。本当なら少しは心が軽くなるそう思って。
「ほんとだよ。それに,君がいい子でよかったよ。だから,これからよろしくね」
その表情には嘘や偽りが全く見えなくて,ただただ優しく微笑んでいた。
あの人とは違う優しい微笑みで,僕はほっとした。こんな人に出会うことができたことに。
「あ,はい…,よろしくお願いします」
立って頭を下げる。こんな僕を受け入れてくれる人がいたなんて嬉しくて。
「うん。よろしく」
その日,僕はそのお屋敷で働くことが正式に決まった。
ちゃんと受け入れてくれたと兄に話すとそれは嬉しそうな顔をして,祝ってくれた。
僕のことを心配してくれるそんな人いんだと改めて知って,諦めていた人生をやっぱり諦めたいで生きていこうそう思った。
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